東証の市場再編、株式市場への影響は?投資戦略の考え方も

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2022年4月から、東京証券取引所は新しい市場区分に変更されます。現在の市場との違いや、企業にどのような影響があるのかについて解説します。今後の株式投資の方向性を探るためにも押さえておきたい内容です。

※この記事は2021年9月29日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 東証市場再編とは
  2. 新しい市場区分(2022年4月4日~)
    2-1.プライム市場
    2-2.スタンダード市場
    2-3.グロース市場
  3. 東証1部の3割がプライム市場の条件を満たしていない
  4. 市場から退場する企業も
  5. まとめ

1.東証市場再編とは

現在、東京証券取引所(東証)には、以下の4つの市場があります。

  • 市場第一部(東証1部)
  • 市場第二部(東証2部)
  • ジャスダック(スタンダード・グロース)
  • マザーズ

しかし、現在の市場区分には2つの問題点があります。1つ目は、市場区分のコンセプトが曖昧なことです。たとえば、市場二部とジャスダック、マザーズの位置づけが重複しているほか、東証1部のコンセプトもわかりにくくなっています。

2つ目は、企業価値向上のためのインセンティブが働きにくいという点です。たとえば、上場廃止基準は上場基準よりも低いので、一度上場してしまえば、企業価値を上げる努力をしなくても上場を維持できてしまうのです。

また、東証1部から他の市場へ降格する基準も緩いので、東証1部企業が増えすぎてしまった結果、最上位企業として質が低下しているとの懸念も高まっています。

そこで、東証は国内外の投資家から支持を得られる魅力的な市場を提供するため、2022年4月から新たに3つの市場区分に見直すことを決定したのです。

2.新しい市場区分(20220年4月4日~)

見直し後の市場区分は、「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の3つに再編されます。

2-1.プライム市場

プライム市場は流動性の高い大企業向けの市場です。機関投資家の投資対象となるような時価総額を持ち、高いガバナンス(企業統治)水準を備えていることが求められます。

そして、取引の円滑化や公正な価格形成を目的として、現在の東証1部よりも流通株式比率を重視しています。プライム市場に上場するためには、流通株式比率が35%以上必要なのです。

流通株式とは、すべての上場株式数から「自社株」や「役員の持ち株」、「上場株の10%以上を保有している大株主」を引いた株式数のことです。流動性の低い、持ち合い株などの政策保有株が除外される点が特徴です。そのほか、流通株式時価総額100億円、流通株式数20,000単位以上、株主数800人以上などの条件があります。

2-2.スタンダード市場

スタンダード市場はプライム市場の上場基準を満たさないものの、市場における投資対象として一定の流動性や時価総額を持ち、上場企業としてのガバナンス水準を備えた企業向けの市場です。たとえば、流通株式時価総額10億円以上、株主数400人以上、流通株式比率25%以上などが上場基準となっています。

現在の東証1部や東証2部の中小型株、ジャスダック(スタンダード)の大型株などが対象になります。

2-3.グロース市場

グロース市場は、現在のマザーズやジャスダック(グロース)などの新興市場を対象とした市場です。高い成長を実現するための事業計画を有している企業が対象ですが、事業実績からはリスクが高めになります。リスクが高くてもリターンを求めたい投資家のための市場といえます。

上場基準も他の市場に比べると緩く、株主数150人以上、流通株式時価総額5億円以上、流通株式数1,000単位以上となっています。

3.東証1部の3割がプライム市場の条件を満たしていない

東京証券取引所は、7月に上場企業が新市場の基準を満たしているかどうかを企業に通知しました。その結果、東証1部の約2,191社のうち、プライム市場の基準を満たしていない企業が約3割の664社にのぼることがわかったのです。

東証は海外投資家の資金を呼び込むため、プライム市場の上場基準を厳しくしています。流通株式数を20,000単位以上、流通株式時価総額を100億以上、流通株式比率35%以上などと定めています。プライム市場の上場基準を満たさなかった企業には、流通株式の時価総額や比率を満たしていないところが多かったのです。

東証1部企業は改善に向けた報告書を開示すれば、当面はプライム市場に残れます。しかし、進捗状況を報告し、政策保有株の削減など株式の流動性を高めることが必要になるのです。

4.市場から退場する企業も

現在より上場基準が厳しくなるので、非上場を選択する企業も増えています。MBO(経営陣の参加する買収)による非上場化の発表をする企業も増えてきました。2022年に実施される市場再編では、株主数や流通時価総額の基準が厳しくなるので、上場維持が難しくなる中小型株を中心に、市場から退場する企業が増えているのです。

2021年の1~6月期では、サカイオーベックスやオリバー、EPSホールディングスなどが非上場化を選択しました。2022年4月の市場再編を控え、今後も非上場化を選ぶ企業は増える可能性があるので、上場基準を満たしていない企業の株式を保有している場合は注意が必要です。

まとめ

東証の市場再編によって、企業は上場する市場を選ぶことになります。ただ、東証1部企業でも最上位のプライム市場に残れるかどうかわからないので、自社株買いなどで対応をしてくる企業が増えてくることも予想されます。

自分が保有している株式の企業が、どの市場になるかをIR資料などで逐一確認するようにしてください。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011