NISA(少額投資非課税制度)の口座開設をしてから、金融機関を変更したいと考える人も多いのではないでしょうか。
NISAは金融機関によって、取り扱う商品や手数料が異なります。自分が口座開設した金融機関が希望に合わない場合は、変更可能です。この記事では、NISA金融機関変更のメリット・デメリットや具体的な方法について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年5月24日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- NISAの金融機関は変更できる
1-1.NISAの金融機関は年ごとに変更可能
1-2.金融機関の変更を考えるケース - NISAの金融機関を変更するメリット
2-1.自分に合った商品で運用できるようになる
2-2.少額からの投資が可能になる
2-3.手数料が安くなる
2-4.取引の利便性が向上する - NISAの金融機関を変更する注意点
3-1.手続きに手間と時間がかかる
3-2.ロールオーバーできなくなる
3-3.保有商品の移管ができない - NISAの金融機関を変更する方法
4-1.現在の金融機関に金融機関変更の書類を申請
4-2.現在の金融機関に書類を提出
4-3.変更したい金融機関に申込みをする
4-4.変更したい金融機関に必要書類を提出 - NISA口座の種類を変更する方法
5-1.金融機関を変更せずに口座の種類だけ変更する場合
5-2.金融機関と口座の種類を変更する場合 - まとめ
1.NISAの金融機関は変更できる
NISA(少額投資非課税制度)口座は1人1口座しか持てないため、金融機関選びは慎重にする必要があります。ただし、希望に合わない場合は変更可能です。
1-1.NISAの金融機関は年ごとに変更可能
NISA口座の金融機関は年ごとに変更できますが、変更の手続きができる時期が決まっています。変更を希望する場合、変更したい年の前年の10月1日から変更したい年の9月30日までの手続きが必要です。
たとえば、2023年分のNISA口座の金融機関を変更したいなら、2022年10月1日から2023年9月30日までに手続きをしなければなりません。
ただし、変更を希望する年の1月1日以降に商品の買付けを行った場合、その年の変更はできないことに注意が必要です。つまり、9月30日までならその年分の金融機関の変更はできますが、何か商品を買ってしまうとできなくなるというわけです。
つみたてNISAや一般NISAで積立をしている人が金融機関を変更するなら、前年の10月から12月までの手続きが無難でしょう。また、分配金再投資を選択している人は、買付けた覚えがなくても買付けが行われる可能性があることに注意が必要です。
1-2.金融機関の変更を考えるケース
NISAの金融機関を変更したほうがいいのは、どのようなケースでしょうか。
運用商品の選択肢を広げたい場合
NISAの金融機関を変更すると、今まで買えなかった運用商品を選べる可能性があります。NISAの運用商品のラインナップは、金融機関ごとに異なります。また、上場株式やETFは証券会社でないと購入できません。
自分の運用スタイルに合った商品が口座開設した金融機関になかった場合、変更したほうがよいでしょう。一般的に大手ネット証券は外国株式や株式投資信託の取扱本数が多く、多くの人の運用ニーズを満たせます。
手数料を抑えたい場合
同じ運用商品を今より低い手数料で買えるなら、金融機関変更をしたほうが有利になるでしょう。取引手数料は金融機関ごとに異なります。同じ投資信託の購入時手数料が無料の金融機関もあれば、有料の金融機関もあるのです。
また、株式の売買手数料も証券会社ごとに異なります。一般的に取引手数料もネット証券が低めです。金融機関を変更する際に、自分の取引スタイルならどこが有利かを比較検討してみましょう。
少額から投資したい場合
投資信託などを少額から始めたい人の場合、金融機関を変更したほうがいいケースがあります。銀行や信用金庫では最低取引単位を1万円程度にしている場合があり、気軽には始めにくいこともあります。
少額投資をしたい人は、100円から投資信託が購入できるネット証券などにNISA口座を移管するのもよいでしょう。
2.NISAの金融機関を変更するメリット
一般NISA・つみたてNISAで金融機関を変更するメリットについて解説します。
2-1.自分に合った商品で運用できるようになる
NISA口座を希望の商品を取り扱う金融機関に変更すれば、自分のスタイルで非課税投資ができるようになります。NISAの制度がよく理解できず、勧められるままに取引銀行などで口座開設するのはよくあるケースですが、そもそも銀行では株式を取り扱っていません。
また、海外株式や海外ETFは、証券会社であっても取扱銘柄に大きな違いがあります。NISAの非課税メリットを生かすには、自分が運用したい商品の取り扱いがある金融機関に口座を開設することが大切です。
2-2.少額からの投資が可能になる
少額からの投資をしたい人はNISAの金融機関変更で、無理のない金額で非課税投資が可能になります。
非課税投資を始めようとしてNISA口座を開設したものの、最低投資金額が大きすぎて買付けができないという人もいるでしょう。社会人になったばかりで収入が少ない人や、投資経験がなくて少額から始めたい人は、100円から投資信託が買えるネット証券などに口座変更するとよいでしょう。
2-3.手数料が安くなる
取引手数料の高い金融機関にNISA口座を開いてしまった人は、口座移管のメリットが大きいといえます。金融商品の取引手数料は、金融機関ごとに大きな開きがあります。同じ金融商品を買付けるのであれば、手数料が安いほうが手元に残るお金が多くなります。
また、取引回数が多くなると手数料の影響も大きくなります。自分の買いたい金融商品の手数料が安い金融機関に変更して、非課税投資を続けるとよいでしょう。
2-4.取引の利便性が向上する
金融機関変更によって運用状況の確認がしやすくなったり、取引注文がしやすくなったりするケースもあります。また、自分がメインで貯めているポイントが貯まりやすい金融機関に変更するのもメリットがあります。
サービス面でも自分に合った金融機関を利用することは、長く非課税投資を続ける上で有益です。
3.NISAの金融機関を変更する注意点
NISAの金融機関変更を考える場合に、知っておくべき注意点を解説します。
3-1.手続きに手間と時間がかかる
NISAの金融機関変更には決められた期間内での手続きが必要であり、いつでもできるわけではありません。また、手続き完了までに1カ月程度の時間がかかります。
3-2.ロールオーバーできなくなる
NISAの金融機関変更でのデメリットとして、ロールオーバーできなくなることが挙げられます。ロールオーバーとは一般NISAの5年間の非課税期間終了時に、翌年の非課税投資枠に資産を移管することです。ロールオーバーによって非課税期間を5年延長できるというわけです。
しかし、ロールオーバーは同じ金融機関でしかできません。たとえば、A銀行のNISA口座で投資信託を100万円購入後、B証券にNISA口座を変更したとします。5年経過後にはA銀行の投資信託をB証券でロールオーバーできないため、選択肢は売却かA銀行の課税口座への移管となります。
現在のNISA口座に保有残高のある人が金融機関変更を考える場合、非課税期間終了後のロールオーバーの可能性を考慮したほうがよいでしょう。
3-3.保有商品の移管ができない
NISAの金融機関を変更すると、保有する運用商品を新しい口座に移管できません。元の口座で非課税期間終了までの運用は可能ですが、変更後の金融機関と2つの口座を持つことになります。
金融機関変更に伴い、現在保有中の運用商品をどうするか(利益が出ていれば売却するなど)を検討すべきでしょう。
4.NISAの金融機関を変更する方法
ここからは、NISAの金融機関を変更する具体的な手続きを解説します。手続きの流れは以下のとおりです。
- 現在の金融機関に金融機関変更の書類を申請
- 現在の金融機関に書類を提出
- 変更したい金融機関に口座開設
- 変更したい金融機関に必要書類を提出
4-1.現在の金融機関に金融機関変更の書類を申請
インターネットや電話で現在のNISA口座がある金融機関に金融機関の変更を連絡し、「金融商品取引業者等変更届出書」を送付してもらいます。
4-2.現在の金融機関に書類を提出
届いた「金融商品取引業者等変更届出書」に必要な項目を記入し、現在の金融機関に提出します。その後、現在の金融機関から「勘定廃止通知書」が送られてきます。
4-3.変更したい金融機関に申込みをする
変更したい金融機関に証券口座がない場合、口座開設を申込みます。口座開設後にNISA口座開設を申請すると、「非課税口座開設届出書」が届きます。
4-4.変更したい金融機関に必要書類を提出
変更したい金融機関に「勘定廃止通知書」と「非課税口座開設届出書」を提出します。変更先の金融機関が、税務署へ申請手続きを行います。
5.NISA口座の種類を変更する方法
NISAでは、「一般NISAからつみたてNISA」もしくは「つみたてNISAから一般NISA」のように口座の種類の変更もできます。口座の種類の変更も金融機関の変更と同様に、年単位となっています。年が明けてすでに商品を買付けた場合、その年の口座種類変更はできません。
ここでは口座の種類変更だけの場合と、金融機関の変更を伴うケースの手続きを解説します。
5-1.金融機関を変更せずに口座の種類だけ変更する場合
同じ金融機関でNISAの種類だけを変更する手続きは、比較的簡単です。NISAの口座がある金融機関に口座の種類変更を希望する連絡をし、必要書類を送ってもらいます。書類に必要な項目を記入して返送すれば、約2週間程度で変更が完了します。
最近では、インターネットで手続きが完結するネット証券などもあり、数分で手続きが完了するので便利です。
5-2.金融機関と口座の種類を変更する場合
金融機関を変更しNISA口座の種類も変更する場合の手続きの流れは、上述した金融機関変更と同様です。変更したい金融機関に提出する「非課税口座開設届出書」に、希望する口座の種類を記入します。
変更したい金融機関に「勘定廃止通知書」と「非課税口座開設届出書」を提出すると、金融機関変更と同時にNISAの種類も変更されます。
まとめ
NISAの金融機関変更は可能ですが、いつでもできるわけではありません。また、一般NISAのロールオーバーができなくなるため、保有商品の非課税期間満了後について考えておく必要があります。変更手続きのタイミングを逃さないよう、計画を立てておくとよいでしょう。
松田 聡子
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