株式投資型クラウドファンディング各社のイグジット実績は?投資の注意点も

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クラウドファンディングの形式の1つに、株式投資型クラウドファンディングがあります。

株式投資型クラウドファンディングとは、上場前のベンチャー企業(スタートアップ)の株式を多数の投資家が小口購入し、将来上場や企業売却、いわゆるイグジットをしたときに大きな売却益を期待できる投資サービスのことを指します。それだけに、投資した企業がイグジットしなければ、なかなか利益が生まれません。

そこで2022年7月時点で、日本で運営されている株式投資型クラウドファンディングサービスの中から、実際にイグジット実績があるサービスはどこなのか探ってみました。

目次

  1. 株式投資型クラウドファンディング各サイトの実績
    1-1.FUNDINNOの実績
    1-2.イークラウドの実績
    1-3.ユニコーンの実績
    1-4.CAMPFIRE Angelsの実績
  2. イグジットに成功したのはFUNDINNOとイークラウド
  3. 株式投資型クラウドファンディングに投資するときの注意点
    3-1.倒産リスクがあることを知る
    3-2.長期的な視点に立って投資する
    3-3.出口戦略を立てることは難しいので、優待というメリットも活かす
  4. まとめ

1.株式投資型クラウドファンディングの各サイトの実績

現在運営されている株式投資型クラウドファンディングの各サービスはどのような実績を持っているのか、各社のデータから見ていきましょう。

1-1.FUNDINNOの実績

株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」日本で最も古く、実績が豊富な株式投資型クラウドファンディングサイトがFUNDINNO(ファンディーノ)です。資金調達をしたい多くの会社に利用されており、2022年7月時点で成約268件、累計成約額84億円超の実績があります。国内の株式投資型クラウドファンディングサイトではトップクラスの実績となっています。

イグジットについては、2022年2が末時点の実績で2019年7月に株式会社漢方生薬研究所(現社名:株式会社ハーバルアイ)、2020年4月に株式会社nommocなど計7社が実現しています。

なお、2021年3月に琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社が株式会社東京証券取引所「TOKYO PRO Market」へ上場が承認された事例は、株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行った企業で初めての新規株式公開となりました。

2022年7月ののInnovation Farm株式会社のイグジット事例は、株式投資型クラウドファンディングを利用して資金調達を行った企業が東証プライム上場企業の子会社になった国内初の案件となりました。なお、Innovation Farm株式会社は2019年9月、2021年10月の計2回、ファンディーノで資金調達を行い、2022年2月にFUNDINNO MARKETで銘柄を組成、2022年7月の取引でM&Aによるイグジットを実現しました。

FUNDINNO投資回収事例(イグジット実績)

企業名 投資回収までの期間 投資回収方法 リターン
株式会社ハーバルアイ(旧社名株式会社漢方生薬研究所) 1年5ヶ月 事業会社による一部買付 1.5倍
株式会社nommoc 1年9ヶ月 事業会社による一部買付 1.5倍
社名非公開 1年3ヶ月 ファンドからの買付 1.2倍
社名非公開 2年11ヶ月 ファンドからの買付 1.3倍
社名非公開 3年2ヶ月 自社による買取 1.57倍
社名非公開 3年11ヶ月 自社による買取 1.07倍
琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社 TOKYO PRO Marketへ上場 1.4倍
Innovation Farm株式会社 2年11ヶ月 M&A 1.1~4.4倍 ※1

※1: 332名の投資家がリターンを獲得
※表内の情報は2022年9月時点

1-2.イークラウドの実績

2020年に入って株式投資型クラウドファンディングサイトとして新たに登場したのが、このイークラウドです。2022年5月時点で募集実績は11件となっています。

2022年5月18日に、イークラウドを利用して資金調達を行ったベンチャー企業で初の買収(M&A)が成立したという発表がありました。企業名は非公表ですが、このM&Aで、個人投資家に2.69倍のリターンが発生しています。このイグジット事例では、募集からM&A成立まで9カ月で、1年未満でのリターン発生は国内の株式投資型CFで最速(同社調べ)とのことす。

なお、今回の買収では、業界で初めて開発・導入した株主間契約スキームにより、プラットフォームを通じて投資を行う過程で電子契約を締結し株主間の合意を担保することで、スムーズに手続きを行うことができたとしています。

1-3.ユニコーンの実績

2019年に運営を開始した比較的新しい株式投資型クラウドファンディングサイトがユニコーンです。上場企業の株式会社ZUUが株式の過半数を保有しています。徐々に募集される案件数も増えており、今後の期待が高まる株式投資型クラウドファンディングサイトです。

2022年時点でユニコーンのイグジット実績はまだ有りません。

1-4.CAMPFIRE Angelsの実績

CAMPFIRE Angels(キャンプファイヤー・エンジェルス)CAMPFIRE Angels(キャンプファイヤー・エンジェルス)は株式会社CAMPFIRE Startupsが運営する株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームです。

最先端のテクノロジーを活用したプロダクト開発から、多くのファンを集めるものづくり、社会課題の解決に取り組む事業まで、将来性豊かなスタートアップをエンジェル投資家として応援できます。また、CAMPFIRE Angelsを運営する株式会社CAMPFIRE Startupsは、経済産業省大臣の認定を受けたクラウドファンディング事業者のため、エンジェル税制の適用申請に対する確認事務を自らで行うことができるというメリットもあります。

2022年時点でイグジットの実績はありません。

2.イグジットに成功したのはFUNDINNOとイークラウド

実績を見てきたように、イグジットに成功したのは2022年7月時点でFUNDINNOとイークラウドの2社となっています。

FUNDINNOにおける2022年2月末までのイグジットを実現したのは7社となっています。FUNDINNOでは、イグジットまでの期間は1.5年~4年程度、リターンは1.07倍~1.5倍の実績となっています。

一方、イークラウドでも2022年6月にM&Aによるイグジットが実現しています。募集からM&A成立まで9カ月と短いスパンで、個人投資家に2.69倍という非常に高いリターンが出ています。募集件数は2022年7月時点で12件と多くはありませんが、その中でもイグジットが出てきているということで今後に期待できるといえるでしょう。

3.株式投資型クラウドファンディングに投資するときの注意点

株式投資型クラウドファンディングでは、すぐに利益が出るわけでありません。それだけに、投資前にはどういった点に注意しておけば良いのかを知っておくことが必要です。

3-1.倒産リスクがあることを知る

第一に知っておかなければいけないのが、倒産リスクの存在です。

株式投資型クラウドファンディングの各サイト上の企業情報を見る限りでは、画期的なビジネスを運営して利益も出ていることから、簡単には倒産しないだろうと期待を寄せることもあるでしょう。しかし実際のところ、掲載されているどの会社もこれから成長していく段階にあり、金融機関からの融資だけでは満足に資金を調達できないところばかりなのです。

仮に取り組んでいる事業に失敗すれば、倒産してしまうリスクもあります。上場企業と比べて資本力が限られるだけに、倒産のリスクは決して小さくはありません。

たとえば、倒産・解散件数を公表しているFUNDINNOのデータを見ると、2022年5月末時点で倒産・解散件数は4件となっています。このように、株式投資型クラウドファンディングはハイリスク・ハイリターンの投資ですので、資金を一社に集中させずに分散投資なども心がけていきましょう。

3-2.長期的な視点に立って投資する

株式投資型クラウドファンディングは、基本的にはイグジットして初めて投資家に利益が出るものとなります。それだけに、短期間で簡単に利益が出るものではありません。

東証グロース市場などの比較的上場が容易な株式市場でも、会社の設立から上場までには少なくとも5年から10年の歳月が必要です。設立から数年しか経っていないベンチャー企業に投資し、仮に事業が成功したとしても、上場のためには社内体制の整備、人材の採用、資本力の増強などに時間を要します。ゆえに、そうは簡単に上場できるものではありません。

また上場よりはスパンは短くなりますが、M&Aなどでもすぐに話が決まるということはまずありません。株式投資型クラウドファンディングを通じてベンチャー企業に一度でも投資したら、数年スパンで株式を持ち続ける心持ちでいましょう。それだけに、すぐに利益を求める投資家には向いていません。また資金力に余裕があまりない方にも向いていないと言えます。

3-3.出口戦略を立てることは難しいので、優待というメリットも活かす

株式投資型クラウドファンディングでは、基本的に投資家が出口戦略を立てることはほぼ不可能で、投資先企業に委ねられることとなります。上場していないだけに、取得した株式は証券市場での売買が不可能だからです。

もし、取得した株式を現金化したい場合、投資先企業に株式等の譲渡の承認を得たうえで、自分で買い取り先の個人や法人を見つけるしかありません。また投資先企業に対して株式の買い戻しを願い出たとしても、買い取られることはまずありません。そのため、保有期間中に利益が出ないことがあるということは、投資を行う上での前提になります。

通常の上場企業の株式を保有すれば配当金や株主優待があるように、一部の会社のみですが、株式投資型クラウドファンディングサイトでは株主優待が受けられるものもあります。少しでも株式を保有するメリットを享受したいのであれば、こういった優待制度がある銘柄を積極的に選んでみるのはいかがでしょうか。

まとめ

株式投資型クラウドファンディングは、日本で登場してからまだ5年ほどしか経っていません。それだけに、十分なイグジットの実績も生まれていません。

イグジットまでのスパンは長く、また不確実性が高いことから、早めの収益の獲得や高額の収益が発生する確率を求める人にとっては、必ずしも向いているとは言えない投資手法です。

逆に言えば、今後に大きな成長が望める投資手法でもあります。投資用の資金に余裕があり、長期の視点に立って投資できる人であれば、大きな利益を狙って株式投資型クラウドファンディングに投資してみるのも良いでしょう。その際は倒産のリスクや事業の発展性についての確認もしっかりと行うようにしてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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