長期投資で株や投資信託の買い時・売り時を判断するためのポイント

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株は安く買い、高く売るのが鉄則です。しかし、多くの個人投資家が株を高く買い安く売却してしまい、多くの個人投資家が損をしています。原因のひとつに、売買の投資判断にチャートを用いていることが挙げられます。チャートを用いる判断は、主に短期投資に使われますが、この方法のみで勝ち続けることは難しいと言えます。

短期売買のように瞬時に利益をあげることはできませんが、高い確率で利益をあげることができる投資方法は長期投資です。成長企業の株式を長期的に保有することで、株価の成長が期待できるためです。第2、第3のアップルに投資することができれば、将来的に資産を数十倍、数百倍に増やすことも不可能ではありません。

今回は長期投資に着眼点を置き、株やファンド(投資信託・ETF等)の買い時・売り時を状況別にポイントを解説します。

目次

  1. 投機と投資の違い
    1-1.投機とは
    1-2.投資とは
  2. チャート分析のメリット・デメリット
    2-1.メリット
    2-2.デメリット
  3. 株の買い時・売り時の判断
    3-1.割安な水準で買う
    3-2.大きな変化があった時に関連銘柄を買う
    3-3.売る基準を決める
    3-4.ファンダメンタルズが崩れたら売る
    3-5.割高になったら売る
  4. ファンドの買い時・売り時の判断
  5. まとめ

1.投機と投資の違い

短期・長期投資や買い時・売り時の判断を考える前に、投機と投資の違いについて解説しておきます。

1-1.投機とは

投機とは、株価の値動きを収益の機会ととらえる取引で、主にチャート・ポイント(売り買いのタイミング)で売買を行います。勝ち組と負け組の合計が0円となるゼロサム・ゲームです。市場参加者の代表はヘッジファンドやデイトレーダーです。

1-2.投資とは

投資の目的は、長期的な視点で企業の成長性に資金を投じ、将来的に大きな資産を築くことです。「投資家」は企業分析をして銘柄を選定し、株価が割安になった時に購入することで下値不安を取りのぞき、割高な水準に達したら売却します。

2.チャート分析のメリット・デメリット

チャートは昔からトレーディングツールとして使われています。日本では江戸時代に本間宗久爺が酒田戦法を考案し、米相場で莫大な資産を築き上げたことが有名です。

2-1.メリット

チャートのメリットは分かりやすいことです。チャートには様々な分類・種類がありますがそれぞれ計算方式が決まっているため、誰でも株価の過去データとエクセルがあれば簡単にチャート・ポイントを求めたり、相場の強弱を算出したりできます。

有名な買いサインとして、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けるゴールデンクロスが挙げられます。企業のファンダメンタルズではなく、過去の株価推移が重要な要素です。

2-2.デメリット

多くのチャートは簡単な算出方法でチャート・ポイントを分析できるため、先読みされやすくヘッジファンドなどに利用されやすいことがデメリットです。また、チャートの俗語には“だまし”というものがあります。“だまし”とは、チャートの売買サインと反対の値動きをすることをいいます。

3.株の買い時・売り時の判断

株価の割高・割安を判断する際には、株の理論株価を独自で算出し、市場の価格と比較することが必要となります。理論株価を算出するのは専門知識が必要なため、その代わりに予想PER(株価収益率:株価を予想利益で割った値)を用いて株価水準を判断することもできます。また、企業のファンダメンタルズの変化も株の買い時・売り時を判断する材料となります。

3-1.割安な水準で買う

投資対象銘柄が日本株の場合は、TOPIXや日経平均株価などの指数のほか、同業他社の予想PERと比較します。投資対象の予想PERの方が低い場合、相対的に割安な水準と言えます。

3-2.大きな変化があった時に関連銘柄を買う

大きな変化があった時に関連銘柄を購入することで、大きな利益が期待できます。最近の大きな変化としては、米国が一度離脱したパリ協定に復帰したことで、世界中が脱炭素社会に向かっていることが挙げられます。社会インフラなどの関連銘柄に投資するチャンスと言えます。

3-3.売る基準を決める

株を売るタイミングは非常に難しいと言えます。相場の世界に「たい焼きの頭と尻尾はくれてやれ」という格言があります。最安値で買い、最高値で売ることは困難で、あまり欲を出し過ぎないことが大切だという意味です。

売る時の基準を決めておくのも一案です。例えば、売却のタイミングとして、株価が2倍に上昇した時点で保有株の半分を売却すると簿価(コスト)が0円になり、株価の上げ下げに気を揉む必要がなくなります。

3-4.ファンダメンタルズが崩れたら売る

保有銘柄のファンダメンタルズが悪化した場合は売却するのが、売り時判断の鉄則です。

ファンダメンタルズが悪化した例としては、今回のコロナショックがあげられます。コロナショックにより航空会社の収益は大幅に減少し、今後も新型コロナ以前のような状況にもどることが難しいとの判断から、有名投資家のウォーレン・バフェット氏が経営する投資会社バークシャー・ハサウェイでは、米国航空会社5社の全保有株を損失を出してまで売却しました。

3-5.割高になったら売る

割高になったら売却することも投資の鉄則です。

バークシャー・ハサウェイは、2003年に購入したペトロチャイナの株式を2007年10月に全て売却しました。2007年初頭に7香港ドルだった株価は、石油価格の上昇を背景に買われ、13香港ドルまで上昇しました。この株価上昇で9倍程度だったPERが割高水準の15倍に上昇したためです。

4.ファンドの買い時・売り時の判断

ファンド(投資信託など)の買い時、売り時は、ファンドが保有している資産により違います。ファンドには株式型、債券型、バランス型があります。バランス型は複数の資産(株式・債券・不動産・コモディティ等)に分散投資しており、相場変動時にはファンド内で各資産の組み換えが行われているため、一概に売り時、買い時を判断することができません。

株式型や債券型については、インデックス運用かアクティブ運用により異なります。インデックス運用では指数と連動するファンドを運用するため、各ファンドのベンチマーク(指数)のPERを基準とすると良いでしょう。

指数の過去5年程度の平均PERと現時点のPERを比較し、高い場合は割高、低い場合には割安と考えることができます。つまり、PERが平均よりも明らかに高い場合は売り時と判断し、低い場合を買い時と判断することができます。

アクティブ型は指数を意識した運用ではなく、一概に割高・割安の判断はできません。個々のファンドが保有している銘柄のPERを調べることで、ファンド全体の水準を推測することは可能です。ファンドの運用報告書で保有銘柄を確認するようにしましょう。

債券型については、株式と債券が反対の動きする性質があるため、株式市場が混乱し大きく下落する局面では売り時、株式市場の上昇時は買い時と言えます。

まとめ

株式投資をする上で重要なポイントは、株が安い時に投資することです。まず対象銘柄を選定し、購入する水準(PER水準)を決め、株価がその水準まで下落するまで待ちましょう。売却のポイントは、PERの水準が同業他社のPER平均からかい離した場合です。業界や企業のファンダメンタルズの悪化時も売りのポイントとなります。

株価は上下変動を繰り返すため、売り買いの水準を決めてから投資を始めましょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。