子どもから「投資を始めたい」と言われたとき、親に投資経験がない場合は戸惑ってしまうケースも多いのではないでしょうか。
投資で資産を形成するのは、生活を営んでいくうえでも大切なスキルの一つです。それをきっかけに親子ともに投資を学んでいくのもよいでしょう。
今回は子どもの投資についての基本や子どもに適した運用商品、証券会社などを紹介します。
※2023年10月時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 子どもの投資についての基本のポイント3つ
1-1.子どもの証券口座開設は0歳から可能
1-2.未成年口座の取引主体は親権者
1-3.未成年口座の開設の条件 - 子どもが投資をするメリット
2-1.金融リテラシーが身につく
2-2.長期投資が可能 - 子どもが投資をするデメリット
3-1.損をするかもしれない
3-2.学業がおろそかになるおそれがある - 子どもが未成年口座を作って投資を始める方法
4-1.親権者の口座を開設する
4-2.未成年口座を開設する
4-3.未成年口座に入金する
4-4.2023年で終了するジュニアNISAについて - 子どもの投資で大きな失敗を避けるポイント
5-1.投資の勉強をする
5-2.最初は子どもにモニタリングさせる
5-3.少額から始める
5-4.積立投資を活用する - 子どもの投資に適した運用商品
6-1.投資信託
6-2.ミニ株(単元未満株)
6-3.米国株式 - 未成年口座の開設ができる証券会社
7-1.SBI証券
7-2.楽天証券
7-3.auカブコム証券
7-4.大和コネクト証券 - まとめ
1.子どもの投資についての基本のポイント3つ
子ども自身が投資に関心を持ち、「投資を始めたい」と言ったら親はどうすべきでしょうか。最初に、子どもの投資についての基本を解説します。
1-1.子どもの証券口座開設は0歳から可能
未成年者の証券口座開設は多くの金融機関で可能で、年齢の下限は特にありません。つまり、0歳でも証券口座を開設できます。親から見て子どもが投資について理解できそうであれば、口座開設をしてもよいでしょう。
1-2.未成年口座の取引主体は親権者
子どもが自分から「投資を始めたい」と言った場合、投資を身につける好機といえます。興味や関心がなければ、子どものうちに投資を学ぶのは難しいためです。
証券会社での口座開設は特に年齢制限が設けられていないため、0歳から証券口座の開設が可能です。実際の取引を行うのであれば中学生以上を一つの目安として、子ども名義の証券口座を開設し、投資を始めてみるのも良いでしょう。
何歳から始めるかは、子どもの状況や各家庭の事情によって柔軟に判断することが大切です。ただし、基本的には未成年口座の取引主体は、親権者となります。そのため、取引を親子で一緒に行うなど、子どもが投資を体験できるような取り組みがあるとよいでしょう。
1-3.未成年口座の開設の条件
未成年の証券口座開設には、親権者の同意と親権者名義の口座開設が必要です。また、実際の取引では、親権者が主体となることが求められます。金融機関によっては、15歳以上であれば未成年者が取引主体となってもよい会社もあります。
なお、18歳以上であれば親権者の同意なしに証券口座の開設が可能です。
2.子どもが投資をするメリット
子どものうちから投資をすることには、以下のようなメリットがあります。
2-1.金融リテラシーが身につく
2022年4月から高校で金融教育が義務化されるなど、金融リテラシーの向上を目的としたさまざまな取り組みが行われています。投資による資産形成の経験や知識は、金融リテラシーを大きく向上させる方法の1つです。投資の商品の選び方やリスクやリターンについての知識は座学だけでなく、実践によるほうが身につきやすいといえます。
投資の実践を通して金融のさまざまな情報に触れると、投資のスキルだけでなく、金融トラブルを避ける判断力なども養えるでしょう。金銭的なリターンだけでなく、将来の資産形成に向けた学習機会としてもメリットがあります。
2-2.長期投資が可能
若くして投資を始めると、長期間の投資が可能です。リスクのある運用商品への投資では期間が長いほど値動きの振れ幅が抑えられ、低リスクの収益が期待できます。また、運用益を元本に組み入れていく複利運用では、期間の経過に伴って収益の伸びが大きくなります。
以下は、100万円を年率3%で運用した場合の、税引き後の元利合計額です。
- 5年後:112万5,405円
- 10年後:126万6,536円
- 15年後:142万5,367円
- 20年後:160万4,115円
投資の収益に保証はありませんが、早く始めればそれだけ多くの運用益を期待できることがわかります。
3.子どもが投資をするデメリット
子どもが投資をするにあたってのデメリット、注意点には以下のようなものがあります。
3-1.損をするかもしれない
投資は預貯金と違い、利益が確定しているものではありません。運用商品には値動きがあり、タイミングによっては元本割れする場合もあります。損をしてしまったとしても元本は保証されず、自己責任であると知っておく必要があります。
しかし、若いうちから運用商品の値動きを体験し、値下がりするリスクを知るのはマイナスではありません。投資の実践を通じ、リスクを減らす方法について学ぶとよいでしょう。
3-2.学業がおろそかになるおそれがある
株式の短期売買などで値動きを追ってチャートばかり見ていると、学業に悪影響を及ぼすおそれがあります。投資に興味を持つのはよいのですが、自制心を持つことも大切です。
対策としては、株の売買をするのであれば、指し値での売買方法を検討したり、時間を決めて自動売買を利用する方法などが考えられます。また、積立投資のような売買の手間が少ない投資方法のほうが問題は起こりにくいでしょう。
4.子どもが未成年口座を作って投資を始める方法
子どもが投資を始めるには未成年口座を作る必要があります。以下の流れで投資を始められます。
4-1.親権者の口座を開設する
ほとんどの金融機関では、未成年口座を開設するには親権者の口座があることが条件となっています。子どもが口座開設したい金融機関に親の口座がない場合、まずは親の口座を開設します。
4-2.未成年口座を開設する
親の口座開設が完了したら、未成年口座を開設します(親権者と子どもの口座開設を同時に申し込める金融機関もあります)。未成年口座の開設の多くは窓口や郵送での手続きとなりますが、一部の金融機関ではオンライン手続きに対応しています。
4-3.未成年口座に入金する
親の口座開設が完了したら、未成年口座を開設します(親権者と子どもの口座開設を同時に申し込める金融機関もあります)。未成年口座の開設の多くは窓口や郵送での手続きとなりますが、一部の金融機関ではオンライン手続きに対応しています。
4-4.2023年で終了するジュニアNISAについて
ジュニアNISAは2023年末で終了し、2024年から新規の買付ができなくなります。 また、多くの金融機関では新規の口座開設も2023年9月末までとしています。
すでにジュニアNISAで運用している場合
すでに口座を開設している人は、2023年末まで1口座で年間80万円までの非課税投資ができます。2024年以降は、買付けた商品を継続管理勘定で18歳になるまで非課税で保有できます。これまでのジュニアNISAでは、保有する商品は名義人が18歳になるまで引き出しができませんでした。
しかし、2024年以降は18歳になる前でも引き出しを自由にできるようになります。ただし、引き出す場合には商品すべてが払い出され、ジュニアNISA口座が閉鎖となります。一部の引き出しはできない点に注意が必要です。
※出典:金融庁「ジュニアNISAのポイント」
5.子どもの投資で大きな失敗を避けるポイント
子どもが大きな失敗をせずに、スムーズに投資のやり方を学ぶためのポイントを解説します。
5-1.投資の勉強をする
まずは投資の基礎知識を学んでからの実践が大切です。投資について親子で学ぶとよいでしょう。
【関連記事】株式投資の勉強方法は?初心者向けの学習の仕方や注意点も
【関連記事】20代から投資を始めるには何が良い?投資の学び方と商品の選び方も
5-2.最初は子どもにモニタリングしてもらう
子どもの証券口座を開設したら、最初は親の取引を子どもにモニタリングしてもらうとよいでしょう。未成年口座では原則として親権者が投資の主体となります。実際の取引は親が行いますが、学習機会として捉えるのであればまずは一緒に取引を行うのもポイントです。
商品選びや注文を子どもと話し合いながら、実践しましょう。なお、15歳以上では子ども主体の取引を認める金融機関もあります。
5-3.少額から始める
子どもが投資のリスクに慣れるには、少額から始めることが大切です。100円程度からの少額投資が可能なネット証券もあるので、活用するとよいでしょう。少額でも実際のお金を使っての投資には、デモトレードにはない緊張感があるため、より実践的に学ぶことができます。
まずは運用商品の値動きを体験し、リスクとはどのようなものかを知る必要があります。慣れてきたら徐々に投資額を増やすとよいでしょう。
5-4.積立投資を活用する
子どもの日常生活に支障をきたさずに投資をするなら、積立投資から始めるとよいでしょう。積立投資では銘柄を選んで積立設定をすると、あとは自動的に買付が行われます。
買付のタイミングを考えたり、毎回注文をしたりする必要はありません。ときどき運用状況を確認し、値動きを観察するだけでも投資の勉強になるでしょう。
6.子どもの投資に適した運用商品
子どもが投資を始める場合、少額から始められる運用商品が望ましいといえます。子どもでも取り組みやすい運用商品には、以下のようなものがあります。
6-1.投資信託
投資信託は投資家から集めた資金をまとめて専門家が株や債券で運用し、成果を還元する運用商品です。投資信託には、以下のような特徴があります。
- 少額から買付が可能
- さまざまなタイプから自分に合った商品が選べる
- 少ない資金で分散投資ができる
- 積立ができる
投資信託は100円から購入可能な金融機関もあり、子どもでも取り組みやすい運用商品です。
【関連記事】投資信託の始め方は?投資初心者向けに手順や商品の選び方まで解説
6-2.ミニ株(単元未満株)
単元未満株とは、銘柄ごとに決められている最低売買単位の1単元(通常は100株)の株数に満たない株式のことです。この単元未満株を1株単位から購入できるサービスを、一般的にミニ株と呼びます。ミニ株には、以下のような特徴があります。
- 単元株のような議決権はない
- 配当金は持ち分に応じて受け取れる
- 株主優待は基本的に受けられない
- 取扱銘柄が証券会社によって異なる
単元株の買付には通常は10万円以上の資金が必要ですが、ミニ株なら数千円程度で始められます。ミニ株は子どもが株式投資になじむ、よい機会となるでしょう。
【関連記事】ミニ株・単元未満株のメリット・デメリットは?購入できる証券会社も5社紹介
6-3.米国株式
日本株は通常最低売買単位が100株ですが、米国株は1株から購入できます。米国株には、以下のような特徴があります。
- 世界的有名企業が多数上場している
- 長期的に良好なパフォーマンスの銘柄が多い
- 年4回配当を行う企業が多い
米国株は高配当銘柄を保有し続けるスタイルも人気があり、子どもでも投資しやすいといえるでしょう。
【関連記事】米国株投資の始め方は?証券会社選びや銘柄選びなど手順に沿って解説
7.未成年口座の開設ができる証券会社
最後に未成年口座を開設できる証券会社を紹介します。
7-1.SBI証券
親権者の口座開設 | 必要 |
未成年口座で投資できる商品 | ・国内株式現物 ・単元未満株(S株) ・IPO/PO ・立会外分売 ・外国株式(米国・中国・韓国・ロシア株・ベトナム株・インドネシア株・シンガポール株・マレーシア株) ・投資信託 ・債券 |
ネット証券最大手のSBI証券は、未成年が取引できる商品の種類の豊富さも業界トップクラスです。通常、未成年口座は窓口や郵送で口座開設をしますが、SBI証券ではWEB完結が可能です。
7-2.楽天証券
親権者の口座開設 | 必要 |
未成年口座で投資できる商品 | ・国内株式現物 ・IPO/PO ・立会外分売 ・外国株式 ・投資信託 ・債券 ・金・プラチナ ・貸株 ・外国為替(FXは不可) ・楽ラップ |
楽天証券は「楽天証券」は楽天グループのネット証券で、未成年が投資できる商品ラインナップも豊富です。SBI証券同様、WEB完結で未成年口座を開設できます。また、未成年口座で金・プラチナの取引が可能で、毎月1,000円から積立ができます。
7-3.auカブコム証券
親権者の口座開設 | 必要 |
未成年口座で投資できる商品 | ・国内株式現物 ・プチ株(単元未満株) ・投資信託 ・外貨建MMF ・債券 ・米国株式 |
auカブコム証券は5大ネット証券の1つで、多くの商品ラインナップを誇ります。未成年口座ではプチ株という単元未満株の積立で500円から金額指定での買付ができ、しかも買付手数料が無料です。
7-4.大和コネクト証券
親権者の口座開設 | 不要 |
未成年口座で投資できる商品 | ・国内株式現物 ・ひな株(単元未満株) ・まいにち投信 ・IPO ・米国株 |
大和コネクト証券は大和証券グループのスマホ証券で、ティーン口座という親権者の口座なしで開設できる未成年口座を提供しています。「まいにち投信」は100円から毎日投資信託を積み立てるサービスで、「ひな株」は毎日または毎月1株からの定期購入ができます。
まとめ
子どものうちから投資を学ぶことは長い人生でプラスになり、自立した大人への第一歩ともなり得ます。
子どもが無理なく投資のスキルを身につけるには、親の適切な関わりが重要です。親子でコミュニケーションを取りながら投資について学び、実践を通じて理解を深めていきましょう。
松田 聡子
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