新NISAで日本株が上昇?貯蓄から投資の市場への影響を解説

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日本銀行によると、日本家計の金融資産は2,043兆円であり、そのうち、現金・預金が54.2%、保険・年金・定額保証が26.2%、株式・投資信託が15.4%です(2023年8月時点)。日本は長期間のデフレ経済で、デフレに強い現金・預金の比率が高いといえます。

一方米国では株式・投資信託の割合が51.3%であり、比較すると、日本の株式・投資信託の割合が小さいと言えます。

参照:日本銀行「資金循環の日米欧比較

日本は輸入依存度が高いため、為替や海外物価の影響を受けやすい国です。円安に加えコモディティ価格が上昇傾向にあるため、インフレ率が上昇しています。インフレ下では現金の価値が減価します。

2024年1月から始まる新しいNISA制度は、非課税期間が無期間になったこと、上限金額が1,800万円に拡大されることから、日本において株式投資ブームが起きる可能性があります。

本稿では投資のプロである筆者が、新NISAの日本株への影響を解説します。

※本記事は2023年9月7日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 日本で資産に占める現預金比率が高い背景
    1-1.長期に渡ったデフレ経済
    1-2.株価の低迷
  2. 新しいNISAのメリット
    2-1.最大限度額が1,800万円に拡大
    2-2.非課税期間が無制限
    2-3.売却した場合、NISA枠が復活
  3. 株価の上昇が期待できる要因
    3-1.新しいNISA制度の導入
    3-2.デフレからの脱却
    3-3.中国リスクの高まり
  4. まとめ

1.日本で資産に占める現預金比率が高い背景

日本の家計の金融資産のうち、現金・預金が占める割合が高い理由を解説します。

1-1.長期に渡ったデフレ経済

デフレとは、物価が下がる現象です。日本では1990年代以降、資産バブル崩壊や金融システムの不安定化などを背景にデフレに陥りました。

デフレ下では、モノの価格が継続的に下落するため、現金を保有していれば現金の価値が相対的に上昇します。現金・預金はデフレ下では有効な運用方法です。

1-2.株価の低迷

株価の低迷も日本人の現預金比率が高い一因でしょう。日経平均株価指数の史上最高値は、1989年末に付けた約3万8,900円です。バブル崩壊とともに日経平均株価は長期低迷し、2009年3月には約7,050円の安値を付けました。その後、上昇に転じているものの、1989年末の高値を更新していません。

株式投資で損失を出した投資家も多く、日本では株式投資は一部のお金持ちがするもの、株はマネーゲームのようなものとされ、株式投資が敬遠される傾向にあることも株式市場を低迷させる要因と言えるでしょう。

2.新しいNISAのメリット

2024年1月から始まる新しいNISAは、現行のNISAより資産運用がしやすいように変更されます。この制度を活用し資産を形成すれば、ライフイベントや老後などに向けての準備が可能です。

新しいNISAのメリットを3つ紹介します。

2-1.最大限度額が1,800万円に拡大

現行のNISA制度では最大投資額が、NISAで600万円、つみたてNISAでは800万円です。現行制度では、NISAとつみたてNISAの併用はできません。しかし、2024年から始まる新しいNISA制度では、限度額が1,800万円に拡大され、NISA(成長投資枠)とつみたてNISA枠の併用ができるようになります。成長投資枠の限度額は、1,200万円です。

年間の最大投資額は、成長投資枠が240万円、つみたてNISA枠は120万円の合計360万円です。現行制度は、NISAが120万円、つみたてNISAが40万円であり、大幅に増額されます。

2-2.非課税期間が無期限

非課税期間が無期限になることもメリットです。現行NISAの非課税期間は5年で、NISA期限が切れると、保有株式等は特定口座に移行されます。特定口座では、売却益に対して約20%が課税されます。

株式投資は、投資先企業の成長とともに株価が上昇し、大きな利益を得られる可能性があります。米国のマイクロソフトやアップル、アマゾンなどのような企業の株価は、上場時と比べ週十倍、数百倍に成長しています。こうした企業を見つけて投資すると、20年、30年後に株価が数十倍、数百倍に上昇する可能性もあります。

新しいNISA制度は18歳(2024年1月時点)から利用できます。年齢が若ければ若いほど利用価値があると言えるので、少額からでも開始を検討してみてください。

2-3.売却した場合、NISA枠が復活

現行のNISA制度では、NISA口座で保有している株式や投資信託を売却した場合、一度利用したNISA枠は復活しません。しかし、新しいNISA制度では、NISA枠が翌年以降に復活します。

年間の枠は成長投資枠が240万円、つみたてNISA枠が120万円なので、枠が復活しても年間上限額に変化はありません。

3.株価の上昇が期待できる要因

日本株の上昇が期待できる要因としては、新しいNISA制度の導入、デフレからの脱却や中国リスクの高まりなどが挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

3-1.新しいNISA制度の導入

新しいNISA制度では、最大投資額1,800万円が生涯非課税です。新しいNISAは、18歳(2024年1月1日時点)から利用できます。

金融庁の報告書によると、老後30年間で約2,000万円が不足するという試算が示され、大きな話題となりました。老後の資金不足を心配している方もいるでしょう。

世帯の2022年金融資産平均保有額は1,593万円で、中央値は629万円です。

参照:知るぽると「時系列データ(令和3年から令和4年まで) ― (参考)家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]

日本人の年齢の中央値は48.6歳ですので、仮に48.6歳の人が資産629万円を年金が支給される65歳までに2,000万円に増やすには、年率7.5%で運用する必要があります。残念ながら、年率7.5%で運用できる円貨建ての預金は存在しません。

参照:World Population Review「Median Age by Country 2023

一方、16年前に日経平均のインデックスファンドに投資していた場合を見てみましょう。16年前(2007年8月末)の日経平均は約1万6,500円、2023年8月23日時点では約3万2,000円です。この16年で日経平均は1.93倍に成長しました。16年前に629万円を日経平均のインデックファンドに投資していれば、資産が約1,213万円に増加している計算になります。

日経平均、TOPIX、S&P500指数、ダウ工業平均、ナスダック指数の騰落率を以下の表でみてみましょう。過去10年、20年、30年、指数はその間、大きな変動はあったものの、長期的には上昇しています。

騰落率(%)

銘柄/期間 10年 20年 30年
日経平均 138.4 213.1 55.3
TOPIX 101.6 118.5 36.8
S&P500 168.4 339.0 850.2
ナスダック 276.2 655.5 1,734.1
ダウ工業平均 130.7 265.3 836.6

個別銘柄には倒産リスクがありますが、指数以上に高いパフォーマンスが期待できる銘柄もあります。日経平均構成銘柄のうち、エムスリー、ファーストリテイリング、伊藤忠商事、丸紅、サイバーエージェントの株価は20年で20倍以上に成長しました(2003年8月23日から2023年8月24日)。

家計の現金・預金は約1,088兆円で、この金額は日本の株式時価総額855.65兆円(2023年7月末)の1.27倍に相当します。

参照:日本取引所グループ「株式時価総額 Market Capitalization

新しいNISA制度の導入を機に家計の現金・預金の一部が株式市場に向かえば、日本株が上昇し、買いが買いを呼ぶ展開となる可能性があります。

3-2.デフレからの脱却

日本がデフレから脱却したことも株価の押し上げ要因です。日本経済は長い間、デフレを経験していました。デフレ下では、物価が下落するため、現金の価値が上がります。そのためデフレ下では現金で備えると良いとされています。

しかし、近年の原油高や円安の影響、人件費の高騰で日本の物価が上昇してきました。消費者物価指数(総合)は2020年と比較して、2021年は99.8に低下したものの、2022年度は102.3と上昇に転じました。2023年に入ってからも上昇傾向にあり、7月は食料品の値上げなどで、前年同月比で3.3%上昇しました。

参照:総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)7月分 (

日本経済はデフレからインフレに転換しました。インフレ時には現金は価値が減少します。

インフレには株式投資が有効です。インフレ率よりも高い成長が見込める企業の株価は上昇する傾向が期待できるからです。

3-3.中国リスクの高まり

中国リスクの高まりも、日本株にとって有利に働く可能性があります。年金などの長期投資家は、資産を世界中の市場で運用しています。また、株式などを運用する際には、地域ごとに資産の割り振りをします。

中国は世界第2位の経済大国のため、多くの機関投資家が中国株に投資していました。しかし、最近の中国経済や中国政府の言動で、世界の投資家は中国から資産を引き上げています。中国と同じアジア圏の日本市場が資産の受け皿となる可能性が高いと言えます。

4.まとめ

日本株はデフレからの脱却、中国リスクの高まりなどに加え、2024年1月から新しいNISA制度が始まるため、投資のプロである筆者としては上昇する可能性が高い予測します。

新しいNISAは最大限度額が1,800万円(成長投資枠は1,200万円)で、非課税期間が無期限となることから、新たに株式投資を始める方が増加する可能性が高いでしょう。インフレを背景に現金・預金から株式市場への資金シフトが起こることにより、日本株の上昇が期待されます。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。