ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ株式会社(ナティクシスIM)は3月22日、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ・ソリューションズのジャック・ジャナスウィックス、ギャレット・メルソン両氏のコメント「ロシア・ウクライナ情勢:現状と課題」を発表した。ウクライナ紛争は依然、不透明感が強いが、両氏は「水面下では事態解決への兆しが見え始めている」として、今後は「3つの可能性」を挙げる。可能性の一つ目は紛争の長期化、二つ目は激しさを増すロシアの軍事行動、三つ目は交渉による和解だ。
可能性のうち2つの結果については、両氏は「水面下では解決の糸口が見えてきている」との見方を示す。紛争が長期化すれば、ロシアは国際社会からの孤立や国内の反抗行動、ウクライナは損失拡大と民間人の犠牲の増加と、双方が国益を損なう。
「両者の間には依然として隔たりがあるが、交渉は継続しており、要求も減少している。ロシアによるドンバス地域支配の正式承認、ロシアによるクリミア支配の承認、ウクライナの安全保障を交換条件としたNATOとの断絶宣言および非軍事化という点がネックになっており、ウクライナ側の反発はあるものの、最初の2つの要求は、おおむね現実的な落としどころを形にしたもの。最近のゼレンスキー大統領の発言は、安全保障の見返りに中立を保つことに前向きであることを改めて示している」と同社は見る。
一方、早期終結を難しくする要因として、中国に軍事支援を要請する可能性を挙げる。バイデン氏と習近平氏の会談が行われているが、西側諸国は、中国が制裁を骨抜きにするような行動を取れば、中国にも照準を当てる可能性があると明言している。物価の高騰を受け世界の消費が徐々に鈍化し始めるであろう時期に、中国はゼロ・コロナ政策に固執するなど、中国の成長に対するリスクは増加している。この点を同社は「無関与ではいられないというインセンティブになる可能性がある」とする。
そのうえで、足元の市場の動きについては「経済の落ち込みは今後もリスク要因となるが、石油の供給混乱と消費者需要への打撃という深刻な影響を市場が素早く織り込んだ後、石油価格は危機以前の水準に戻り、インプライド・ボラティリティは侵攻前の水準を下回り、市場は著しく売られ過ぎた水準から立ち直り始めており、その他多くの資産で売られ過ぎのレベルからの反発が確認されている」と俯瞰する。
食品と燃料価格の上昇を端緒に、燃料価格はすでにユーロ圏のインフレの主要因であり、個人消費に占める燃料価格の割合が比較的高い水準にあることから、欧州経済にとって需要への重大な打撃のリスクは依然として高い。一方、原油と穀物の主要生産国である米国経済への直接の影響は「かなり限定的」と見る。危機によって米国のインフレ率減速のペースは鈍化が予想されるが、消費者には十分な貯蓄と堅調な賃金上昇という強力な緩衝材があり、食料と燃料価格上昇の影響を軽減することができるためだ。
今後の方向性は不透明だが、同社は「侵攻の初期段階で市場に織り込まれていたテールリスクの多くはロシア以外の国の経済活動や市場にはそれほど影響を与えない」としながら「欧州では経済成長の下振れリスクとインフレの上振れリスクが存在する一方、米国は比較的影響を受けにくい可能性が高い」と付言している。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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