2022年3月初頭は、FRB(米国連邦準備制度理事会)が金融政策の緩和から引締め政策への転換を決めたことや、ロシアによるウクライナ侵攻を嫌気し、株式市場は乱高下の激しい動きが続いています。2022年は上昇基調にあった株式指数が転換点を迎えるかもしれません。
そこで今回は、投資で退場しないための心構えや銘柄の選び方など、投資初心者が注意すべきことについて解説します。難局を迎えても相場に残れる立ち振る舞いや考え方をまとめています。
目次
- 投資と投機を理解する
1-1.投機と投資の違い
1-2.ゼロサムゲームとは
1-3.投機では個人投資家は勝てない
1-4.個人投資家は長期投資に徹すべし - 投資で退場しないために
2-1.投資目的を決める
2-2.ゼロサムゲームに参加しない
2-3.財務分析の勉強をする
2-4.銘柄を慎重に選ぶ
2-5.頻繁に売買しない
2-6.株価の乱高下を気にしない
2-7.つみたてNISAを活用する - まとめ
1 投資と投機を理解する
まずは「投資」と「投機」について理解することが必要です。順番に解説します。
1-1 投機と投資の違い
投機は、頻繁に売買を繰り返すことで短期的に利益を積み上げる取引方法です。一方、投資は購入した資産を長期的に保有し、配当などのインカムゲインに加えて経済成長や企業成長による値上がり益を狙う方法です。
投機と投資では取引手法も異なり、投機にはチャート分析などのテクニカル分析が、投資には財務分析などのファンダメンタル分析がよく用いられます。
1-2 ゼロサムゲームとは
投機取引はゼロサムゲームです。ゼロサムゲームとは、勝者の利益と敗者の損失が合計でゼロになるゲームのことです。株式市場では、デイトレードや信用取引など短期売買がゼロサムゲームと言えます。FXやCFDなどもゼロサムゲームに該当します。
1-3 投機では個人投資家は勝てない
株式の投機では、個人投資家は勝ち続けることはまずできません。
投機にはチャート分析などのテクニカル分析が使われます。テクニカル分析では簡単な計算式で株価の売りや買いのポイントが示されます。
資金力のある投機家はテクニカルポイントと呼ばれる売り買いのポイントに株価を誘導することができます。つまり、個人投機家は資金力のある投機家のあやつり人形のようなものと言えるのです。そのため投機取引では個人投資家はなかなか勝つことができません。
株式市場には「だまし」という俗語があります。これは、売りや買いのシグナル通りに投資したものの、理論通りの動きとならずに反対の動きをすることを言います。だましは株式市場ではよく起きます。
1-4 個人投資家は長期投資に徹すべし
個人投資家が勝つには、企業などの成長力に投資する長期投資が適切です。いくら資金力がある投機家でも企業の成長をコントロールすることはできません。
企業の成長と株価には相関性があり、企業が成長すればするほど株価が上昇する傾向にあります。良い銘柄を見つけ、長期間保有する投資こそが個人投資家に適した方法です。
また、株価指数に連動するように運用されるインデックス投資信託や、定期的に積立購入を行うことでリスクを分散しながら長期投資ができる、つみたてNISAやiDeCo、ロボアドバイザーなどの仕組みを利用するのも有効です。
2 投資で退場しないために
投資から退場しないためには、デイトレードやレバレッジ取引を極力しないことです。無理な投機は破産を招いてしまいます。損失に耐えられる富裕層を除き、初心者のうちは近寄らないようにしましょう。
ここでは投資で退場しないために6つのルールを挙げました。それぞれ見ていきましょう。
2-1 投資目的を決める
投資で退場しないために、まず投資目的を決めましょう。投資目的には老後の資金、子供の教育費、家の頭金のためなどいろいろ考えられます。まず、自身の投資目的を決めましょう。
仮に投資目的が「短期間に稼ぎたい」という場合には、自身で売買ルールを作り、厳密にルールを守りましょう。多くの方は、損切り(損を確定すること)ができず、損金が膨らむ傾向があります。短期売買のカギは損切りです。
2-2 ゼロサムゲームに参加しない
投資で退場しないためには、ゼロサムゲームに参加しないことも条件に挙げられます。デイトレードに代表されるゼロサムゲームは、敗者が勝者に資金を提供する構図です。勝者の多くは資金に余裕のあるカリスマトレーダーやヘッジファンドなどです。
初心者のうちに彼らと同じ土俵で戦うということは、小学生が横綱と戦うことと同じ。個人投資家はゼロサムゲームに参加せず、長期投資に徹するようにしましょう。
2-3 財務分析の勉強をする
財務諸表を読む力も必要です。そのため、財務分析の勉強をしましょう。簿記の勉強のほか、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を読み取る力をつけましょう。
専門用語は多いのですが、慣れてしまえば簡単です。まずは、損益計算書の流れを理解。次に、貸借対照表の構造などから始めましょう。財務分析は株式投資をするうえで強い武器となります。
2-4 銘柄を慎重に選ぶ
投資する銘柄は慎重に選びましょう。アナリストやユーチューバーが特定の銘柄を推奨することがありますが、鵜呑みにしないでください。彼らは損失に責任を負いません。当たり前ですが、投資は自己責任です。銘柄は自身で選べるように力をつけましょう。
銘柄を選ぶ際には財務などの詳細をよく分析し、財務基盤が盤石で企業が成長している銘柄や、成績が良好で純資産総額の高いファンドを選ぶようにするのが基本です。証券会社のHP上で、財務データなどをベースとし、銘柄を絞り込むこともできます。
2-5 頻繁に売買しない
一度投資をしたら頻繁に売買しないようにしましょう。売買を繰り返すと手数料や税金などのコストが積み上がってしまいがちです。
株価や投資信託の基準価額は、基本的には投資先の企業が成長すればするほど上昇します。資産価値は乱高下を繰り返すため、簿価(購入価格)を下回ってしまうと不安になってしまうこともあるでしょう。そのため、自身でよく資産を分析し、選んだ銘柄に自信を持ちましょう。
株式投資の醍醐味は、予想通り企業が成長すると株価が10倍、20倍になる可能性もあることです。目先の利益に気を取られず、どっしりと構え、10年、20年先の株価を見据えるようにしましょう。
2-6 つみたてNISAを活用する
投資で退場しないために、つみたてNISAを活用するのが有効です。つみたてNISAは国が推し進めている長期・積立・分散投資を支援するための長期積立の制度です。
日本在住で20歳以上であれば毎年40万円(月33,333円)までの分配金や売却益が20年間非課税です。非課税期間20年は魅力的です。
参考に、過去の20年の日米株式指数の成長率を表にしました。以下の表ではマザーズ指数以外の指数はプラスで、ナスダック指数は20年間で約7倍に成長しました。長く保有すれば投資リスクは軽減され、成長が期待できるのです。
日米主要株式指数の騰落率
項目 | 上昇率(%) | |
---|---|---|
20年 | 20年(円換算) | |
日経平均株価 | 159 | – |
TOPIX | 90 | – |
マザーズ指数 | -22 | – |
S&P500指数 | 295 | 237 |
ナスダック指数 | 675 | 562 |
ダウ平均 | 226 | 187 |
まとめ
投資で退場しないためには、短期の売買よりもこつこつと長期投資をすることです。目先の乱高下はノイズと考え、長期投資を行うことで将来的には大きな利益を得ることが可能になります。
そのためには財務諸表を読む力が必要です。財務分析を一度理解すれば、株式投資以外の局面でも一生使うことができます。財務分析が苦手な方は、つみたてNISAを活用し、インックスファンドに投資するという方法も良いでしょう。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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