日本初の株式投資型クラウドファンディングとして注目されているファンディーノでは、将来性のあるベンチャー企業に投資することで経営支援や社会貢献ができるほか、企業規模が拡大すれば大きなリターンも期待できます。
2019年6月にはファンディーノで初となるイグジット達成案件も出てきています。この記事では、イグジットを達成した案件の内容や利回りについて詳しく解説していきたいと思いますので、株式投資型クラウドファンディングやベンチャー投資に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
目次
- ファンディーノとは
1-1.厳格な審査を通過した案件のみが掲載されている
1-2.ファンディーノで投資するメリット - ファンディーノでイグジットを達成した案件と投資家利回り
2-1.株式会社漢方生薬研究所とは
2-2.イグジット達成による年利回りは35.3% - ファンディーノを利用する際に知っておきたい注意点
3-1.株式は上場されていない店頭有価証券である
3-2.取引数に上限がある
3-3.投資家登録には一定の条件が必要
3-4.募集がすぐに終わることもある - まとめ
1 ファンディーノとは
サイト名 | ファンディーノ | |
URL | https://fundinno.com/ | |
運営会社名 | 株式会社FUNDINNO | |
本社所在地 | 東京都品川区東五反田5丁目25番18号 | |
設立 | 2015年 | |
代表取締役 | 代表取締役CEO 柴原 祐喜 代表取締役COO 大浦 学 |
|
資本金 | 35億9247万9340円 ※2021年6月15日現在 | |
売上高(手数料収入など) | 2億8,594万円(2020年10月期) | |
従業員数 | 94名 ※2021年10月31日現在 | |
上場有無 | 非上場 | |
サービス開始年月 | 2017年4月 | |
投資金額 | 数万円~(案件により異なる) | |
累計応募金額 | 108億円超(2024年1月時点) | |
累計成約件数 | 350件超(2024年1月時点) |
※2024年1月時点の情報となります。最新情報に関しては上記サイトを御覧ください。
ファンディーノは、国内初の株式投資型クラウドファンディングサービスです。ある事業を行う企業の店頭有価証券(未上場株)を発行し、独自のプラットフォームを介して事業に関する情報を公開することで、投資家から資金を募ります。
投資家は1口10万円前後といった少額からIPOを目指す企業の株式を取得することができます。ファンディーノは集まった資金を事業者に払込み、事業者は投資家を株主または新株予約権者として登録した上でIR情報を提供します。
簡単に言えば、上場企業が市場で行っている、株式による資金調達と情報公開の仕組みを、未上場の企業でも行えるようにしたのがファンディーノです。
1-1 厳格な審査を通過した案件のみが掲載されている
ファンディーノでは応募企業に対して厳格な審査を実施しています。具体的には会社の将来性・安定性・独自性・革新性などの項目について、決算書や事業計画書に基づいて判断するとともに、経営者との面接も実施されます。
これらの審査は社内の公認会計士などの有識者を中心に行われ、採用の是非を決める審査会議では審査員の多数決ではなく、全員一致で決められています。
このような厳格な審査を通過した有望なプロジェクトが多く集まっているため、プロ投資家の参加も多く、登録ユーザー数は10万人、累計成約額は81億円を突破しています(2022年5月時点)。
1-2 ファンディーノで投資するメリット
優れたビジネスアイデアを持つ非上場企業は多いですが、公開されている情報が少ないため、一般の投資家はその情報を素早くキャッチすることができません。しかし、ファンディーノでは募集している案件や企業についての情報が細かく紹介されており、投資を行ってからも随時IR情報が提供されます。
また、エンジェル税制を活用できる場合があります。エンジェル税制は、ベンチャー企業への投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度で、投資を行った時点と売却を行った時点のいずれでも優遇措置を受けることができます(※ファンディーノに掲載されている企業の全てがエンジェル税制対象というわけではありません)。
さらに、ファンディーノで投資するもう一つの大きなメリットは、「イグジット」によるリターンが期待できる点です。株式投資分野におけるイグジットとは、ベンチャービジネスなどに投資した資金の回収を意味するもので、主にIPOやM&A等によって達成されます。ファンディーノでは、投資先企業でIPO、M&A、解散などが実現したときに、株式の交付や金銭の支払いが決まります。
設立当初は規模の小さかった企業でも、ファンディーノで資金調達した事業が成功すれば、株式上場も期待できます。企業の知名度や社会的信用が向上したり、大手企業に買収・合併されたりすれば、株式の価値が大きく上昇する可能性もあります。
投資家は、このように創業間もないベンチャー企業に投資することで、大きなリターンを狙うことができるのが利点です。
2 ファンディーノで実際にイグジットが達成された案件
2019年6月に、ファンディーノで資金調達をした株式会社漢方生薬研究所の株式が1.5倍の価格で買い取られるという初のイグジット達成案件が誕生しました。
2-1 株式会社漢方生薬研究所とは
福岡県に本社を構える株式会社漢方生薬研究所は、漢方製剤をネット販売で提供する企業です。予防医療を浸透させ、健康維持や医療費の抑制を達成することをビジョンとしており、その手段としてDNA解析による健康リスクの調査・情報提供サービス、および漢方やサプリの提供を行っています。
同社は、DNA解析アプリやAIを利用した漢方・サプリ提案など、さらなる事業展開や既存事業の拡大を目的にファンディーノで支援を募った結果、目標金額1,200万円に対して、2,925万円を調達することに成功しています。「DNA調査によるセルフメディケーション」というプロジェクトが、社会貢献度の高さと先進性の高さを併せ持つ案件と評価され、投資家450人超からの投資が行われました。
2-2 イグジット達成による年利回りは35.3%
漢方生薬研究所は1株500円から投資を募っていましたが(最少申込単位は1万円)、後に投資会社のLonesta Primula Bankによって、1株750円で買い取られることになりました。買い取りはファンディーノを通して株式を取得していた投資家の保有分のうち、13,300株を上限として希望者から買い取る形で行われました。最少申込単位である1万円を投資していた場合なら1万5千円に、最も出資金額の高いコースである50万円を投資していた場合、75万円になる計算です。
このケースでは株式募集から1年5ヶ月で株価が1.5倍となりましたので、年間の利回りで換算すれば「35.3%」となります。なお、株式を売却せず、今後企業が成長することでIPOなどが実現されれば、より大きな利益を回収できる可能性もあります。しかし、今回のような条件で取引の申し出があれば、利益確定をひとまず行うのも一つの手段でしょう。
このほか、ファンディーノで成約している案件は2019年9月時点で66件となっています。その一部をご紹介しますので、成約企業の今後の動向が気になる方は、参考にしてみてください。
株式会社クラウド漁業
大阪府に本社を構える株式会社クラウド漁業は、混合養殖という養殖手法による漁業を展開しながら、漁業版SPA(製造小売業態)の仕組み作りを行っている企業です。漁業の低生産性や漁業資源の枯渇、人材難などのさまざまな状況からの復活を目的に、新しい漁業の形を研究・提案しています。
IoTやドローンを使った養殖業や、デジタルな漁業日誌などIT化の推進による効率化を図るとともに、未利用魚からの養殖用の餌の開発や、生産した魚のブランディングや消費先の開発などを行っています。
ファンディーノの募集では、目標募集額2,000万円に対して、3,787万5,000円が集まりました。地域創生の可能性を感じさせ、かつ行政や大学などの多くの関係先・専門家との協業によって進行しているプロジェクトということもあって、エンジェル投資家の注目を集めました。
同社の事業はメディアからも注目されており、テレビなどいくつかの媒体にも取材されています。社会的な貢献度も高く、成功すると日本の漁業のあり方を大きく変える可能性があるインパクトがあるため、今後のイグジットが注目される案件のひとつです。
株式会社ファクト
東京都を中心にキャスティング型人材派遣、イベント企画、飲食業などを幅広く展開するのが株式会社キャストです。同社は、HRTech(ヒューマンリソーステック)による企業と労働者のマッチングを低コストで行うために「エナブル」というプラットフォーム作りを行っています。
従来の人材紹介では、クライアント企業と労働者の間の調整に時間とコストが大きくかかり、特に短期労働分野において非効率でした。そこで同社は、中間の調整をシステム化することによって大幅な効率化を図り、個人がライフスタイルに合わせた働き方を選択可能にし、アルバイト人材の質の向上や待遇改善にもつなげました。このほか外国人アルバイト向けのサービスやマイクロファイナンスサービスにも取り組んでいます。
募集時点で9億円以上の売上高を持ち、プライバシーマークを取得しているなど、多くの実績がある企業です。そのため、目標1,875万円の募集に対して2,275万円が集まる人気案件となりました。事業計画に沿って各種事業が順調に進められており、その後も順調に事業が拡大され、メディアでの露出も増えています。
企業の経営力・組織力の高さが感じられ、かつ現在の労働問題の解決の一助を担う可能性があることから、社会貢献性にも注目が集まる企業です。
OCEAN SPIRAL株式会社
OCEAN SPIRAL株式会社は「海を日常に」をミッションに掲げ、海洋を観光や研究開発など誰もが行ける場所にするため、次世代リゾート潜水船 「SEA BALLOON」 を開発、「海中旅行」という新しい文化・市場の形成に取り組んでいる企業です。
モルディブの海中ホテルやメキシコの海中美術館、マイクロソフト社の海中データセンター、海中ドローンなど海洋ビジネスに注目しており、現在約20兆円から2030年に40兆円にまで広がると試算される市場に挑戦しています。
2019年6月には「Team OCEAN」を発足。メンバーにはSEA BAROONの開発を担う米の潜水艦メーカーTriton Submarines社やJTBなどの国内外の有力企業、アドバイザーに大手グローバルIT企業の名誉会長などが参画しています。
株式の募集は2019年8月にを行い、目標金額870万円に対し68人が投資。ファンディーノ最速となる1分54秒で上限応募額1305万円に到達しています。これまでの最速記録が3分でしたので、投資家からの関心が非常に高かった案件の一つです。
なお、2019年11月までにSEA BAROONの導入地を決定、2021年1月に初号機を完成させ、同年中のサービス稼働を計画する予定しています。今回の調達資金はSEA BALLOONの開発人件費や海外視察旅費に充当するとしています。
3 ファンディーノを利用する際に知っておきたい注意点
ファンディーノは有望な案件を多く抱えていますが、投資する際には注意しておくべきポイントがあります。
3-1 株式は上場されていない店頭有価証券である
ファンディーノでは店頭有価証券を発行し、投資家にその投資額に応じて株式を取得してもらう仕組みを採用しています。店頭有価証券には、株式市場で取引される株式とは異なり市場の相場価格がありません。そのため現在は換金性が乏しく、すぐに現金化するのが難しいという特徴があります。
ただ、この点についてファンディーノでは、発行企業に株主コミュニティへの参加を促していくことで、株主同士での売買を可能とし、換金性・流動性を高めていきたいとしています。なお、ファンディーノで取得できる株式は譲渡制限が付されていることがあるため、譲渡が必要な場合は発行会社の承認を得る必要な場合もありますので、この点にも注意が必要です。
3-2 取引数に上限がある
ファンディーノでは、案件ごとに投資できる金額に制限があります。年間に投資できる上限額は「1社あたり50万円まで」となるため、応援したい企業であってもまとまった金額を投資できない点に留意しましょう。なお、最小投資金額は1万円ですが、企業によって異なりますので案件募集ページをしっかりと確認するようにしましょう。
また、ファンディーノでは、投資を行う際の注意として、「配当及び売却益等金銭的利益の追求より、むしろ発行者およびその行う事業に対する共感または支援を主な旨としてご投資ください」と記しています。
クラウドファンディングは少額から資金を募集できるという機能のほかに、企業や事業を応援する多くの人からの声を届ける役割も担いますので、利用者側でも利潤を追求するよりファンやサポーターとして応援する気持ちで案件に参加することが大切です。
3-3 投資家登録には一定の条件が必要
ファンディーノでは、事業を支援する投資家にもある程度の経験や資金力が求められます。基本的な条件は以下の通りです。
- 1年以上の投資経験
- 300万円以上の金融資産
- 満20歳以上満80歳未満
- 投資に使う資金は剰余資金である(=借り入れではない)
また、反社会的勢力でないことが必要なほか、法人は投資家登録することができません。投資家登録のための条件がすべて公開されているわけではありませんが、上記項目は最低限満たしている必要があります。
3-4 募集がすぐに終わることもある
ファンディーノでは上限応募額に到達すると、購入を希望しても基本的にはキャンセル待ちになります。すべての案件が上限の応募額に到達するわけではありませんが、先ほどのOCEAN SPIRALのほか、運行サービス会社のnommocが募集した案件でも、申込開始から1分足らずで目標募集額の1,600万円、4分半で募集上限額の5,000万円に到達しています。
そのため、案件によってはかなり早く終わることを前提に、事前の投資判断を済ませておいたほうが良いでしょう。
4 まとめ
ファンディーノで資金調達に成功した案件が、年利回り35.3%のイグジットを達成したことで、今後のエンジェル投資にも大きな期待が持てる結果となりました。また、ファンディーノは投資家保護を重視した独自の新株予約権の取り扱いを新たに始めており、将来性のあるベンチャー企業を支援する手段が着実に増えています。なお、非上場企業に投資する際は、元本割れや換金性に著しく劣るといったリスクにも注意することが大切です。
この記事を参考にファンディーノでの投資に興味が湧いた方は、案件が成約した企業の動向や最新の募集案件などをチェックしてみてはいかがでしょうか。
HEDGE GUIDE 編集部 ロボアドバイザーチーム
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