「貯蓄から投資へ」として、国では貯蓄よりも投資を勧める流れが進んでいます。長期的な資産形成をうながすことで、経済を活性化させる目的があります。投資が長期的な資産形成に役立つのは、株式や投資信託のような商品に投資することで、企業や経済の成長にあわせて資産を運用できるからです。
この記事では「投資を始めたいけど、どうすればいいか分からない」といった人に向けて、貯蓄がなくても始められる資産形成の方法や手順について解説します。
目次
- 投資は無理のない金額で始めよう
1-1.貯蓄だけでは物価上昇に備えられない
1-2.貯蓄するためには先取り貯蓄がおすすめ
1-3.先取り貯蓄とあわせて「つみたてNISA」を利用する - 投資を始めるなら「長期」「積立」「分散」を意識する
- まとめ
1.投資は無理のない金額で始めよう
「貯蓄から投資へ」といっても、貯蓄をせずに資金の全額で投資することはおすすめしません。病気やケガで働けなくなったときや、将来に控えるイベントの費用など、貯蓄が必要な場面はいくつもあるからです。
まずは給与の一部を貯蓄しながら、少額で投資を始めることをおすすめします。ここからは投資が必要な理由と、貯蓄が苦手な人でも実践しやすい「先取り貯蓄」の方法について解説します。
1-1.貯蓄だけでは物価上昇に備えられない
日本では、投資に対して「難しい」「なんとなく怖い」といったマイナスのイメージを持っている人が多く、投資を始められない人が多いようです。しかし、資産を現金・預金で保有していると、将来の物価上昇(インフレ)に備えることができません。
「今の物価は、過去の物価と比べてどのぐらいの水準なのか?」を客観的に表す指標として、消費者物価指数が参考になります。消費者物価指数は、国内において消費者が購入する際のモノまたはサービス両方の価格を対象としているものです。
この指数を用いて、昭和46年(50年前)の1万円を令和3年の価値に換算すると「99.7(令和3年)÷32.9(昭和46年)=約3」になり、50年間で物価が3倍になっていることが分かります。
直近30年間で大きな物価上昇はありませんでしたが、最近では円安やウクライナ情勢の影響を受けて物価が高騰しています。貯蓄だけでは物価上昇によるインフレリスクに備えることができないため、投資で自分の資産を運用して、将来の物価上昇に備える必要があるのです。
1-2.貯蓄するためには先取り貯蓄がおすすめ
貯蓄が苦手な人は、お金が「残ったら貯蓄をしよう」と考えます。しかし、それでは貯蓄の優先順位が下がってしまい、手元にあるお金をすべて使ってしまいかねません。
そこでおすすめしたいのが「先取り貯蓄」です。先取り貯蓄とは、お金が残ったら貯蓄をするのではなく、貯蓄するお金を先に確保して、残ったお金でやりくりするという方法です。
すぐにお金が引き出せると使ってしまうので、先取り貯蓄専用の銀行口座を作成する方法や、銀行の積立定期預金などを利用して、給料日になると口座から設定した金額が引き落とされる仕組みを作るようにしてください。
1-3.先取り貯蓄とあわせて「つみたてNISA」を利用する
投資を始めるための貯蓄がないという人は、つみたてNISAを利用すると良いでしょう。つみたてNISAは、年間40万円(1か月あたり約3.3万円が上限)までの投資によって生じた利益が、20年間非課税になるという制度です。投資する商品は、少額(毎月100円~)から始められる投資信託であるため、投資の経験がない人でも気軽に始めることができます。
また、運用する商品は、投資のプロが低コストで運用してくれる投資信託のみであるため、投資を始めたことがない人にもハードルが低いものとなっています。
2.投資を始めるなら「長期」「積立」「分散」を意識する
初めての投資につみたてNISAが良い理由は、つみたてNISAが長期的な資産形成に最適だからです。
金融庁は、つみたてNISAを導入するとき、投資信託に関する会議を行っています。下の図は、その際に使用された「国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布」です。
出典:金融庁「長期・積立・分散投資に資する投資信託に関するワーキング・グループ(第1回)」
そのなかで発表された説明資料によると、「長期」「積立」「分散」を前提とした投資を行うことにより、5年間保有した場合は−8〜14%と投資収益率は安定しませんでしたが、20年間保有した場合は2〜8%の安定した投資収益率(年率)になったのです。
もちろん、投資では必ず儲かることはありません。しかし、高い収益を期待したリスクの高い投資をするのではなく、市場の成長にあわせた低リスクの投資を長期間行うほうが、資産を堅実に運用できるのです。
まとめ
今回は、充分に貯蓄がない人でも始められる「つみたてNISA」と、貯蓄が苦手な人でも貯蓄ができるようになる「先取り貯蓄」の方法について解説しました。
投資は「難しい」「なんとなく怖い」と感じていた人も、まずはつみたてNISAなどハードルの低い手段で投資を始めることを考えてみると良いでしょう。
山下耕太郎
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