「高いインフレ率は誰もが懸念しているが、投資意思決定においてはグロース(経済成長)をより重視するべき」。シュローダーは7月5日に公表したレポートでそう唱えている。インフレリスクが高まる中、投資意思決定において何を重視すべきか判断に迷う局面が増えた。シュローダー・マルチアセットチームは、過去のデータからシナリオ分析を行うとともに、グロースをどこまで重視すべきかを紐解いている。
22年の第1四半期、同社を含む多くのマルチアセット運用者がインフレ圧力に対してヘッジ効果がある(もしくはある程度の保護効果がある)資産を選好していた。インフレヘッジとしてのコア戦略となっているコモディティは、年初来でプラスのパフォーマンスを記録し、この傾向は過去のスタグフレーションの局面とも整合する。
株式スタイルも、エネルギー銘柄や実質インフレとキャッシュフローに明確な関連があるセクター(リートやインフラ)はアウトパフォームしている。「物価上昇からの逃避先を求める投資家の懸念を反映している」と同社は見る。
だが、続けて「22年の第2四半期以降、インフレーション・シナリオが崩壊する可能性を示す兆候がみられる」と警告。インフレヘッジ効果があるとされるリートと米国物価連動国債は4月中に変曲点を迎えた。「インフレ耐性がある資産が急上昇した後、一時的に上昇が一服しているのか、投資家の懸念がインフレから経済成長の減速に移っていることを意味しているのか。正確に読み解くことは困難だが、今年後半に注視すべき事象」と訴える。
短期的なリスク分散先の1つとして現金が再浮上している。これについて同社は「インフレが高止まりし、短期実質利回りがマイナスとなる中では、現金の購買力が低下していることは明らか。しかし、預金金利が徐々に高まるとともに、現金保有による機会費用も減少する」という見解だ。
では、投資家は景気後退に対して耐性があるポートフォリオ構築をいつ始めるべきか。同社は「当面の間、インフレ率は物価目標よりも高い水準で留まる可能性が高く、スタグフレーション局面に移行するリスクが高まっている。しかし、景気モメンタムを減速させ、総需要を減少させることで、中央銀行はインフレを抑える可能性がある。一方、政策当局が地政学的リスクの高まりや供給制限に伴う経済成長の減速をコントロールすることは難しい」と俯瞰してみせる。
そのうえで「ロシアによるウクライナ侵攻、中国における新型コロナウイルスの感染状況(再拡大)、そして国際物流におけるボトルネックは、深刻なサプライチェーン問題を引き起こしている。この問題は物価上昇と経済成長減速の要因であり、すぐには解決できない。足元での不透明感に加え、どのような経済要因が投資家の見通しを左右する要因となるのかという予測は困難で、インフレもしくは経済減速のシナリオに向けて、ポートフォリオの資産配分を過度に変更するのは見当違いかもしれない」と懸念しながらも、マルチアセットチームとしては「今後数か月間は2種類の資産を組み入れた分散ポートフォリオを構築することが最良」と説く。
1つは「インフレが継続するというテールリスク・シナリオに対してヘッジ効果を持つ資産」で、原材料や貴金属、実物資産に比重を置いた株式セクターなど。もう1つは、名目および物価連動債など「景気モメンタムの急下降に対してポジティブに反応すると思われる」資産を挙げた。
【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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