インドでスタートアップが増えている背景は?DXや免税政策も解説

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インドでは、スタートアップ企業が増加傾向にあります。エンジェル税免除の申請が可能なDPIIT認定スタートアップ企業は、2023年10月時点で約112万社が存在しており、世界で第3番目に多くなっています。増加の背景には、インド政府の政策のほか、ユニコーン企業の増加や、若者の起業意欲が高いことが挙げられます。

参照:Invest Indea「インドのユニコーンの風景

本稿では、インドでスタートアップが増えている背景を解説します。
※本記事は2023年12月28日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. インドでスタートアップが増えている背景
    1-1.デジタルインフラの台頭・提供
    1-2.スタートアップ支援
    1-3.質の高いIT人材
    1-4.ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の増加
    1-5.ユニコーン企業の増加
  2. まとめ

1.インドでスタートアップが増えている背景

インドでスタートアップが増えている背景には、インド政府の政策や若者の企業意欲が強いことなどが考えられます。それぞれ見ていきましょう。

1-1.デジタルインフラの台頭・提供

インド政府は、デジタルトランスフォーメーションを国家戦略の一部と位置づけています。日本のマイナンバーカードに当たるアーダール(Aadhaar)や、インド独自の統合ネット決済インターフェイスである「インディア・スタック」を国のデジタルインフラとしてオープン化しています。このインフラを活用し、スタートアップ企業が電子決済やEコマースのサービスを提供しています。インドでは、小売店や自動販売機においても電子決済が一般的に使われています。

また、アーダール番号をもっていれば、企業の立ち上げが迅速に行えるようになったことも、スタートアップ企業増加の要因です。アーダールは、政府が12桁の番号を個人に付与し、個人を認識させるデータべースです。すでに13億人以上のインド国民がID登録を済ませたとされています。

アーダールには生体認識システムを採用し、顔、指紋、両目の色彩情報が登録されています。登録は強制的ではないものの、年金の受給やパスポートの申請、政府の補助金申請、銀行口座の開設、携帯電話やインターネットの契約にはアーダール番号の提示が必要です。

「インディア・スタック」は、政府・民間企業・開発者がデジタルインフラを円滑に使えるためのオープンAI群からなるデジタル公共財で、アーダールが基盤となっています。アーダールの登場で、公共サービスや福祉支援、金融サービスを公平かつ迅速に享受できるようになりました。また、インドで問題となっている汚職や不正が激減したとされています。

1-2.スタートアップ支援

インドでスタートアップ企業が増加している要因として、「スタートアップ・インディア」という仕組みが挙げられます。これは、スタートアップ企業の所得税3年間免除、スタートアップ企業に間接的に投資するファンド(約1000億ルピー)の設立、スタートアップ企業と投資家をつなぐオンライン・プラットフォームの提供です。

1-3.質の高いIT人材

インドでは毎年約150万人のエンジニアが大学を卒業しており、既存の産業ですべての卒業生を受け入れることが困難な状況です。そのため、国が起業支援に取り組んでいます。

世界に優秀なエンジニアを数多く輩出するインド最高峰であるインド工科大学は、インド全土に23校あり、合計で約10万人の学生が在籍しています。インド工科大学は入学難易度が高いことで知られ、合格率は2%以下と言われています。

インド人学生がインド工科大学を目指すのは、卒業生の平均年収がインドの平均年収の10倍以上になるためです。卒業生は米国のGAAFをはじめ、世界中の名だたる企業から求人数が増加傾向にあり、年収も増える傾向にあります。

インド工科大学のほか、サビットリバイ・フール・プネ大学、ベロール工科大学などといったIT系大学に優秀な学生が集まり、能力の高いIT人材が育っています。また、海外への留学もアメリカを中心に増え、シリコンバレーからの帰国組もIT業界に貢献しています。

インドとアメリカ西海岸との時差は約半日あり、西海岸が昼間の時は、インドは夜間です。そのため、アメリアの企業はソフトウェア開発にあたり、インド企業と提携することで24時間無駄なく時間を有効に使うことができます。また、インドの第2言語は英語なので、言葉の壁も無くスムーズにソフトウェアの開発を進められることも、インドでIT業界の人材需要が高まっている背景です。

また、IT業界が貧困の格差に関係なく誰でも挑戦できることも、勤勉で質の高い人材を生みだしている背景の一つだと考えられています。

1-4.ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の増加

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の増加も、スタートアップ企業の増加につながっています。スタートアップに積極的に投資しているのは、国内ベンチャーキャピタル(VC)のみならず、米セコイア・キャピタル、日本ではソフトバンク・グループなどグローバル規模のVCや企業などが挙げられます。

ベイン・アンド・カンパニーが発表したインド・ベンチャー・キャピタルレポート2023によると、スタートアップの調達額は2022年世界的な景気減速の影響を受け減少したものの、アーリーステージでは引き続き勢いがみられ、ベンチャーキャピタルの案件数が2021年の1,545件から2022年には1,611件に増加しました。インドには世界中から投資資金が集まっていることもスタートアップ企業増加の要因といえそうです。

参照:Bain&Company「India Venture Capital Report 2023

1-5.ユニコーン企業の増加

インドではユニコーン企業が増加傾向です。インド投資促進機構によると、2023年時点では世界3位の111社で、評価額は約3,500億ドルに上ります。

インドのユニコーン企業は、2021年に45社、2022年に22社増加しました。2023年には、インドで生鮮食品や日用品のデリバリーを行っているZeptoが、ユニコーンの仲間入りを果たしました。

なお、IPOを申請したユニコーンには、グルメデリバリーのZomato、オンライン美容アプリのNykaa、保険比較サイトを運営するPolicybazaar、インド最大のモバイル決済会社Paytmなど、多くの企業が名を連ねています。

多くのユニコーンが誕生し上場し、多大な資金を得ていることが、スタートアップのエコシステムの動機付けとなっています。

参照:Invest India「インドのユニコーンの風景

2.まとめ

インド政府がデジタルトランスフォーメーションを国家戦略の一部と位置づけていることで、スタートアップ企業が増えています。アーダール(Aadhaar)やインド独自の統合ネット決済インターフェイスである「インディア・スタック」を国のデジタルインフラとしてオープン化したことで、スタートアップ企業が制度を活用し、育っています。

また、質の高いIT人材の育成、教育システム、英語へのコンプレックスがないことなどもスタートアップ起業の増加要因と言えるでしょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。