ETFとは、上場投資信託(Exchange Traded Funds)のことです。投資信託との違いは上場か非上場かです。
本来のETFは、低コストで小口から投資できる金融商品で、長期運用に向いているのですが、2021年6月における現状は投機的銘柄に商いが集中しています。値動きが荒く信用取引が可能なため、日経平均レバレッジ・インデックスのような投機的銘柄の取引が多くなっており、参加者の目的が大きく違ってきています。
こうしたことはETFの持つ性質に寄与するところがあります。そこで今回は、ETF投資の本来のメリット・デメリットや投資信託、株式との違いを解説します。
※この記事は2021年6月7日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ETFのメリット
1-1.リアルタイムに売買ができる
1-2.信用取引ができる
1-3.信託報酬が安い
1-4.少額から購入可能 - ETFのデメリット
2-1.金額指定ができない
2-2.自動積立ができない
2-3.売買手数料が必要
2-4.銀行や信用金庫、郵便局で取り扱いができない
2-5.外国税額控除を自身で行う必要がある - ETFと投資信託の違い
3-1.リアルタイムに売買ができる
3-2.信用取引ができる
3-3.特別分配金がない - ETFと株式の違い
4-1.純金などの商品にも投資ができる
4-2.保有時に信託報酬がかかる - まとめ
1.ETFのメリット
まずはETFのメリットについて解説します。
1-1.リアルタイムに売買ができる
取引時間中であれば、ETFはいつでもリアルタイムに取引ができます。マーケットメイク制度が導入されているため、流動性が高く、売りと買いの値幅も小さい傾向です。日経平均株価指数やTOPIXに連動するETFは、指数の動きを見ながら売買することもできます。
1-2.信用取引ができる
ETFは株式同様、信用取引ができます。信用取引により、現金や株式を証券会社に担保として預け、担保価値の約3.3倍の取引ができます。50万円相当を担保として預けた場合、最大約166万円の取引ができることとなります。
1-3.信託報酬が安い
ETFは、投資信託と比べ信託報酬が安いといえます。下記表は、各指数のETFと投資信託の年初来騰落率と信託報酬の表です。同じ指数に連動するETFや投資信託の騰落率はほぼ変わりませんが、信託報酬はETFの方が低めに設定されています。
同じ指数に連動する銘柄は運用成績に大きな差が出ないため、信託報酬が安い銘柄を選ぶようにしたほうが無難です。
東証コード | 銘柄 | 年初来騰落率(%) | 信託報酬(%) |
---|---|---|---|
—- | 日経平均株価指数 | 5.74 | —- |
1321※ | NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 | 6.03 | 0.18 |
1320※ | ダイワ上場投信-日経225 | 6.16 | 0.16 |
1346※ | MAXIS 日経225上場投信 | 6.20 | 0.17 |
投資信託 | ニッセイ日経225インデックスファンド | 6.31 | 0.275 |
東証コード | 銘柄 | 年初来騰落率(%) | 信託報酬(%) |
---|---|---|---|
—- | TOPIX | 9.26 | —- |
1306※ | NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信 | 10.30 | 0.088 |
1305※ | ダイワ上場投信-トピックス | 10.33 | 0.11 |
1308※ | 上場インデックスファンドTOPIX | 10.35 | 0.09 |
投資信託 | eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX) | 10.29 | 0.154 |
東証コード | 銘柄 | 年初来騰落率(%) | 信託報酬(%) |
---|---|---|---|
—- | S&P500指数 | 19.86 | —- |
1547※ | 上場インデックスファンド米国株式(S&P500) | 20.42 | 0.15 |
2558※ | MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 | 20.34 | 0.078 |
投資信託 | SBIバンガードS&P500 インデックスファンド | 20.66 | 0.0938 |
※がETF 2021年6月7日現在
1-4.少額から購入可能
ETFは1口から投資することが可能です。iシェアーズ・コアTOPIX ETF(東証コード:1475)や上場インデックスファンド日経225ミニ(東証コード:1578)は1口から投資することができ、現時点では2,000円台から始めることができます。
2.ETFのデメリット
ETFのデメリットは以下の通りです。
2-1.金額指定ができない
一般的な投資信託は、購入する際に金額指定と口数指定が可能ですが、ETFの場合は金額を指定して購入することができません。そのため、日々変動する1口あたり価格をもとに注文を行うことになります。
2-2.自動積立に非対応のサービスがほとんど
ETFの自動積立に対応しているサービスは少なく、積立投資にはあまり向いていません。SBI証券とマネックス証券では米国ETFの定期購入が可能です。またWealthNavi(ウェルスナビ)やTHEO+docomoといった、海外ETFを投資対象にするロボアドバイザー等のサービスもありますが、個別銘柄を積立投資できる手段は非常に少ないのが現状です。
2-3.売買手数料が必要
ETFは買付時と売却時に売買手数料が必要ですが、手数料率は証券会社によって異なります。
一般的な投資信託は、手数料が無料のノーロード投信が主流です。解約時には解約手数料や信託財産留保額が必要な銘柄もありますが、多くの投資信託銘柄は支払う必要がありません。
2-4.銀行や信用金庫、郵便局で取り扱いができない
ETFは取引所に上場しているため、取り扱いは証券会社のみとなります。一般的な投資信託は、証券会社のほか、銀行、信用金庫、郵便局でも購入することができます。
2-5.外国税額控除を自身で行う必要がある
ETFの外国ファンドは、分配金に対し現地で10%課税されたのち、国内で約20%課税されます。このうち、外国(現地)で課税された10%については還付を受けることができますが、還付を受けるためには自ら確定申告をする必要があります。
一般的な投資信託の場合は、2020年1月の税制改正により外国所得税の二重課税が発生しないように、分配金に係る源泉所得税の額から控除されるようになりました。
3.ETFと投資信託の違い
ETFと投資信託の違いを下記表にまとめました。
項目 | ETF | 投資信託 |
---|---|---|
銘柄数(本) | 243 | 5,881 |
取扱い金融機関 | 証券会社 | 証券会社、銀行、郵便局等 |
上場・非上場 | 上場 | 非上場 |
注文方法 | 成行・指値 | 金額、口座指定で翌日に基準価額がわかる |
日中の値動き | あり | なし |
購入時手数料 | 必要(証券会社により異なる) | 不要(ノーロード)が多い |
信託報酬 | 必要(一般的に投資信託より低め) | 必要(一般的にETFより高め) |
売却時手数料 | 必要(証券会社により異なる) | 銘柄による(信託財産留保額) |
定期定額購入 | 定期購入のみ可能 | 可能 |
特別分配金 | なし | あり |
信用取引 | 可能 | 不可能 |
取引の中心銘柄 | 日経レバなど投機的な銘柄 | 国際株式ファンド |
3-1.リアルタイムに売買ができる
ETFは、市場が開いている時間であればいつでも取引ができます。一方、投資信託を売買する場合、15時に注文が締め切られ、その日の夜に基準価額が算出され、翌日には公表されます。前日の注文価格は、基準価額がベースとなります。
3-2.信用取引ができる
ETFは株式同様に信用取引ができます。そのため、日経平均レバレッジ・インデックスに連動するETFといった投機的な動きをする銘柄は、短期売買を中心とするデイトレーダー等からの需要が高くなっています。ETF出来高上位には、レバレッジ型のETFが顔を連ねています。
3-3.特別分配金がない
一般的な投資信託には、元本を取り崩して支払う特別分配金がありますが、ETFには特別分配金はでません。ETFの分配金は、受取配当金と受取利息の合計額から緒費用を差し引いた金額がプラスの場合に限り支払われます。
4.ETFと株式の違い
ETFと上場株式の違いを下記表にまとめました。
項目 | ETF | 株式 |
---|---|---|
銘柄数(本) | 243 | 3,767社 |
取扱い金融機関 | 証券会社 | 証券会社 |
上場・市場上 | 上場 | 上場 |
注文方法 | 成行・指値 | 成行・指値 |
日中の値動き | あり | あり |
購入時手数料 | 必要(証券会社により異なる) | 必要(証券会社により異なる) |
信託報酬 | 必要(一般的に投資信託より低め) | なし |
売却時手数料 | 必要(証券会社により異なる) | 必要(証券会社により異なる) |
定期定額購入 | 定期購入のみ可能 | 可能(るいとう=株式累積投資) |
特別分配金 | なし | なし |
信用取引 | 可能 | 可能 |
取引の中心銘柄 | 日経レバレッジなど投機的な銘柄 | — |
4-1.純金などの商品にも投資ができる
ETFは株式指数や債券、REIT、金やパラジウム等の価格に連動するように設計された投資信託です。株式指数に限らず、金や資源などに間接的に投資をすることができます。
4-2.保有時に信託報酬がかかる
ETFは投資信託のため、ETFを保有している限り信託報酬が発生します。ETFを長く保有すればするほど手数料が累積されるため、購入前に信託報酬を調べ、同じ指数に連動する銘柄であれば信託報酬率の低い銘柄を選ぶようにしましょう。
一方、株式の場合は保有していても信託報酬を払う必要はありません。
まとめ
ETFのメリットは高い流動性と低い信託報酬、デメリットは長期運用に適した定額購入ができないこと、定期購入がしづらいことが挙げられます。また投資信託は銀行や郵便局で購入できますが、ETFは証券会社のみでしか購入できません。
証券会社には対面形式の店舗型とネット型の2つがあります。対面で投資に関する相談をしたい方は店舗型を、売買手数料を抑えたい方はネット証券を使うと良いでしょう。
一般的な投資信託と同じ指数に連動する銘柄の場合、ETFの方が信託報酬は低く設定される傾向があるため、ETFに投資することで運用成績を引き上げることが期待できます。特に長期投資の場合、手数料の差が運用収益に直接影響してくるため、メリットを享受しやすいといえます。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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