先物取引は元手が少額でも大きな取引を行えるほか、空売りも可能なので相場下落時でも利益を生み出すことが可能なデリバティブ取引です。資金効率を高めたい方や、短期間で大きな利益を狙いたい方に適した金融商品となっている一方、元本以上の損失を招くリスクもあるため、具体的な始め方やリスクを知った上で、銘柄選びや証券会社選びを行うことが大切です。
この記事では、先物取引の特徴や始める手順、銘柄・証券会社の選び方と注意点について詳しく解説するので、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は、2022年6月11日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- 先物取引とは
- 先物取引の始め方
2-1.先物・オプション取引口座を開設する
2-2.証拠金を入金する
2-3.発注する - 先物取引ができる証券会社の選び方
3-1.取引コストで選ぶ
3-2.少額取引できるかで選ぶ
3-3.取引ツールで選ぶ - 先物取引の銘柄の選び方
- 先物取引の注意点
- まとめ
1 先物取引とは
先物取引とは、将来の決められた日に行う商品の受け渡しと、代金決済の条件を現時点で契約する取引のことです。先物取引は、現物価格と連動するように設計されているデリバティブ商品で、取引所を通じて行うことができます。
先物取引は、もともと現物商品の価格変動リスクを避けるために考案された金融商品ですが、大きく分けて以下3つの特徴があるため、投機目的の利用者も多く参加しています。
1つ目は、レバレッジ取引が可能な点です。先物取引では、委託証拠金を預託することで元本の10~20倍の取引が可能になるので、少額からでも利益を生み出しやすい仕組みとなっています。
例えば、証拠金に対して10倍の取引ができる先物商品の場合、10万円の証拠金で最大100万円の取引が可能になります。しかし、相場が予想と逆の動きとなった時には大きな損失となる可能性があり、最悪の場合、追加で証拠金を差し入れる必要があります。
2つ目は、「売り」から入れる点です。先物取引では「買い」だけではなく「売り」からも入れるため、相場上昇時・下落時にかかわらず利益を狙うことが可能になります。
3つ目は、「取引期日」があることです。取引期間内であれば、ポジション(=未決済の保有銘柄)を持ち続けることができますが、期日(前営業日)までに決済する必要があります。期日までに決済されていない建玉は、強制決済となるので、注意が必要です。
2 先物取引の始め方
先物取引は、始める際の手続きや取引の方法が現物株取引と異なるため、事前によく確認しておきましょう。
2-1 先物・オプション取引口座を開設する
先物取引を始める場合、最初に「総合取引口座」を作る必要があり、その後、先物・オプション取引口座を開設する流れとなります。総合取引口座とは、先物や現物株などの取引等を総合的に管理する証券口座です。
総合取引口座は、各証券会社の口座開設ページからメールアドレスの登録や、個人情報の入力、本人確認書類の提出を済ませると、口座開設を完了させることができます。
本人確認書類は、「マイナンバーカード」や「運転免許証」など、顔写真付き身分証明書が必要になるので、事前に用意しておきます。総合取引口座の開設完了までに最短1日、郵送手続きなら10日ほどかかる場合があります。
なお、先物取引口座は、総合取引口座を作る際に同時申込みが可能です。先物・オプション取引口座を開設する流れは、「先物・オプション取引口座の新規申し込み」を行い、取引説明書およびルールの確認を確認した上で、必須事項の入力や簡単な質疑応答を済ませれば、手続き完了となります。
先物取引は、レバレッジによる損失拡大のリスクがあるため、先物・オプション取引口座の開設にあたって審査があります。場合によっては、電話での審査が必要になるケースもあります。審査基準は証券会社によって異なりますが、一定の株取引の経験を必須条件としている証券会社もあります。
審査に通過すると、先物・オプション取引口座が開設され、口座開設完了のお知らせはメールで通知されます。
なお、上記手続きは総合取引口座を持っていない場合の手順なので、すでに総合取引口座を持っている場合、先物・オプション取引口座の新規申し込みのみで済みます。
2-2 証拠金を入金する
先物・オプション取引口座の開設が完了したら、先物取引を行うための証拠金を入金しますが、その前に「必要証拠金」の金額を確認する必要があります。
必要証拠金は、先物取引を行うのに必要な預託金であり、証券会社に預け入れます。金額は、「SPANに基づき証券会社が計算する証拠金額」×「証券会社が定めた掛け目」-「ネットオプション価値の総額」で計算され、例えば、SPANに基づき証券会社が計算する証拠金額が660,000円、証券会社が定めた掛け目が1.0倍の場合、日経225ミニの必要証拠金は、660,000÷10×掛け目1.0=66,000円となります。
上記の例では、日経225ミニの必要証拠金は66,000円となりますが、必要証拠金にある程度余裕を持たせないと、相場が大きく動いたとき、すぐにロスカットされる可能性もあるので、多めに入金しておくのが無難です。
なお、証拠金は、総合取引口座に必要証拠金を入金した後、先物・オプション取引口座に証拠金振替を行います。
証拠金振替の方法は、証券会社の証拠金振替ページから「先物」を選択し、振替金額を入力します。振替後、振替履歴の確認を行い、証拠金額等の間違いが無いことを確認したら、銘柄注文の手続きに進みます。
2-3 発注する
証拠金の振替まで終われば、銘柄の発注ができるようになります。先物の注文方法でよく使用されるのは、「成行注文」「指値注文」「逆指値注文」などです。
成行注文とは、売買価格を指定せずに注文する方法です。取引が成立しやすいため、スムーズに売買したい人に適した注文方法となっている一方、相場が大きく変動した際、不利な価格で売買させられるデメリットもあります。
指値注文は、売買価格を指定して発注する方法です。買建ての場合は上限価格、売建ての場合は下限価格を指定することになります。例えば、「A銘柄を○○円で1枚買いたい」「B銘柄を○○円で2枚売りたい」など、希望する価格で取引したい場合に適した注文方法です。
指値注文は、成行注文のように、不利な価格で売買させられるリスクを避けることができる一方、希望価格で売買してくれる相手が現れるまで時間がかかるリスクもあります。
逆指値注文は、指定した価格以上になったら買い、以下になったら売りを発注する方法です。買建ての場合、「価格が○○円以上になったら発注」、売建ての場合は、「価格が○○円以下になったら発注」ができるので、新値を追う順張り投資を行いたい際や、ロスカット設定を行えば損失拡大を防ぐためのリスクコントロールにも役立ちます。
その他にも、「○○円になったらエントリー、その後○○円になったら決済」などで使える「IFD注文」や、指値と逆指値など、2種類の注文を同時にできる「OCO注文」などの特殊注文を活用できる証券会社もあります。
発注の手順は、取引ツールで銘柄を選択した後、取引したい限月を選択すると注文画面に移るので、取引したい数量や買建て・売建て、または指値・成行などを選択すると、注文の完了となります。
また、ポジション(=建玉)を決済したい場合は、建玉一覧から決済した銘柄を選択し、転売または買い戻しする数量を入力します。次に指値・成行の注文方法を選択した後、注文内容の確認をすれば、決済注文完了となります。
先物取引の注文方法は証券会社によって違いますが、大まかな流れは同じなので、参考にしてみてください。
3 先物取引ができる証券会社の選び方
先物取引を取り扱う証券会社によって、手数料や強みとしているサービスは異なるので、投資スタイルに合ったところを選ぶことが重要です。以下では、証券会社の選び方やポイントをご紹介します。
3-1 取引コストで選ぶ
先物取引と同様にレバレッジをかけられる信用取引の場合、取引手数料のほか、金利や品貸料など複数のコストが発生する一方、先物取引のコストは取引手数料のみとシンプルです。
以下は、先物取引を扱っているネット証券5社の日経225先物の手数料をまとめた表です。
項目 | 日経225 | ミニ日経225 |
---|---|---|
SBI証券 | 275円 | 38.5円 |
楽天証券 | 275円 | 38.5円 |
松井証券 | 220円 | 38.5円 |
GMOクリック証券 | 220円 | 37円 |
マネックス証券 | 275円 | 38.5円 |
短期売買を繰り返すことの多い先物取引では、取引コストがかさみ、投資収益を圧迫する場合もあるので、より低コストで先物取引ができるネット証券を検討するのも一つの方法です。
3-2 少額取引できるかで選ぶ
先物取引で少額取引を行うには、少額資金でも取引できる「ミニ」の取り扱いがある証券会社を選ぶ必要があります。例えば、日経225先物では、取引単位が日経平均株価の1,000倍なので、129万円の必要証拠金を入金する必要があるなど、ハードルは高めです(※日経225及びミニの必要証拠金は2022年6月10日時点の金額です)。
一方、日経225先物ミニでは、取引単位が日経平均株価の100倍であり、12.9万円の必要証拠金で済むため、初心者の方でも始めやすいのが特徴です。
3-3 取引ツールで選ぶ
証券会社では基本的に、先物取引を行うための取引ツールを提供しています。現物株取引とは別に先物取引専用の取引ツールを提供している場合もあれば、現物株取引と併用している証券会社もあります。
取引ツールのサービスや強みは証券会社によって異なるため、使いやすく、投資スタイルに合った取引ツールを選ぶ必要があります。例えば、楽天証券の「マーケットスピード」や、SBI証券の「HYPER SBI」などは、情報収集からチャート分析、スクリーニング機能などが搭載された高機能取引ツールとなっており、無料で利用できます。
このほか、外出先でも先物取引を行いたい方は、スマホアプリの有無も確認しておくことも大切です。
4 先物取引の銘柄の選び方
先物取引の種類には、おもに「金融先物」と「商品先物」があります。金融先物とは、株価指数や債券、通貨などを指し、商品先物は、原油や金、トウモロコシ、大豆などを指します。
先物取引の銘柄によって証拠金額やレバレッジは異なるので、事前に確認しておく必要があります。また、各銘柄の日々の値動きや相場の特性を把握しておくことも大切です。はじめて先物取引を行う方は、株価指数先物が値動きもわかりやすく適しています。
例えば、日経225ミニ先物は、連動元である日経平均株価が225社にリスク分散されており、商品先物と比較して値動きの幅も小さく、少ない証拠金で取引できるので、初心者でも取引しやすい銘柄となります。
一方、値動きの激しい商品や国際情勢等に左右されやすい商品先物は、予想外の値動きに対する立ち回りができず、大きな損失に繋がる可能性もあるため、特に初心者の方は注意しましょう。
先物取引に慣れるまでは、日経225ミニ先物のような株価指数先物で経験を積んでから、値動きの激しい商品先物を取引するなど、トレード対象を段階的に増やしていく方法が適しています。
5 先物取引の注意点
現物株取引は、企業が倒産しない限り銘柄の保有を続けられる一方、先物取引は期間が決まっているため中長期の投資には適しません。上記の通り、先物取引は少ない証拠金で大きな利益を狙える反面、大きな損失を出すリスクもあるので、リスクコントロールの徹底が必要になります。
また、先物取引は、証券会社が確定申告をしてくれる「特定口座」の管理対象ではなく、自分で損益計算等を行って確定申告する必要がある点も、留意しておきましょう。
まとめ
先物取引は、リスクコントロールを徹底することで、資金効率良く運用できる金融商品であるほか、ミニ先物を活用すれば少額取引も可能になります。一方、リスクとして証拠金以上の損失になる可能性や、取引を行う銘柄の期日を事前に確認しておく必要もあります。
先物取引の始め方に興味がある方は、先物取引の仕組みや注意点をしっかり理解した上で、投資目的や投資スタイルと照らし合わせて、検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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