米インフラ法案における暗号資産取引の課税対象が拡大される可能性があることが、8月30日に報じられた。
バイデン政権は、インフラ法案の可決に伴い、暗号資産交換業者が持つ顧客の口座情報を提出するよう求める可能性があるという。取得した情報は各国政府と共有され、他国で暗号資産取引を行っている米国人からも納税額を増やしていきたい構えだ。
具体的には、インフラ法案で度々議論の対象となっている「ブローカー」の定義を、現在の暗号資産取引所、ウォレットプロバイダ、PoSにおけるバリデータ、開発者などからさらに拡大するという。海外に口座を持つ人物が設立した企業の受益者も対象になるとされている。
報道によると、米国の法律では、金融機関がマネーロンダリング調査などの際に特定するよう求められる受益者には、会社の25%以上の株式を所有する個人などが含まれるという。これを暗号資産の文脈でも適用しようということだろう。背景には、米国人が暗号資産取引による利益に対する課税を逃れるために、海外にシェルカンパニーを設立する例が急増している点があるという。
インフラ法案では、10年間で280億ドルの資金を調達できると見積もられている。加えて、さらに年間600ドル以上の資金移動が行われた口座情報の報告を義務化することで、税逃れを防いでいく方針だ。そのための最も効果的な手段が、暗号資産領域の税制強化になるという。
財務省によると、暗号資産市場のグローバルな性質により、本来納税されるべき税金が暗号資産取引所やウォレットプロバイダを通してなかったものにされているという。今回のインフラ法案に限らず、財務省が毎年公開しているグリーンブックで上記の点が度々指摘されてきた。
インフラ法案については、上院での審議の際より民間からの強い反発の意見が相次いでいたものの、特に目立った修正が適用されずに下院に持ち込まれていた。下院でも同様に、修正案の反映はなく通過する見込みとなっている。
税制強化が主な目的ではあるものの、その実現性については疑問が呈されており、事業者が実際に義務を果たすことができるのか不透明であるとの意見が多く寄せられている。
【参照記事】Treasury pushes global crypto data-sharing rules in budget bill
株式会社techtec リサーチチーム
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