ETF(上場投資信託)は市場で取引するインデックスファンドで、上場株式と投資信託の性質を併せ持っています。株式や一般の投資信託に比べてNISAで購入する人は少ないのですが、使い勝手のよい運用商品です。
この記事では、NISAでETFを買うメリットやデメリットを株式や投資信託と比較した観点で解説します。なお、一部のETFはつみたてNISAでも購入できますが、ここでは一般NISAでの買付を前提とします。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年5月時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
※信託報酬など課税対象となる数値は全て税込表記です。
目次
- 一般NISAとETFについて
1-1.一般NISAではどんな商品が買われている?
1-2.ETF(上場投資信託)とは? - 一般NISAでETFを買うメリット
2-1.分散投資ができる
2-2.投資単位が少額
2-3.購入価格がリアルタイムでわかる
2-4.信託報酬が投資信託より安い
2-5.特別分配はない - 一般NISAでETFを買うデメリット
3-1.分配金の再投資を自動的にできない
3-2.海外ETFの分配金には税金がかかる
3-3.取引時に手数料がかかる
3-4.信用取引ができない
3-5.自動積立を扱う証券会社が少ない - ETFの選び方
4-1.自分の運用目的やスタイルに合ったファンドを選ぶ
4-2.信託報酬が安いファンドを選ぶ
4-3.指数との乖離が少ないファンドを選ぶ
4-4.流動性が高いファンドを選ぶ - まとめ
1.一般NISAとETFについて
一般NISAでは上場株式やREITなど、つみたてNISAでは扱っていない運用商品での非課税投資が可能です。つみたてNISAではごく一部のETFしか買えませんが、一般NISAでは多くのETFの選択肢があります。
1-1.一般NISAではどんな商品が買われている?
一般NISAでは投資信託以外に上場している金融商品に投資できます。実際に多く買われているのはどんな商品でしょうか。
一般NISA口座の商品別口座残高の割合(2021年末時点)
上場株式 | 56.8% |
投資信託 | 38.2% |
ETF | 3.6% |
REIT | 1.4% |
出典:日本証券業協会「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」
上記は、一般NISAの商品別口座残高の割合を表にまとめたものです。上場株式と投資信託がほとんどを占め、残りはごく少数であることがわかります。
ETFを買う人は多くありませんが、ETFが株式や投資信託に比べて劣っているわけではありません。日本で初めて登場したのが1995年からと、まだなじみが薄いために利用者が少ないと考えられます。
1-2.ETF(上場投資信託)とは?
ETF(上場投資信託)は、日経平均やS&P500などの指数に連動するインデックスファンドの一種です。一般のインデックスファンドとの違いは、株式と同様に取引所で売買する点です。
ETFと株式・投資信託の比較
項目 | ETF | 投資信託 | 株式 |
---|---|---|---|
上場・非上場 | 上場 | 非上場 | 上場 |
取得価格 | 市場価格 | 基準価額 | 市場価格 |
購入時手数料 | 証券会社ごとの売買手数料 | 銘柄ごと、金融機関変更ごとの販売手数料 | 証券会社ごとの売買手数料 |
信託報酬 | 一般の投資信託に比べて低め | ETFに比べて高め | なし |
売却時の費用 | 証券会社ごとの売買手数料 | 信託財産留保額がかかる場合がある | 証券会社ごとの売買手数料 |
分配金・配当金 | 分配金 元本払戻金(特別分配金)なし |
分配金 元本払戻金(特別分配金)あり |
配当金 |
2.一般NISAでETFを買うメリット
一般NISAでETFの非課税投資をすると、以下のようなメリットがあります。
2-1.分散投資ができる
一般NISAでETFを購入する大きなメリットの1つが、分散投資によるリスクヘッジです。株式の個別銘柄への投資では、大きな値下がりや企業の倒産のリスクがあります。ETFなら1つの指標に数十あるいは数百以上の企業が関わるため、1社が大きく値下がりしても全体への影響は限定的です。
また、NISAでは年を通して損失が出ると、非課税メリットが得られません。ETFでの分散投資は個別銘柄への投資に比べて値動きの振れ幅が抑えられ、長期的に損失が膨らみにくい運用が期待できます。
2-2.投資単位が少額
ETFの投資単位は銘柄ごとに異なり、1口から購入できるものや10口・100口などの単位もあります。1銘柄あたりの最低投資額の目安は、2万円から4万円程度です。
一方、株式投資の投資単位である1単元は、100株です。1株1,000円の銘柄を100株買い付けるには、代金だけで10万円必要です。
ETFは少額買付ができるため、一般NISAの非課税投資枠内でも複数銘柄に投資しやすい商品です。また、年末に非課税投資枠を使い切りたい場合などにも有効活用できます。
2-3.購入価格がリアルタイムでわかる
ETFは注文時に指値も成行も指定可能で、約定時に購入金額が決まります。一方、投資信託で公表されている基準価額は前営業日のものであり、注文時に正式な購入金額はわかりません。申込時に金額を確定したい場合、金額指定による買付が可能です。しかし、購入口数は基準価額算出後に決まります。
ETFは市場取引に慣れている人にとっては、取引金額が明確で好きなタイミングで買いやすい商品です。
2-4.信託報酬が投資信託より安い
一般的にETFは投資信託に比べて、保有時にかかる信託報酬が低めです。たとえば、「MAXIS 日経225上場投信」というETFの2022年05月30日時点の信託報酬は0.19%です。同じ投信会社の非上場の投資信託「eMAXIS 日経225インデックス」の信託報酬は0.44%です。
同じ指数に連動するインデックスファンドでも、ETFのほうが信託報酬は低い傾向にあるのです。信託報酬は保有期間中ずっとかかるため、長期保有するなら投資信託よりETFのほうがコスト面では有利になる可能性が高いのです。
2-5.特別分配はない
ETFと投資信託には分配金がありますが、ETFには元本払戻金(特別分配金)がありません。元本払戻金は文字どおり元本の一部を払い戻すことで、投資信託では運用益がなくても分配金の払い出しが行われるケースもあります。その場合は元本払戻金(特別分配金)となり、課税対象にはなりません。
ETFには元本払戻金がないため分配金は全て運用益であり、NISAでの非課税メリットが享受できます。
3.一般NISAでETFを買うデメリット
ETFにはNISAで運用するメリットがありますが、デメリットもあります。
3-1.分配金の再投資を自動的にできない
一般の投資信託では分配金の再投資の設定ができますが、ETFではできません。そのため、分配金の再投資は自分で行わなければならず、手間がかかります。また、再投資によって、新たに非課税投資枠を使うことにもなります。
3-2.海外ETFの分配金には税金がかかる
NISAで購入したETFの分配金は非課税ですが、米国など海外市場のETFでは分配金に現地国(米国なら10%)の税金がかかります。通常であれば二重課税回避の観点から、確定申告で外国税額控除が適用されて、現地課税分が還付されます。しかし、NISAでは二重課税にはあたらないため、外国税額控除の対象にはなりません。
3-3.取引時に手数料がかかる
投資信託の多くは買付時の手数料が無料ですが(ノーロード)、ETFは買付・売却ともに手数料がかかります。そのため頻繁に売買を繰り返すと取引手数料がかさみ、信託報酬が低いというメリットが薄れかねない点がETFのリスクの1つです。
ETFの手数料は証券会社ごとに異なり、一般的に店頭証券会社よりネット証券の手数料が安い傾向にあります。中には一定額まで手数料が無料になるケースもあるため、ETFを購入する際には各社の取引手数料を確認すると良いでしょう。
3-4.信用取引ができない
ETFは信用取引が可能ですが、NISAでは信用取引は対象外です。NISA口座でETFの空売りや、レバレッジを効かせた取引はできません。
3-5.自動積立を扱う証券会社が少ない
一般NISAは通常買付も積立も可能です。投資信託は通常買付も積立もほとんどの金融機関でできますが、ETFの積立ができるのは一部の証券会社だけです。
積立は一度設定してしまえば資産の買付が自動的に行われます。そのため、ETFを買うときに悩むことの多い買付のタイミングも考える必要がありません。NISAでETFを買いたいけれど、買付は自動でしたい人などは、自動積立を取り扱う証券会社に口座開設をするとよいでしょう。
4.ETFの選び方
最後に、数あるETFの中から自分に合ったものを選ぶ方法を解説します。
4-1.自分の運用目的やスタイルに合ったファンドを選ぶ
ETFを選ぶ際には各ファンドの内容を確認し、投資目的に合った銘柄を選びましょう。ETFは少額の投資が可能なので、複数のETFを組み合わせて自分なりのポートフォリオを作ったり、自分のポートフォリオに足りない資産を補ったりできます。
NISA以外の自分の資産全体を見直し、ETFを有効活用するようにしましょう。
4-2.信託報酬が安いファンドを選ぶ
ETFは同じ指標に連動するファンドが複数あります。どのファンドを選ぶか迷ったら、同じ指標を扱うものの中では信託報酬の安いものと決めておくとよいでしょう。
4-3.指数との乖離が少ないファンドを選ぶ
ETFの運用は、ETFの指標と基準価額の乖離(トラッキングエラー)が少ないほど望ましいとされます。買付にあたっては1日1回運用会社が発表する基準価額と、ファンドが連動を目指す指標の数字を比較しましょう。
4-4.流動性が高いファンドを選ぶ
ETFを選ぶときは、流動性にも注意が必要です。流動性とは「取引の成立しやすさ」を意味します。ETFは市場で売買するため、取引量の少ないファンドでは取引が成立しない可能性が高くなります。取引量を確認するには、売買高や売買代金、板情報がチェックポイントです。
まとめ
NISAでETFを買う人はあまりいませんが、ETFは分散投資を低コストでできる運用商品です。NISAで株式や投資信託と組み合わせての利用もできます。比較的少額からの投資ができるので、興味のある指標のETFを購入することも検討に入れてみてはいかがでしょうか。
松田 聡子
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