2023年9月現在、ロシアのウクライナ侵攻は2022年2月24日に始まり、依然として続いています。一方で2023年6月に、英国ロンドンでウクライナの復興・再建に向けた協議が開かれ、総額600億ドルの支援に合意したと伝えられました。
各国の支援も公表されており、日本ではウクライナからの避難民への支援や、復旧・復興の前提となる地雷・不発弾対策、がれき処理、エネルギー・水道等の基本インフラ整備を含む生活再建、農業生産能力の回復などに4億ドルの無償資金協力を発表しました。
すでに世界はウクライナの支援に動いています。そこで今回はウクライナの復興・支援で活躍する企業を投資のプロである筆者が解説します。
※本記事は2023年9月7日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 侵攻に対する株式市場の反応
- 軍需関連株から復興支援へ
- 復興関連銘柄
3-1.キャタピラー(CAT)
3-2.コマツ(6301)
3-3.パッカー(PCAR)
3-4.ボルボ・グループ(VOLVF) - まとめ
1.侵攻に対する株式市場の反応
ロシアによるウクライナ侵攻は2022年2月24日に始まりました。侵攻後、S&P500指数は2.5%程度下落する場面もありました。一方、侵攻が始まるとロッキード・マーチンやノースロップ・グラマンなどの軍需関連株が物色されました。
2022年2月24日の株価の終値を100とした場合の高値は、ロッキード・マーチンが2023年4月18日の130.85、ノースロップ・グラマンは2022年10月31日の140.37です。株価は高値を付けたのち下落傾向にあり、2023年9月1日時点の水準はそれぞれ118.54、113.13です。
2.軍需関連株から復興支援へ
侵攻後しばらくは、軍需関連株が物色されましたが、足元では復興関連銘柄が注目されています。ロシアによる空爆などで、キーウをはじめとしたウクライナの都市は甚大な被害を受けています。
復興に当たっては、がれきを撤去し、電気・水道・ガス・道路などの生活インフラ、同時に衛生・居住環境の整備、保健医療や教育環境等の整備が必要です。これらの関連セクターへの関心が高まっています。
3.復興関連銘柄
ここでは、復興関連銘柄として、がれき撤去に必要な重機メーカーやトラックメーカーを中心に解説します。なお、株価は2023年9月1日時点です。
3-1.キャタピラー(CAT)
キャタピラーは建設機械業界で世界シェアトップのメーカーで、2022年度の売上高は594億ドル(約8.61兆円)、純利益が67億ドル(約9,715億円)です。
参照:Caterpillar「UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION」
同社の建設機械は中型から大型のものが多く、パワーが強く、足回りがしっかりしているという特徴があります。がれきの撤去には大型で力強い重機が必要です。
株価は286.25ドル、予想PERが14.46倍、配当利回りは1.82%、時価総額は1,460億ドル(約21.17兆円)です。ロシア侵攻が始まった時点比の騰落率は60.27%とS&P500の5.29%を大きく上回っています。
3-2.コマツ(6301)
コマツは、世界2位の建機メーカーです。2022年4月から2023年3月末(第154期)の売上高は3.54兆円、純利益は3,263億円です。前期比では売上高が26.44%増、純利益は45.11%増加しており、キャタピラー(売上成長率:16.58%、純利益成長率:3.3%)と比べ、大きく伸びています。キャタピラーに比べ操作性に定評があることが寄与したと考えられます。
参照:株式会社小松製作所「有価証券報告書」
株価は4,209円、予想PERが11.53倍、配当利回りは3.3%、時価総額は約4.09兆円です。ロシアの侵攻が始まった2022年2月24日の株価の終値を基準とすると9月1日時点の騰落率は70.63%です、これは日経平均株価の25.95%を大きく上回っています。
3-3.パッカー(PCAR)
パッカーは、米国の大型トラックメーカーです。大型トラックは廃棄物の処理に欠かせません。
2022年の売上高は273.1億ドル(約3.96兆円)、純利益は30.1億ドル(約4,366億円)です。2022年の地域別売上成長率は米国が11%、欧州が17%、メキシコ・南米・その他国・地域20%と、欧州向けの伸びが米国を上回りました。
参照:PACCAR Inc「UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION」
株価は83.52ドル、予想PERは9.89倍、配当利回りが1.29%、時価総額は436.64億ドル(約6.33兆円)です。ロシア侵が攻始まった時点比の騰落率は43.07%とS&P500の5.29%を大きく上回っています。
3-4.ボルボ・グループ(VOLVF)
ボルボ・グループは、スウェーデンの商業用自動車メーカーで、トラック、バス、建設機械を提供しています。ボルボトラックは燃費の良さと力強さに定評があります。
2022年度の売上高は、4,734億スウェーデンクローネ(約6.2兆円)、純利益は329.69億スウェーデンクローネ(約4,368億円)です。
参照:VOLVO「Annual Report 2022」
同社の株式は米国に上場しています。株価は20.3275ドル、予想PERは8.60倍、配当利回りが3.31%、時価総額は406.05億ドル(約5.89兆円)です。ロシア侵攻が始まった時点比の騰落率は37.55%とS&P500の5.29%を大きく上回っています。
4.まとめ
ロシアによるウクライナ侵攻から1年6カ月が経過しました。当初、株式市場では、侵攻直後に軍需関連銘柄の上昇が目立ちましたが、復興関連銘柄への注目度が高まってきています。
特に建機メーカーやトラックメーカーの株価の上昇率は指数を大きく上回っています。今回取り上げた各社の予想PERには割高感はなく、上昇基調が続く可能性があります。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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