シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は1月5日、シュローダーの2022年市場見通し「アジア(除く日本)株式」を公表した。アジア地域の一部の国の株式市場ではバリュエーションが高まっており、銘柄選択が非常に重要とする一方、中国では政府による規制強化が短期的には中国株の魅力を制限すると示唆している。
中国では21年、不動産開発会社である中国恒大集団の経営難が大きな障害の一つとなった。同社は「中国恒大集団のデフォルトの可能性が金融システムの破綻を引き起こすきっかけになるとは考えていないが、そのリスクを軽く考えてはいけない」と警告する。「景気への影響はほぼ確実に起こる。不動産業界における流動性のひっ迫は、すでに建築着工の遅れや土地購入の鈍化につながっており、不動産と個人消費の間には密接な相関関係があることから、不動産セクターが減速すれば、中国経済全体に大きな影響を及ぼす可能性がある」ためだ。
また、不動産セクターの減速以外にも、小売売上高の減速など既に低迷の兆しが見られる。新型コロナウイルスの感染拡大やエネルギー価格の高騰など、22年の中国経済には複数の逆風が吹いている。注目を集めるインターネット・セクターは、21年には株価が調整したが、同社はこの分野にも慎重な姿勢を維持している。理由として、不当競争や消費者情報の不正利用などの不正行為を取り締まる規制が不透明な点を挙げる。さらに、インターネット企業の主要な成長分野(eコマース、クラウド、コンテンツなど)では、競争の激化が予想されること、海外のコンテンツが厳しく制限され、使用料や広告収入に影響を及ぼす可能性がある。
中国株式市場は巨大で多様性のある市場と見なされてきた。しかし、現段階で同社は「『国が前進し、民間が後退する』とは、多くのセクターで株主利益の見通しが厳しくなっていることを意味する。投資対象として興味があるセクターや銘柄の幅が狭まってきた」と懸念している。
一方、インド株式市場は、「魅力的な投資機会がある」としている。インドは中国株式市場の低迷の裏で株式市場が堅調に推移しており、足元の国内の経済活動の健全な回復は、企業収益の回復につながっており、オンライン・セクターの企業の新規株式公開(IPO)なども注目を集めている。中国よりも柔軟な規制環境を背景に、インドが経済の多くの分野で「キャッチアップ(追いつく)期」にあり、インフラ整備やデジタル化の進展により、インド経済の見通しは他の多くのアジアの新興国より有望という見方に立つ。株価は割高だが、「今後IPOの機会や公募増資の機会が多く残されており、それが投資機会になる」という考え。
アジアの他の国のうち、韓国と台湾については、ハイテク・セクターの大半の企業の収益性は依然高水準にあるが、減速する可能性を懸念している。在宅勤務の減少でハイテク製品への需要が後退し、関連銘柄の株価にマイナスの影響を及ぼす可能性があるという見方に基づく。ただし、企業向けの製品需要の増加、スマートフォンや自動車向けのハイテク製品の需要伸長により、市場全体では横ばいで留まると予測する。
東南アジア諸国連合(ASEAN)地域については、比較的慎重な見方を維持する。ASEAN域内の既存の銀行や伝統的なエネルギー関連の銘柄は、新しい金融技術を提供する会社や再生可能エネルギーを手掛ける企業等からの影響、例えば、より有用な新興企業にとって代わられる「ディスラプション(創造的破壊)」といった動きを受けており「魅力的とは言えない」とした。
同社では、アジアを拠点とし、各々のニッチな分野で世界をリードする企業、比較優位性を活かして市場シェアを獲得している企業を選好するほか、半導体、デザイン・サービス、ソフトウェアなどのテクノロジー関連銘柄にも注目する。
【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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