不動産投資型のクラウドファンディングは、これまでクラウドファンディング投資で主流だったソーシャルレンディングよりも、投資家に開示される情報量が多く、自分でリスクとメリットを比較、検討しながら投資対象を選ぶことができます。
今回は、この不動産投資型クラウドファンディングにフォーカスして、投資の特徴と投資する際の注意点を確認していきましょう。
目次
- 不動産投資型クラウドファンディングの5つのメリット
1-1.1万円から少額投資できる
1-2.優先劣後スキームにより損失から保全される
1-3.投資物件の情報が分かる
1-4.実際に不動産を購入するより手続きが少ない
1-5.複利で運用できる - 不動産投資型クラウドファンディングの2つの注意点
2-1.元本割れのリスクはゼロではない
2-2.融資によるレバレッジ効果は期待できない - まとめ
不動産投資型クラウドファンディングのメリット
まず、不動産投資型クラウドファンディングのメリットを見ていきましょう。ソーシャルレンディングと比べてどのような点が優れているのでしょうか。
1万円から少額投資できる
不動産投資型クラウドファンディングを提供しているサイトは、
- Renosy
- Fantas Funding
- CREAL
- TATERU Funding(休止中)
などがあります。上記の会社の投資条件を見ていると、いずれも最低投資金額は1万円です。一般的な不動産投資では、融資を受けて何百万、何千万円もの資金を用意しなければいけません。しかし、不動産投資型クラウドファンディングであれば、1万円から投資が可能です。
それほど貯金がない若年層の方、なかなか融資が受けられない自営業の方でも、手軽に不動産投資を始められます。不動産投資型クラウドファンディングはより少額で手軽に投資できる手法と言えます。
優先劣後スキームにより損失から保全される
不動産投資型クラウドファンディングサイトの中には、優先劣後スキームを用意している会社があります。優先劣後スキームとは、投資額に対する損失が発生した場合、優先出資者である投資家ではなく、劣後出資者である運営会社が先に損失を負担する仕組みです。
例えば、サービスは停止中ですが、『TATERU Funding』では、TATERUが30%の劣後出資を提供していました。プロジェクトに30%までの損失が発生したとしても、投資家は損失を負うことがなかったのです。
また、『Renosy』も30%までRenosyが損失を負担する優先劣後スキームとなっています。
『CREAL』は案件によって異なりますが、たとえば第1号案件では、10%まで優先劣後スキームを採用しています。仮に1億円の不動産クラウドファンディングを組成し、運用終了後に9,000万円まで価値が下がったとしても、投資家に損失は発生しません。価値が下がった10%分は運営元のクリアル株式会社が負うことになります。
投資物件の情報が分かる
ソーシャルレンディングと不動産投資クラウドファンディングの最大の違いは、投資対象物件の情報が明確であるか否かという点です。ソーシャルレンディングの場合、融資先の事業者名、運営の対象となる不動産、担保となる不動産の情報は、貸金業法により明らかにされませんでした。
しかし、不動産投資型クラウドファンディングの場合、以下の部分まで情報が明らかになります。まず、Renosyの例を見てみましょう。
https://www.renosy.com/funding/customers/products/7
上記の案件に関する物件情報は、住所、面積、建物の構造、現在の状態まで、詳細に記載されています。この案件は上記物件を運営、売却することで利益を上げるものです。
築年数や住所などから資産価値を推し量ることもできますので、案件が投資先として妥当なのか否かの判断がつきます。
CREALの例も見てみましょう。
こちらは浅草のホテル運用に関するクラウドファンディング案件です。これまでのホテルの経営状態に加え、投資判断のポイントとして浅草というエリアの特徴を挙げるなど、様々な情報が明らかにされています。
このようにホテルの運営者情報もしっかりと開示されていますので、投資対象の安全性やこれまでの財務状況、経営実績など、判断に役立つ情報を把握することができます。
こういった情報の開示姿勢はソーシャルレンディングにはないものであり、現在、最もソーシャルレンディングに求められている改善点の一つです。
ソーシャルレンディング投資でのリスクを避けたい方、きちんと情報を把握して投資したい方は、不動産投資型クラウドファンディングに投資する方が堅実だと言えるでしょう。
実際に不動産を購入するより手続きが少ない
現在、不動産投資型クラウドファンディング案件の利回りは4%から8%程度です。実際に自分で不動産投資を行えば、地方物件や中古1棟物件など、物件によっては10%以上の高い利回りを獲得できます。そのため、利回りがやや物足りないと感じる方も、中にはいるかもしれません。
しかし、不動産投資と不動産投資型クラウドファンディングでは、始めるまでに用意しなければいけないものや手続きに大きな違いがあります。
不動産投資を行うには、まず不動産物件を購入する必要があります。そのため、数千万円単位の資金を調達しなければいけませんし、購入時に数百万円の初期費用(取得費用)もかかります。金融機関に自分自身の情報や収入を証明する書類や事業計画などを提出し、融資の審査を受ける必要もあります。
同時に、自分の目で投資対象として適当な物件を探さなければいけません。積極的に物件を買い進めたいと思っていても、融資を受けて物件を購入するまでには最低でも3ヶ月程度を要するでしょう。
また、物件を探して購入した後も毎月の管理費用や運営の手間がかかりますし、各種保険に加入する、修繕やリフォームを行うなど、複数の手続きが待っています。
様々な書類を用意したり、保険に入ったり、実地での内覧も行わなければいけなかったりと、準備には一苦労します。もちろん、購入後は自分で運営や管理を適切に行わなければいけません。売却時には、仲介手数料や抹消手続きなどもありますので、最低でも数十万円の費用が必要です。
それに対し、不動産投資型クラウドファンディングは、ファンド申込みまでの手続きの際に費用は発生せず、ほぼ不労所得に近い形で収入が得られます。
多少手間がかかるものと言えば、会員登録だけです。まず、インターネット上で会員登録を行い、本人確認書類を提出します。そして、送付されたハガキに記載されているパスワードをサイトに入力すれば、あとは資金を用意するだけで投資を開始できます。
また、自分で物件を運営する必要はありませんし、不動産のプロが収益性の高い物件を選定しています。用意するべき自己資金もわずかな額で済みますから、手間がかからない分、不動産投資型クラウドファンディングには大きなメリットがあります。
複利で運用できる
不動産投資型クラウドファンディングは簡単に複利運用が可能なため、効率的に資産を増やすことができます。
『Renosy』の場合、分配金は案件の運用終了後に、元本と併せて一括返済されます。よって、再び新たな案件に全額を再投資することで、複利での運用を行うことができます。
一方『CREAL』では、分配金が投資家の口座に毎月振り込まれます。そのため、得られた分配金を毎月簡単に再投資に回せるのです。これによって、不動産投資型クラウドファンディングの利益をより効率的に増やすことが可能です。
不動産投資型クラウドファンディングの注意点
上に述べた通り、不動産投資型クラウドファンディングには、数々のメリットがあります。しかし、投資ですから元本が保証されているわけではありません。投資に際し、どのような点に注意を払えば良いのでしょうか。
元本割れのリスクはゼロではない
まず、危険性を熟知しておかなければいけないのは、元本割れのリスクがゼロではない点です。
優先劣後スキームを採用している会社であれば、ある程度の損失まではカバーされます。それでも、不動産相場が一斉に暴落した場合、不動産の価値が半分程度になることも想定しておかなければいけません。
また、投資家への急な返済のため、慌てて不動産を売却しようとすると、どうしても買い叩かれることがあります。
結果として、想定していた不動産評価額をはるかに下回る価格で売らざるを得ない時もあり、元本割れを起こす可能性が出てくるのです。その他にも、ソーシャルレンディングでは、担保価値を水増しして投資家に伝えるなどの悪質な事例も過去に存在します。
不動産投資型クラウドファンディングではありませんが、大規模な貸し倒れが発生したソーシャルレンディングサイトのラッキーバンクでは、投資家に提示していた評価額の30%でしか担保不動産を処分できない見込みでした。
不動産投資型クラウドファンディングの場合は、幸いにも物件の住所、建物名などが明らかにされています。実際に現地で下見も可能ですので、その場で物件の見定めができるのはリスク回避への強みになります。
融資によるレバレッジ効果は期待できない
不動産投資と不動産投資型クラウドファンディングの違いの中で、不動産投資型クラウドファンディングのデメリットを挙げるとしたら、融資によるレバレッジ効果が期待できないという点です。
不動産投資の場合、現金のみで物件を購入するのではなく、投資用ローンを利用して物件を購入するのが一般的です。つまり、他人の資金を使って物件を購入し、利益を獲得することが可能なため、現金だけで投資するよりも効率的にリターンを上げることが可能です。
不動産投資の場合、不動産価値の変動が他の投資対象に比べゆるやかで、かつ担保として設定できることから、融資側が抱え込むリスクが少ないのです。そのため、多くの金融機関が不動産投資用のローンを用意しています。
しかし、不動産投資型クラウドファンディングに融資する金融機関は、現在のところありません。
用途を選ばないカードローンなどで融資を受け、投資に回すことはできますが、そういったフリーローンは非常に金利が高く、支払金利が不動産投資型クラウドファンディングで得られる利回りを上回ってしまうケースがほとんどです。
そのため、資産を急激に増やそうと欲張る方、多額の不労所得を短期間で得ようと考えている方には、不動産投資型クラウドファンディングは向いていません。今ある自己資金を使って、コツコツと毎月の金利収入を増やそうと考えている方や、資産運用の際の分散投資先として検討をしている方向けの投資なのです。
まとめ
不動産投資型クラウドファンディングの最も大きなメリットは、投資家側が投資案件の対象である運営会社の実態や物件面などの情報を詳細に確認できる点です。
残念ながら、ソーシャルレンディングでは、必ずしも全ての会社が投資家保護の方針に沿って、事業を運営していたとは言えない状態でした。
しかし、不動産投資型クラウドファンディングを見る限り、投資家に可能な限りの情報を開示し、投資家が自己判断の上で投資できるよう、公平性を保とうとする動きが見られます。
リスクの度合いを判断しながら、自己責任で投資家としての経験を積みたい方にとっては、不動産投資型クラウドファンディングは非常に向いている投資手法と言えます。しかも、多くの会社で優先劣後スキームが採用されていますので、リスクも限定されています。
より安全な投資手法を探している方は、ぜひ、不動産投資型クラウドファンディングを視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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