新年度に入り、入学や就職を機に資産運用を始めようと考えている方も多いのではないでしょうか。投資デビューの方は、まずは株式よりもリスクが低い投資信託からはじめてみるのも一つの選択肢です。
投資信託は様々な商品に分散投資ができ、長期運用に適した金融商品です。早期に始めればそれだけ効率的な資産形成が期待できます。今回は投資信託初心者のための始め方をガイドし、銘柄の選び方や資産の増やし方などを解説します。
目次
- 投資信託とは
- 投資信託の始め方
2-1.銀行や郵便局でも買える
2-2.金融機関に口座を開設
2-3.手数料は安いほうが良い - 投資信託の種類
3-1.株式型
3-2.債券型
3-3.バランス型 - 運用スタイル
4-1.インデックス運用
4-2.アクティブ運用 - 良い投資信託の選び方
5-1.手数料や運用成績を参考にする
5-2.シャープレシオを参考にする
5-3.その他のポイント - 積立で資産を増やす
- まとめ
1.投資信託とは
投資信託は、多くの投資家から資金を集めてひとつにまとめ、その資金を運用のプロであるファンドマネージャーが株式や債券などで運用する金融商品です。投資信託は少額(100円から1万円)からの投資が可能なため、投資初心者の方にも投資しやすい金融商品です。
投資信託も株式同様に日々価格が変動します。運用成績が良いと投資信託の価格が上昇し、運用成績が悪ければ元本を下回ってしまうこともあります。運用成績の良い投資信託を見つけ投資をすると、将来的に資産を大きく増やすことが期待できます。
2.投資信託の始め方
どのように投資信託での資産運用を始めれば良いのか、手順を解説します。
2-1.銀行や郵便局でも買える
投資信託は、証券会社のほか、普段から利用している銀行や郵便局などで購入することができます。投資信託は、銘柄数が約6,000と多く、金融機関により取扱銘柄が異なります。銘柄数が多い会社ほど投資家の好みやニーズにあった銘柄を選択しやすくなるため、取扱銘柄の多い金融機関を選びましょう。
なかでも銘柄数の多い証券会社では、投資信託専用の分析ツールを提供していることが多く、そうしたツールは銘柄を絞りこむのに役立ちます。SBI証券や楽天証券、マネックス証券などのネット証券は取扱銘柄数が多く、分析ツールが充実しているので使いやすい金融機関といえます。
2-2.金融機関に口座を開設
投資信託を購入するにあたり、金融機関に口座を開設する必要があります。証券会社にはネット型と店舗型の2タイプがあります。店舗型は担当者からアドバイスを受けることができますが、ネット型の多くはアドバイスを受けることができません。手数料は、店舗型の方がネット型より高く設定されています。
投資が初めてで心細いという方や、アドバイスや投資相談が必要だという方には店舗型が便利です。一方、手数料を安く抑えたい方にはネット証券のほうが有利になりやすいと言えます。口座は無料で開設できるので、店舗型とネット型の2つの口座を開設する方法もあります。
そして証券会社を選んだ後は口座を開設します。証券会社の口座には、特定口座と一般口座があり、特定口座には“源泉徴収あり”と“なし”の2つがあります。特定口座では、年間の取引報告書(税務署に申請する書類)を証券会社が作成するため、自身で確定申告時に書類を作成する必要がありません。加えて“源泉徴収あり”の口座を選択する場合は、証券会社が税務署に申告するため自身で確定申告をする必要がありません。
一方、源泉徴収なしの口座を選択した場合、年間の譲渡所得が20万円を超えた時は、自身で確定申告をする必要があります。
つまり、投資信託や株式にある程度まとまった金額を投資し、年間分配金(配当金)が20万円を超える見込みの場合や、頻繁に投資信託や株式の売買を繰り返し譲渡益が20万円を超えると想定される場合を除き、「特定口座・源泉徴収あり」の口座を選択すると良いでしょう。
2-3.手数料は安い方が良い
投資信託の手数料には、販売手数料、信託報酬、売却時の信託財産留保額があります。最近では販売手数料が無料の投資信託(ノーロード)も多く販売されています。
信託報酬は、投資信託を保有している間、自動的に引き落とされる手数料です。手数料率は銘柄により異なりますが、年率0.5%から2%程度(+消費税)が一般的です。投資信託の純資産総額(投資信託が保有している債券や株の合計)に一定の割合(%)を掛けた金額が毎日自動的に引かれています。
手数料が引かれているにもかかわらず、投資家は手数料を支払っているという認識が薄くなりやすいため、できるだけ手数料率の低い銘柄を選択しましょう。また売却時には、信託財産留保額が手数料として徴収される場合もあります。
3.投資信託の種類
投資信託を選ぶ際は、株式型、債券型、バランス型(複数の金融資産に分散投資)の3つの型から選びます。目的が老後の生活費など長期にわたり投資する必要がある場合は、株式型やバランス型を、住宅資金や子供の教育費などの場合には、元本割れリスクが低い債券型やバランス型を選ぶと良いでしょう。
3-1.株式型
株式型は株式に投資する投資信託です。投資先は国内や先進国、新興国に分類され、さらに大型株や小型株などに細分化されています。外国株投資では、為替の変動リスクも考慮する必要があります。リスクは外国株ほど高く、なかでも新興国のリスクは先進国よりも高いといえます。そのため、初心者の方は国内や先進国に投資している投資信託を選ぶと良いでしょう。
3-2.債券型
債券型も株式と同様、国内債券と外国債券に分類されます。外国債券は為替リスクを考慮する必要があります。債券は、高いリターンは期待できませんが、元本割れリスクが低いことが特徴です。また、債券はインフレに弱いため、長期投資には向いていません。住宅資金や子供の教育費などの運用には向いています。
3-3.バランス型
バランス型は、株式、債券、不動産、コモディティ(商品)など複数の金融商品に一定の割合で分散投資されているファンドを指します。リスクを抑えつつも価格の上昇が期待できる投資信託です。バランス型は、運用対象商品が増えるほど一般にリスクが低くなります。
投資信託ではありませんが、年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ではバランス型で運用しています。同法人の基本方針は株式50%(国内:25%、外国:25%)、債券50%(国内:25%、外国:25%)です。バランス型に投資する場合の基準として覚えておくと良いでしょう。
4.投資信託の運用スタイル
運用スタイルには、株式や債券の指数の動きと連動するように設計されたインデックス運用と、インデックスを上回る高い収益を目指したアクティブ運用の2種類があります。
4-1.インデックス運用
インデックス運用とは、基準となる指数(インデックス)を決め、指数と同様の収益を目指す運用スタイルです。株式指数の代表として、日経平均やTOPIX、海外ではS&P500指数やMSCIワールド指数などが挙げられます。インデックス運用の特徴として信託報酬がアクティブ運用より低い点が挙げられます。
4-2.アクティブ運用
アクティブ運用とは、より高い収益を目指し、ファンドマネージャーやアナリストが銘柄を精査し投資するものです。精査するための人件費が必要なため、信託報酬がインデックス運用と比較し高くなります。
運用スタイルを選ぶ際には、手数料率だけではなく運用成績を含め相対的に判断する必要があります。
5.良い投資信託の選び方
投資信託は約6,000本もあるため、個々の銘柄を調べ、その中から良い投資信託を選ぶのは困難です。そのため、投資対象を絞るために金融機関やモーニングスター(投資信託の格付け評価機関)の検索機能を使うと良いでしょう。
5-1.手数料や運用成績を参考にする
良い投資信託とは、手数料が安く運用成績が良い銘柄です。運用成績が良い銘柄の中から、ノーロード(販売手数料0円)で、信託報酬が安く、信託財産留保額が0%の銘柄の中から選ぶようにするのがスマートです。
SBI証券の検索機能では、騰落率(トータルリターン)が6ヶ月、1年、3年の3期間にわたり表示されます。その中から騰落率の差が小さな銘柄を選ぶようにしましょう。継続的に高い収益が期待できるためです。
5-2.シャープレシオを参考にする
シャープレシオとは、収益をあげるために、どれくらいのリスクを取ったかという指数です。計算には、分子にファンドの平均リターンから安全利子率(国債の金利)を差し引いた値を、分母にはファンドの標準偏差(ブレ幅)を用います。数字が大きいほどリスクに対する収益の割合が大きく良いファンドです。
5-3.その他のポイント
償還までの年数がより長く(10年以上)、純資産額が大きな銘柄(最低50億円以上)を選ぶようにするのもポイントです。あまりに純資産額が減少してしまうと、繰上償還のリスクが高まるためです。
また、将来的により高い利益を得るために、投資信託の分配金を受け取らずに再投資するのもポイントです。再投資により複利効果を狙うことができるためです。
6.積立で資産を増やす
投資信託で資産を増やすには、定期的に積み立て購入する方法が良いでしょう。定期的に少額で積立することで、毎月の負担が減りリスクも回避できます。投資信託を月100円から購入できるネット証券もあります。20歳以上の方で定期購入を考えている方は、つみたてNISAやiDeCo制度を活用すると良いでしょう。
つみたてNISAとは長期・積立・分散投資を支援するための国の制度です。積立期間は最長20年で、非課税枠の上限が年間40万円(月額33,333円)のため、最大投資金額は800万円となります。分配金や譲渡益は非課税です。
iDeCoは、国が推進している個人年金制度で、日本在住で20歳以上60歳未満(2022年5月以降は65歳未満)の方が加入できます。積立金額は、下限が6万円(月額5,000円)で決められていますが、加入条件があり職業ごとに掛金に上限が設定されています。最低投資金額は月5,000円で、投資金額は所得から控除されるため、所得税や住民税が減税されます。
つみたてNISAは資金をいつでも換金することができますが、iDeCoは60歳以上にならないと換金ができません。そのため、使い分けが必要になります。自分にあった方法で積立を始めましょう。余裕があれば両制度を活用することで将来大きな資産をつくることも狙えます。
まとめ
コロナ禍もあり、若い世代で資産運用を始める方が増えています。2021年4月現在、日経平均が一時3万円台を回復するなど、株式市場に資金が流れています。投資の重要性は分かっていても腰が重く、行動に移せない方も多いのではないでしょうか。このガイドも投資を始める際の参考として頂き、検討を進めてみてください。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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