岸田新政権で株価はどうなる?経済ストラテジストが政策から今後の影響を予想

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岸田新政権が誕生しました。同政権は、経済政策のスローガンに「新しい日本型資本主義」を掲げ、「成長」と「分配」の好循環による新たな日本型資本主義の構築を目指すとしています。

成長戦略をベースにすると株価にはプラス材料、分配施策をベースにすると株価にはマイナス材料となりそうです。今回は、岸田内閣の政策を分析し、株式市場がどのような影響を受けるのか予想しました。

※この記事は2021年10月18日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 新しい日本型資本主義
  2. 株価に影響を与えそうな業種
    2-1.エネルギー
    2-2.情報通信
    2-3.旅行関連
    2-4.米国株
  3. まとめ

1 新しい日本型資本主義

岸田総理は、小泉改革以降の新自由主義的政策(規制緩和や構造改革など)は経済成長をもたらしたが、他方で富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断化を生んだと強調しています。

イノベーションや科学技術の発展などで成長を促し、さらに成長により得られた果実(利益)の適切な分配により格差拡大を抑制することで、新しい日本型資本主義を実現するとしています。

具体的には、下表のような成長戦略4本柱、分配施策4本柱を掲げています。

成長戦略 岸田4本柱 分配施策 岸田4本柱
・科学技術立国
・経済安全保障
・デジタル田園都市国家構想
・人生100年時代の不安解消
・下請けいじめゼロ
・子育て世帯の住居費・教育費を支援
・公的価格の抜本的見直し
・財政の単年度主義の弊害是正

(参照:岸田文雄公式サイト

分配施策より成長戦略の方が株価に与える影響が大きいと考えられます。成長戦略の4本柱のなかでは、科学技術立国、経済安全保障、デジタル田園都市国家構想が、株価に影響を与えそうです。

株価に影響する岸田政権の成長戦略

科学技術立国

10兆円の大学ファンドを創設し、その運用益(年3%+インフレ率)を大学の基礎研究費用に配分

  • 10兆円規模の大学ファンドを年度内に設立
  • 投資・研究開発・人材育成など未来への投資を積極的に応援する大胆な税制を実現
  • 再生可能エネルギーの一本足打法ではない、原発再稼働など含む「クリーン・エネルギー戦略」の策定
経済安全保障

海外依存度を下げ、自律性を高めるための政策

  • 我が国の戦略的「自律性」と「不可欠性」を確保するため「経済安全保障推進法」(仮称)を策定
  • DFFT(自由で信頼あるデータ流通)を推進
  • 経済安全保障・DFFTを担当する専任大臣設置
デジタル田園都市国家構想

コロナ禍による、在宅勤務が定着するなかデジタル田園都市国家構造は都市と地方の情報格差を縮めることで地方の地位の上昇を目指す

  • 5Gの早期展開など、地方におけるデジタル・インフラの整備
  • テレワーク、自動運転など、デジタルの社会実装により、二地域生活を振興
  • 全ての方がデジタル化のメリットを享受できるよう、デジタル推進委員を全国に展開

2 株価に影響を与えそうな業種

岸田政権の成長戦略で株価が影響を受けそうな業種としては、エネルギー、情報通信、交通・海上物流、金融、医療などが挙げられ、特にエネルギーや情報通信関連の株価への影響が想定されます。また、大学ファンド運用による海外株式市場への影響もありそうです。

2-1 エネルギー関連

エネルギー関連ではクリーン・エネルギーが注目されます。各国は温暖化対策として二酸化炭素排出の削減に取り組んでいます。岸田内閣においても菅前内閣同様、水素や太陽光発電、水力発電、バイオマス発電、風力発電など再生可能エネルギー関連が注目されそうです。

2-2 情報通信関連

岸田総理は、地方活性化のために5G(高速通信規格)、データセンターなどデジタル・インフラの整備を進めると表明しています。通信網、通信機器、制御装置、不動産、機械・機器など幅広い関連銘柄への影響が見込まれます。

また、国内で半導体の生産拠点を確保し、国内でサプライチェーンを確保できる体制を整えることを目指すとしており、半導体メモリ、素材・材料、半導体製造装置といった半導体関連銘柄への注目も高まっています。

2-3 旅行関連にも注目

旅行関連銘柄にも動きがありそうです。ワクチン接種が進み、新型コロナ感染者数も減少傾向にあるため、GoToトラベルが再開される可能性があります。これまでコロナ感染拡大により人の移動が制限されていたため、GoToトラベルが実施されると旅行需要が一気に高まりトラベルバブルの発生も予想されます。

旅行・観光、運輸、宿泊、飲食などの業種が注目されます。

2-4 大学ファンドの運用は米国株の好材料

大学ファンドの設立は米国株式市場にも影響を与える可能性があります。大学ファンドは2022年3月までに設立される予定で、当初は4.5兆円から運用が始まり、22年度中に10兆円の規模を目指しています。

運用資産の内訳は日本の組み入れ比率が10%程度で、残りの約9兆円が海外資産で運用されます。株と債券の投資比率がグローバル株式に65%、グローバル債券に35%とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と比較すると株式比率が高い(GPIFはそれぞれ50%)ことが特徴です。

大学ファンドの目標収益は年間3%+物価上昇率です。その収益を基金として幅広い科学研究を支援します。円ベースで年間3%という目標は、国内運用だけでは厳しいものの、グローバルに運用すれば十分達成可能な水準です。

大学ファンドの資産規模が大きいことを考慮すると、世界で最も株式時価総額が大きい米国株での運用が中心となりそうです。なお、今年度の米国株式主要指数の円換算後の上昇率は20%を上回っています(表参照)。

米国主要指数の年初来上昇率(2021年10月12日時点)

銘柄 年初来上昇率(%)
ドルベース 円ベース
ダウ平均 12.32 23.18
S&P500 16.18 27.38
ナスダック 13.06 23.99

まとめ

岸田内閣の成長戦略は、株式市場にはプラス材料となりそうです。分配施策は、企業収益の圧迫材料となることからマイナス要因ですが、企業収益の大幅上昇によって給与水準が上がり消費性向が高まれば、株価にプラス材料となる可能性があります。

岸田総理が掲げる令和所得倍増計画は所得水準を上げ中間所得層を厚くすることが目的です。具体的な政策を明示し早期に実行していくリーダーシップが求められます。今後は分配施策の財源が課題となりそうです。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。