近年では、長期運用による資産形成が政府からも推奨されていますが、どうしたらいいのか分からないとお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
当記事では、投資初心者の長期運用に適した制度である「つみたてNISA」に対応する投資信託の中から、資金を集めている人気のファンドを紹介し、長期運用による資産形成のための資産構成や税制優遇制度、長期運用が推奨される背景について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身の判断において行われますようお願い致します。
※2022年3月9日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でも確認をお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。
目次
- つみたてNISAで純資産を集めている投資信託上位10本
- 政府による資産形成推奨の背景
2-1.年金運用の現状
2-2.GPIFの年金運用
2-3.年金制度の今後
2-4.つみたてNISAとiDeCo - つみたてNISAとNISAの併用はできる?
3-1.一般NISAは2024年から長期運用向け制度に変更
3-2.長期運用に特化した税制優遇制度へ切り替えが進む - 長期運用で目標としたいトータルリターン
4-1.物価上昇率を超えるトータルリターンを目指す - 長期の資産形成に適したポートフォリオを考察
5-1.低リスク資産と許容範囲のリスク
5-2.低リスク資産だけで固めない - まとめ
1.つみたてNISAで純資産を集めている投資信託上位10本
SBI証券取扱のつみたてNISAで投資ができるファンドをピックアップしました。数値は2022年3月10日時点、SBI証券によるデータです。
ファンド名 | 純資産(百万円) | 管理費用 | 基準価額 | トータルリターン/3年 |
---|---|---|---|---|
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 969,245 | 0.0968%以内 | 16,876 | 19.46% |
楽天-楽天・全米株式インデックス・ファンド(愛称:楽天・バンガード・ファンド(全米株式)) | 463,678 | 0.162%程度 | 17,525 | 18.60% |
SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド (愛称:SBI・V・S&P500) | 459,524 | 0.0938%程度 | 15,468 | – |
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | 410,640 | 0.1144%以内 | 14,851 | 14.94% |
レオス-ひふみプラス | 406,828 | 1.078%以内 | 41,831 | 6.37% |
ニッセイ-<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド | 339,285 | 0.1023%以内 | 23,169 | 16.71% |
セゾン-セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド | 285,447 | 0.57%±0.02%程度 | 18,125 | 8.52% |
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 277,615 | 0.1023%以内 | 17,525 | 16.75% |
ニッセイ-ニッセイ日経225インデックスファンド | 179,449 | 0.28% | 29,155 | 9.18% |
セゾン-セゾン資産形成の達人ファンド | 165,280 | 1.35%±0.2%程度 | 27,449 | 11.56% |
純資産のトップ10では、全米株式や先進国株式のインデックスファンドが目立ちました。特にS&P500のインデックスファンドにはよく資金が集まっています。つみたてNISAで投資できるファンドは他にも数多くあるのですが、世間的にトレンドは全米株式のインデックスファンドとなっているようです。
長期投資を前提にポートフォリオを組む場合、分散投資の観点から株式以外の資産も取り入れたいところです。
2.政府による資産形成推奨の背景
近年、個人の資産形成が推奨されるようになり、長期運用による資産形成を後押しする国の施策として、つみたてNISAやiDeCoの税制優遇制度が始まりました。以前にもまして、個人の資産形成を推奨するようになった背景にはどのような事情があるのでしょうか。
2-1.年金運用の現状
金融庁は、平成31年に貯蓄から資産形成へというスローガンをもとに「人生100年時代における資産形成」という資料を作成し、公開しました。
資料には、様々な根拠となる数値データが示され、現状のままだと所得代替率70%を年金で維持するには、2050年の時点で、世界基準でみて約26兆ドル不足するとされています。アメリカでは、老後世帯の金融資産は増加しているのに、日本の老後世帯では貯蓄率は高いが金融資産の増加は見られず、この原因は資産運用にあると結論づけています。
要約すると、今の年金制度は時代に合わなくなりつつあるので、ある程度の自助努力をしてほしい、以前のように預貯金の金利で資産が増える時代ではないことも理解してほしいという内容です。
2-2.GPIFの年金運用
GPIFの年金運用は時折ニュースで状況が取り上げられますが、GPIFの運用資金は2021年12月時点でおおよそ200兆円程度です。GPIFが運用している積立金の200兆円は、年金支払額の3年分とされ、余剰金で運用しているため、運用成績が良くても悪くても年金全体の制度にはあまり影響はありません。
現在の年金制度は、現役世代の保険料や全国民が支払う消費税ををそのまま支払いにあてる、賦課方式をとっています。現在の年金制度の主な財源は賦課方式によるものです。
近年の少子高齢化により、このまま賦課方式を続けていると現役世代の負担が増大し、支えきれなくなることが予想されています。現状では、余剰金の運用をもって賦課方式を支えつつ、緩やかに積立金を取り崩している状況です。
2-3.年金制度の今後
年金制度そのものは破綻しませんが、このまま少子高齢化が続くと高齢者を支える現役世代が減少し、負担も大きくなります。したがって、このまま賦課方式を取り続けていけば、貰える年金額の減少や、年金を貰うことができる年齢が上がっていくことから免れることはできません。
長寿化も併せて考えると、年金だけでは生活できなくなるため、国が個人での資産形成を呼びかけているのです。
2-4.つみたてNISAとiDeCo
「人生100年時代における資産形成」という資料の中で、つみたてNISAやiDeCoについて、個人の資産形成の必要性と併せて、詳しく制度解説を行っています。資料では、つみたてNISAとiDeCoはお互いを補完し合う関係という説明がなされていました。
年金制度であるiDeCoや財形貯蓄は、払い出しや拠出可能な年齢に一定の制限がついていますが、つみたてNISAは柔軟性のある制度で、払い出しの年齢制限はありません。金融庁は急な出費にも対応できる柔軟な資産形成をつみたてNISAで行いつつ、老後の生活資金の土台はiDeCoや財形を活用すると良いとしています。
金融庁は今後、年金制度を補完する制度として、iDeCoとつみたてNISAの利用を国民へ向けて推奨していく方針です。
3.つみたてNISAとNISAの併用はできる?
長期運用に最適化されたつみたてNISAと、短期運用にも対応できる一般NISAを併用すると柔軟な運用ができそうに思えますが、残念ながらつみたてNISAと一般NISAの併用は不可となっており、どちらかの口座しか開設できません。
NISAは今後制度変更される予定となっており、国が国民へ向けて推奨したい資産形成を把握しておく必要があります。
3-1.一般NISAは2024年から長期運用向け制度に変更
一般NISAは2024年に、現状の一般NISAとつみたてNISAを合体させたような制度へ変更されます。具体的にはNISA枠が2階建て構造となり、1階建て部分の20万円の枠はつみたてNISAと同様の扱いに、2階建て部分の102万円は現行の一般NISAと同じ制度になります。
2階建て部分の枠を使うには、1階建て枠の20万円を使い切る必要があります。したがって、20万円の積立投資を完了しなければ、株式やリートには投資できない仕組みになっています。今後、一般NISA口座は、長期運用前提の制度へと方向を示すことになりました。
3-2.長期運用に特化した税制優遇制度へ切り替えが進む
現状の賦課方式による年金制度が時代に合わなくなり、今後、制度の形骸化が進むことが予想されています。少子高齢化がこのまま進み続けると、賦課方式の割合が多い年金制度では、老後の資金を捻出することができなくなります。
NISAからつみたてNISAが登場し、企業型確定拠出年金を利用できない人たちへ向けてiDeCoも開放されるようになりました。今後も長期運用を支援する税制優遇制度が展開されていく可能性が考えられます。
4.長期運用で目標としたいトータルリターン
長期運用で資産形成といっても、具体的に年間どの程度のトータルリターンを目標とすると良いのでしょうか。日銀が発表している物価上昇目標や年金運用の目標利回りから考察します。
4-1.物価上昇率を超えるトータルリターンを目指す
日銀は現在、完全なデフレの脱却を目指して物価上昇率2%を目標にマイナス金利政策を維持し続けています。
マイナス金利政策によりインフレが起こると、物価は上昇します。賃金は据え置きで物価が上がると、相対的に労働コストが下がり、企業の運営がラクになります。結果として企業に余力ができるため、人を雇う流れが起こり、世の中の景気がよくなる、という政府や日銀の狙いがあるのですが、現時点では、思うようにいかず目標は未達です。
それでも日銀が物価上昇目標を2%としている以上、それ以上の運用を行い、資産価値を物価に合わせて維持しなければ、資産が目減りしていく可能性があるのです。
また、年金運用の目標運用利回りは「賃金上昇率+1.7%」とされており、最低でも1.7%は確保してほしいと、厚生労働大臣が定めた中間目標に記されています。
このことから個人で資産形成を行う場合、年金運用の1.7%と、日銀の物価上昇目標の2%を目安にすると良いとされています。
5.長期の資産形成に適したポートフォリオを考察
全米や先進国株式のインデックスファンドへの投資が現在のトレンドとなっていますが、長期運用を行うにあたって、どのようなポートフォリオを組むとよいのでしょうか。
5-1.低リスク資産と許容範囲のリスク
長期運用を想定したポートフォリオでは、できるだけリスクを抑えつつ、目標とするトータルリターンに届くよう、ファンドを構成する必要があります。
前述の目標利回り2%前後を達成するには、ほぼリスクの無い預貯金だけでは資産が目減りしてしまいます。低リスクなバランスファンドでは、トータルリターン2%を超えるには少々厳しいでしょう。リスクの大きさとリターン・ロスの大きさはイコールの関係にあるからです。
トータルリターン2%前後を目指すポートフォリオとして、例えば「預貯金+低リスクなバランスファンド+株式インデックスファンド、攻めのバランスファンド、アクティブファンド」でポートフォリオを構成するという考え方があります。
預貯金と低リスクなファンドを土台として、許容できるリスクに応じてリスクを取るファンドの組入を考えてみてはいかがでしょうか。
5-2.低リスク資産だけで固めない
個人の資産形成は、手持ちの資産を何倍にも増やしていくというよりは、インフレ率に見合うトータルリターンを出し続け、物価上昇による資産価値の目減りを予防する趣旨で行います。
したがって、預貯金に加えて低リスクなバランスファンドや国内の公社債ファンドだけでポートフォリオを構成しても、トータルリターンが低すぎて、あまり意味をなさない状況に陥る危険があります。
低リスク資産で土台を固めたら、ある程度リスクを取るつもりでポートフォリオを構成すると良いでしょう。
まとめ
年金制度が現代の社会情勢に合わなくなってきている昨今、老後のための資産形成として、個人で投資を行うことが求められています。政府はiDeCoや預貯金で老後資金の土台をつくり、柔軟に対応できるつみたてNISAで急な出費に対応しつつ、ライフスタイルに合わせた長期運用を推奨しています。
つみたてNISAで投資できるファンドを調べてみたところ、多くは全米、先進国株式のインデックスファンドでした。近年、株式相場が上昇トレンドを続けているので、3年から5年のトータルリターンは高い数値を示していますが、長期運用を考える上では、株式以外の資産にもバランス良く分散投資しておきたいところです。
sayran
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