ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ株式会社が9月3日公開した9月マクロ・市場展望の和訳版で、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズのグローバル・マーケット・ストラテジー部門責任者エスティ・ドウェク氏は①年内のテーパリングに関する議論が活発化したが、市場に目立った変化はない②利回りは低水準で安定しているが、徐々に上昇傾向に戻る可能性がある③シクリカル銘柄は最近下落圧力を受けているが、引き続き年末に向けてパフォーマンスは向上すると見ている――と所見を述べている。以下、抜粋する。
インフレ、テーパリング、中国の規制、デルタ変異株などの要因は、景気回復や株式市場を逸脱させるには至らなかった。8月中旬に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、「物価安定目標については委員会が定める『さらなる著しい進展』の基準が満たされ、最大雇用目標についてもほぼ満たされたと見ている」ことから、年内にテーパリングが行われる可能性があることを指摘した。これは市場にとって予想外の展開ではなく、問題にはならない。調整は徐々に行われることに加えて、予想されていた。
利上げは2022年後半から2023年前半までは実施されない見通し。潤沢な流動性と財政支援策に支えられ、米国経済は力強い回復路線を維持している。米国上院では、超党派による1兆ドル規模のインフラ整備計画と「ソフト」なインフラに焦点を当てた3.5兆ドル規模の予算案の両方が可決された。インフラ計画が進む一方で、9月末には公的債務上限の引き上げの必要性が迫っている。欧州各国は、新型コロナのパンデミックからの回復およびより環境に優しく持続可能な経済の実現を目的とした総額8000億ユーロの欧州復興基金から、最初の資金を受領した。
新型コロナ症例はデルタ変異株の拡大により世界的に急増している。特に米国では入院患者数は1月以来の水準となる週10万人に近づいているため、注意深く見守る。ただし、ワクチン接種を完了した人の割合が増え続けていることや、ワクチンを接種した人の抵抗力が高まっているように見えることから、さらなる制限措置につながるとは考えていない。
中国の規制は、引き続き新聞の見出しを飾り、市場、特にアジア株や中国の影響を受けやすい高級品関連セクターに影響を与えている。アリババとジャック・マーに始まった中国の規制は、現在、独占禁止法、生産性、データ規制、不平等、教育などにまで及ぶ。その規模や範囲を評価するのは尚早だが、中国の規制強化は今後も続くと思われる。しかし、バリュエーションは後退しており、魅力的な水準で市場に参入する機会が生まれている。こうした背景から、ここ数週間、株式市場のボラティリティーは高まっている。中国株は引き続き低迷しており、シクリカル株が下落圧力を受ける一方、グロース株が復活している。引き続き強気姿勢を維持する。中央銀行や政府の支出による十分な支援を受け、世界的に経済成長は持続する見通し。第2四半期の決算発表シーズンでは、増収と利益率の改善による歴史的な業績が確認されており、見事なまでの利益成長に繋がっている。バリュエーションは依然として高水準にあるが、今後数ヶ月間は、収益成長が引き続き市場を支えると考える。
コモディティ価格の上昇、サプライチェーンのボトルネック、ベース効果などにより高水準のインフレ率が続いているが、市場は中央銀行がインフレ率を抑制してくれると確信している模様で、利回りは低水準で安定している。しかし、行き過ぎた感もあり、年末に向けて上昇トレンドが再開する可能性もある。
経済のポジティブ・サプライズは鈍化しており、成長がピーク入りした可能性を示唆している。しかし今後数四半期は、経済指標は堅調に推移する見通しで、引き続き高成長が見込まれることから、リスク資産は下支えられる見通し。ペントアップ需要が解放され、利益率が向上することにより、企業の収益は増加し続けている。バリュエーションは依然として高水準にあるが、堅調な収益成長が今後も市場をけん引すると思われる。株式市場は引き続き肯定的に見ており、引き続きシクリカル関連銘柄を選好する。
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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