2024年の相場のポイントは?日銀のマイナス金利解除や日本株・米国大統領選を解説

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2024年は米国やロシア、インドなど世界各地で重要な選挙が行われます。選挙結果によっては、マーケットが大きく動く可能性があるので注意が必要です。また、日本では日銀のマイナス金利解除がいつになるのかとう点に注目が集まっています。

この記事では2024年の注目ポイントについて解説します。

※本記事は2023年12月28日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 日銀のマイナス金利解除はいつになる?
  2. 円キャリー取引(円キャリートレード)とは
  3. 円高が進むと内需株に資金がシフト?
  4. 米国大統領選を筆頭に世界で重要選挙が相次ぐ
  5. まとめ

1.日銀のマイナス金利解除はいつになる?

2024年前半の最大の注目点は、日銀のマイナス金利解除がいつになるかです。ブルームバーグによると、日銀が現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き上げる時期は、2024年4月までの予想が67%になりました。

最多は4月の50%で、1月も15%となっています。12月7日、植田日銀総裁は金融政策運営に関して、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言し、早期利上げ観測が浮上しました。

参照:ブルームバーグ「日銀マイナス金利の早期解除観測強まる、来年4月まで7割

2024年の日銀金融政策会合スケジュール

  • 1月22日 〜 23日
  • 3月18日 〜 19日
  • 4月25日 〜 26日
  • 6月13日 〜 14日
  • 7月30日 〜 31日
  • 9月19日 〜 20日
  • 10月30日 〜 31日
  • 12月18日 〜 19日

参照:時事エクイティ「主要各国の金融政策スケジュール (2024年)

日銀の利上げが行われた場合、円キャリー取引の巻き戻しによる円高に警戒が必要です。

2.円キャリー取引(円キャリートレード)とは

円を低金利で借りて、高金利通貨で運用する円キャリー取引は、金利差収益を狙う取引です。たとえば、現在日本とアメリカの政策金利差は5%以上です。円を借りてドルに投資することで、年率5%程度の金利差収益を得ることができます。ただ、1ドル=151円で米ドルを買った投資家は、143円程度まで円高が進むと為替差損が発生します。

つまり、円キャリー取引は為替変動によって損失が生じる可能性があるため、安定した値動きが前提となります。前回円キャリー取引が盛んになった2005~2007年ごろは、2008年のリーマンショックなどによる欧米諸国の金利低下によって円キャリー取引が解消される局面で円高の原動力となり、1ドル=80円台前半まで円高が進みました。

そして、植田日銀総裁の発言を受け、12月7日の外国為替市場で米ドル円は141円台まで円高が進みました。米国や欧州など主要国では2024年に利下げが予想されていますが、日本だけ利上げ予想となっているからです。米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)の急速な利上げをみているので、日銀も一度利上げに動き出したら、それなりのペースで引き締めを進めるとの見方もマーケット関係者の間で出ています。

日銀の早期マイナス金利解除と日米金利差縮小で大幅に円高が進むようだと、日本株にとって逆風となるので注意が必要です。

3.円高が進むと内需株に資金がシフト?

ただ、急激な円高は投資家のリスク回避姿勢を強めますが、銀行や製紙、飲食・食品といった内需株には追い風です。急激な円高はマイナスですが、緩やかな円高は輸入物価の下落により消費者にプラスの影響をもたらし、内需企業の需要増につながる可能性があります。

2024年は円高予想が増えているものの、緩やかな円高であれば、内需株を中心とした株価上昇により、日経平均株価は過去最高値を目指す展開もあるでしょう。

実際、日経平均構成銘柄のうち国内売上高比率の高い銘柄から構成される「日経平均内需株50指数」は、11月末に24,665.39と3月末の19,879.3から約24%上昇しています。同じ期間の「日経平均外需株50指数」の約15%を上回っており、2024年はこの差がさらに広がるかどうかに注目です。

日経平均内需株50指数


参照:日経平均プロフィル「日経平均内需株50指数

日経平均外需株50指数

参照:日経プロフィル「日経平均外需株50指数

4.2024年は米国大統領選を筆頭に世界で重要選挙が相次ぐ

ロシアのウクライナ侵攻や激しさを増す米中対立は、世界の政治・経済のパワーバランスを大きく変えようとしています。国際協調の枠組みの力が衰える中、2024年は米大統領選だけでなく、世界情勢を左右する国・地域で選挙が目白押しとなります。

インド、ロシア、南アフリカなどのBRICS諸国や、インドネシア、メキシコなどのG20加盟国は、現在注目を集めている「グローバルサウス」の主要な国々です。また、バングラデシュやパキスタンでは総選挙、スリランカでは大統領選挙が予定されています。これらの国々は、ウクライナ危機の影響で外貨不足に陥り、国際通貨基金(IMF)からの融資を求めています。

2024年は、新興国の中でも特に注目されている国々が政治の舞台を迎える年です。主な国・地域の選挙想定時期は、以下の通りです。

想定時期 国・地域 選挙の種類
1月13日 台湾 総選挙・議会選
2月14日 インドネシア 大統領選・総選挙
3月17日 ロシア 大統領選
4月 韓国 総選挙
インド 総選挙(下院)
6月2日 メキシコ 大統領選・議会選
6月6-9日 EU(欧州連合) 欧州議会選
11月5日 米国 大統領選・議会選

※表は筆者作成

スウェーデンの調査機関V-Demが2023年3月に発表した「DEMOCRACY REPORT 2023(民主主義レポート2023)」では、世界の民主主義レベルが低下していると指摘しています。

参照:DEMOCRACY REPORT 2023「独裁国家に住む人口の割合

旧ソ連の崩壊とベルリンの壁崩壊が続いた1990年前後で、民主主義は共産主義との競争に勝ち、世界秩序を保つ唯一のメカニズムと捉えられました。しかし、その優位性は崩れ、35年ほど続いた民主主義拡大局面は終わりを迎えていると警告しているのです。

民主主義国家間の世界貿易シェア(SHARE OF WORLD TRADE BETWEEN DEMOCRACIES)


参照:DEMOCRACY REPORT 2023「民主主義国家間の世界貿易シェア

また、独裁国家に住む人口の割合(SHARE OF WORLD POPULATION LIVING IN AUTOCRACIES)は2012年の46%から72%に上昇しています。世界で約57億人が強権体制のもとで生活している計算になります。


参照:DEMOCRACY REPORT 2023「独裁国家に住む人口の割合

最大の要因は、中国を抜き世界最大の人口を抱えるインドでの民主主義の悪化です。モディ政権はヒンドゥー・ナショナリズム(ヒンドゥー教にもとづく政治思考で、インドの歴史における精神的・文化的に基礎をおくナショナリスム的な考え方)を進めており、国民の約8割を占めるヒンドゥー教徒による支持率を高める一方、過度な抑圧や言論統制による民主主義の後退を懸念する声があるのです。

インドでは2024年春(4~5月頃)に下院選挙が実施される予定です。これまでの堅調な景気や野党の有力対抗馬不在などの理由から、インド人民党を中心とする与党連合が過半数の議席を維持し、モディ政権が3期目に突入する可能性が高いとみられています。

年明けから火種になりかねないのは、1月の台湾総選挙です。2期を務めた総統は憲法の規定で退き、どんな展開でも新しい総統が誕生します。中国と距離を置く民進党の頼氏が勝利した場合は中国や経済や安全保障面の面で圧力を強めたり、威嚇的な行動にでたりする恐れがあります。

また、2月には人口大国インドネシアで大統領選・総選挙があります。インドネシアとインドは20カ国地域首脳会議(G20サミット)で議長国を務め、グローバルサウスの盟主的な立場を強く意識しています。

ただ、最大の焦点は11月の米大統領選です。80歳と史上最高齢で再選を目指すバイデン大統領に対し、支持者の熱い支持を受けるトランプ前大統領が対抗候補として最有力となっています。

どちらの勢力が勝っても、米国の分断化が一段と進む可能性があります。米国の混乱が潜在的な不満を抱える世界各地域の人々を動かすきっかけになるかもしれません。

5.まとめ

2024年は重要な選挙を控え、マーケットのボラティリティ(変動率)が高まる恐れがあります。2024年から新NISAが始まり投資への関心は高まっていますが、どんな事態が起きても焦ることなく、長期での運用を心がけることが大切です。短期的な値動きに一喜一憂せず、10~20年といった長期で投資を考えましょう。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011