株価変動の要因は?2022年1月17日~21日の相場振り返りと今後の注目材料・見通しをファンドマネージャーが解説

目次

  1. 年始以降の相場振り返り
  2. 各国の動向は?
    2-1.日本
    2-2.米国
    2-3.中国
    2-4.欧州
    2-5.英国
  3. 今後の注目材料
    3-1.豪CPI
    3-2.米FOMC

1.年始以降の相場振り返り

1/10からの相場は、パウエル議長が公聴会にて必要であれば時間を掛けて利上げをするといった引き締め期待の過熱を抑えるような発言があり、株式市場は持ちこたえていましたが、米小売りが崩れ、またその他FOMCメンバーからもタカ派的な発言が相次いだことで、徐々に株式市場が崩れ始めました。一方で、ウクライナを巡る欧米とロシアの動きに不安が高まり、資源価格は上昇しました。

【参照記事】ブルームバーグ「パウエル議長、FRBはインフレ抑制と景気拡大持続に取り組む

米金利は、1月のFOMCに向けて一時1.9%を付ける場面もありましたが、その後株が下がるにつれて1.75%近辺へ低下しています。

ドル円は115円台の上値が重く、株の下落につられて113円半ばまで下落しました。ユーロドルは前半のリスクオンの展開の中1.14台後半まで上昇しましたが、1.1500は越えられず、1.13台半ばまで押し戻されました。その他資源国通貨は、資源価格が上昇する中、リスクオフの圧力が勝り売られました。

2.各国の動向は?

2-1.日本

久し振りに日本のニュースが相場変動の材料となりました。一つは展望レポートにおいて物価見通しを引き上げて、下振れリスクの方が大きいという表現を変更するかもしれないといった記事、もう一つは、日銀が物価目標の2%を達成する前に金融政策の引き締めに転じることを議論している可能性があるという記事です。

特に市場は二つ目の記事に大きく反応し円金利が急上昇しました。政策決定会合の2営業日前である13日からはブラックアウト期間に入っており、今回の記事が出たタイミングでは日銀メンバーは外部との接触は出来ないはずですが、今回の記事は日銀関係者情報として書かれています。

その後、政策決定会合では、2022年度物価予想を1.1%に上方修正し物価見通しのリスク評価も中立に引き上げるなど、ほぼ一つ目の記事通りの内容となりました。一方で2023年度の見通しも1.1%と2022年と同水準までしか引き上げませんでした。これは、日銀内部では、供給制約による一時的な物価上昇という見方が優勢だということです。また、必要なら躊躇なく追加緩和という文言は残し、黒田総裁の記者会見でも利上げの議論は全くしていないと発言するなど、引き締めとは程遠い内容となり、JPYは売られました。

【参照記事】ブルームバーグ「黒田総裁、2%目標達成前の利上げを否定「議論していない」

ただ、今回の会合では景気見通しが相当強気になっています。需給ギャップのプラス転に言及し、達成時期が2022年度後半から前半に前倒しされています。次回4月の展望レポート発表時には2024年度の見通しも示されますが、金融政策が大きく前進する可能性があります。

2-2.米国

パウエル議長の公聴会では、利上げ及び年後半のバランスシート縮小の可能性について言及されました。一方で、久し振りに市場の過熱した引き締め織り込みを冷ますように、必要であれば時間を掛けて利上げをするという主旨の発言も付け加えました。結果として織り込み過ぎていたバランスシート縮小が若干剥落し、株と資源価格が上昇し、為替市場ではリスクオンのUSD売りとなりました。

【参照記事】ブルームバーグ「FRB、利上げと量的引き締め矢継ぎ早か-前例なく反応は未知数

スケジュール的には11月に中間選挙を控えており、バランスシートを縮小することで株が下落してしまってはバイデン大統領率いる民主党にとって都合が悪いため、11月直前でのバランスシート縮小をするくらいなら、もう少し早期に実施してしまおうといった思惑が働いたのかもしれません。

米CPIは予想通り前年比+7%と39年ぶりの高水準となりましたが、12月の小売売上高は予想を大幅に下回る前年比▲1.9%と10か月ぶりの大きな減少率となりました。しかしこの数字に関してはモノ不足のなかで消費を前倒ししたり、購買意欲があってもモノがなくて消費しなかった可能性もあるため、一概に消費が落ち込んでいるとは言えないと思われます。

ミシガン大消費者信頼感指数は直近10年で2番目の低水準に落ち込み、同時に1年先のインフレ期待が4.9%と上昇していることから、この先経済がどちらに転ぶのかはインフレ次第という側面が強そうで、FRBがインフレを強く意識していることが理解できます。

CPIに関しては、上昇要因の40%を僅か8%のウェイトしかない自動車関連と住居外宿泊とガソリン価格が占めているため、供給制約やコロナによる経済活動制約がなくなれば、物価は落ち着いてくるという見方が出来る一方で、それ以外のCPI構成要素の92%を占める項目だけの数字を見ると、CPIは+3.8%となっているため、ベースとしてインフレは根強く残っており、FRBの利上げは続いていく可能性の方が高そうです。

2-3.中国

2021年12月のCPIは前年比+1.5%と下落しました。PPIも+10.3%と多少落ち着きを見せており、PBOCとしては金融緩和政策を遂行しやすい環境となっています。一方で、貿易収支は、輸出が増えて(+20.9%)輸入が減少(▲19.5%)ということで、引き続き外需頼みの経済状況であることに変わりはありません。通年でも輸出は+29.9%増加となり、貿易黒字額は9446億ドルと史上最高額となっていましたが、需給環境的には、輸出企業による外国での売上金の元への転換圧力が強まっており、中銀は元高に対する警戒感を強めています。

その後、PBOCは中期貸出制度金利(MLF金利)と7日物リバースレポ金利をそれぞれ0.1%引き下げました。更にローンプライムレート(LPR)も1年物が0.1%、5年物が0.05%引き下げられました。特に5年物は住宅ローン金利のベンチマークとして使われますので、アナウンスメント効果はありそうです。市場予想を上回る緩和政策を打ち出しており、特に不動産市場に注意している様子が感じられます。

2-4.欧州

事実上のテーパリングを決定した12月のECB会合の議事録が発表となりました。議事録前にラガルド総裁から、インフレはエネルギー要因が50%を占めており一時的だという見方が示されましたが、議事録でも高インフレの長期化に警戒しつつも基本的には低下傾向の見通しをベースとして議論されていることがわかります。1月のCPIは、引き続き高水準を維持しておりましたが、今後の物価動向とエネルギー価格に要注目です。

【参照記事】ブルームバーグ「ECBラガルド総裁、インフレ率は今年低下へ-23、24両年も

2-5.英国

雇用統計が発表され、失業率は4.1%に低下しました。雇用者数は増加しましたが前回を下回り、賃金の伸び率も高水準とはいえ、前回から減速しました。物価上昇と同程度の賃金上昇ペースが落ち着くようだと、高水準のインフレが購買意欲減退に繋がる恐れが出てきます。

ジョンソン首相のスキャンダルで辞任を求める雰囲気が日に日に高まっていますが、首相率いる保守党から労働党に転籍する議員が出てきています。圧倒的多数を占めている与党保守党ですが、ただでさえ支持率が低下している中で、この転籍の流れが拡大すると危ないため、保守党内部からも辞任圧力が強まりそうです。

3.今後の注目材料は?

3-1.豪CPI

3か月に1度のCPIの発表があります。オーストラリアの物価は他国と比較して低目であり、それが原因でRBAの引き締めスタンスが強まってきません。一方で市場は7月からの利上げを既に織り込んでしまっている状態なので、今回のCPIの結果は非常に注目されるところです。

オーストラリアは、家賃や自動車価格の強い上昇がなく、電気料金も欧米ほど値上がりしていません。また、労働人口増加が賃金の低下に寄与しており、これも諸外国と違う点です。従って、インフレは発生するかもしれませんが、非常にマイルドで健全なものになる可能性が高く、一方的なAUD高とはならないかもしれません。ただ、IMMポジションを見ても史上最大規模でAUDショートが積み上がっていることから、このポジションの調整として今回のCPIが使われる可能性はあると思われます。

3-2.米FOMC

年内複数回利上げについてどこまで言及があるのかですが、具体的には3月のFOMCでの初回利上げに向けた何かしらのサインは出てこないと、市場が織り込んでいる年4回以上の織り込みに到達しませんので、まずはそこに注目が集まります。

もう一つの注目ポイントは、利上げの先の量的引き締め(QT)の詳細(時期・スピード・規模)についてです。最近の株の低下を受けてパウエル議長が市場を落ち着かせるためのハト的発言をしてくるのかに注目です。これまでの、傾向から考えると、パウエル議長が株の下落に配慮した発言をして、金利低下・株買戻しとなると思いますが、バイデン大統領からインフレ抑制に対する圧力が強まっていますので、難しいところです。

緩やかなペースで利上げを続けてもインフレ抑制効果は小さく、株は下落していますが、雇用市場が堅調である今のうちに思い切った利上げとQTまで推し進めようという考えがあっても不思議ではありません。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチームは、FXに関する知識が豊富なメンバーがFXの基礎知識から取引のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」