ジュニアNISAはまだ間に合う?メリット・デメリットや活用方法も

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ジュニアNISAは廃止決定以後、口座数が増加しています。不人気の原因だった引き出し制限が2024年以後はなくなるなど、廃止によるメリットが生じたためと考えられます。まだジュニアNISAを利用していない人が今から始めてもメリットがあるのでしょうか。

この記事ではジュニアNISAの制度廃止の概要、これから始めるメリットなどについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年3月時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. ジュニアNISAとは?
    1-1.ジュニアNISAの概要
    1-2.ジュニアNISAの運用商品
  2. ジュニアNISAで新規に投資できるのは2023年末まで
    2-1.制度終了後も18歳までは非課税保有できる
    2-2.2024年以降は自由に引き出せるように
  3. ジュニアNISAのメリット
    3-1.運用益に課税されずに教育費を準備できる
    3-2.相続対策になる
    3-3.子どもの投資教育になる
  4. ジュニアNISAのデメリット
    4-1.18歳になるまで払い出しできない
    4-2.金融機関の変更は原則不可
    4-3.贈与税の課税対象
    4-4.マイナス運用の場合メリットがない
  5. 今からジュニアNISAを始める場合の活用方法
    5-1.2022年からジュニアNISAを始める流れ
    5-2.【ジュニアNISAの活用方法1】子どもの進学資金として
    5-3.【ジュニアNISAの活用方法2】世帯の非課税投資枠を広げる
    5-4.【ジュニアNISAの活用方法3】相続対策として
  6. ジュニアNISAの始め方
    6-1.ジュニアNISAの金融機関選び
    6-2.ジュニアNISA口座開設の流れ
  7. まとめ

1.ジュニアNISAとは?

ジュニアNISAとは、未成年者を対象とした少額投資非課税制度(NISA)です。使い道は限定されていませんが、子どもの大学進学資金などの準備に適しています。

1-1.ジュニアNISAの概要

ジュニアNISAの制度の概要は以下のとおりです。

  • 利用できる人:口座開設年の1月1日時点で20歳未満の人
  • 非課税対象:株式や投資信託などの運用益(売却益・配当金・分配金)
  • 非課税投資枠:年間80万円(未使用分の繰越は不可)
  • 非課税期間:最長5年
  • 投資可能期間:2023年まで
  • 運用管理者:口座開設者(未成年者)の両親・祖父母等二親等以内の親族
  • 払い出し制限:18歳までは払い出し不可

ジュニアNISAは未成年者が口座開設者となるため、両親など「運用管理者」が運用を行うことになります。

1-2.ジュニアNISAの運用商品

ジュニアNISAの対象となる主な運用商品は以下のようなものです。

  • 国内・外国株式
  • 国内・海外ETF
  • 国内・海外REIT
  • 株式投資信託

2.ジュニアNISAで新規に投資できるのは2023年末まで

NISA制度の改正に伴い、ジュニアNISAは2023年いっぱいでの廃止が決まっています。新規買い付けできるのは、2023年までです。2022年からジュニアNISAを始めると、未成年者一人につき2年間で最高160万円の非課税投資が可能となります。

2-1.制度終了後も18歳までは非課税保有できる

2023年のジュニアNISA制度終了時点で18歳未満の人は、制度終了後も18歳になるまで非課税で保有が継続できます。2023年までに買い付けた運用商品のそれぞれの非課税期間終了後、継続管理勘定に移管(ロールオーバー)できることになっています。

継続管理勘定へは運用益を含め、すべて移管可能です。移管後は、1月1日において18歳である前年の12月31日まで非課税保有ができます。2022年に生まれた子どもであれば、2040年まで非課税運用ができるというわけです。

ただし、継続管理勘定での運用商品の売却は可能ですが、新規買い付けはできません。

2-2.2024年以降は自由に引き出せるように

ジュニアNISAの制度廃止に伴い、2024年1月1日以降は払い出しが自由にできるようになります。これにより、ジュニアNISA口座の上場株式や投資信託などを18歳になる前に売却しても、利益には課税されません。

ただし、ジュニアNISA口座は廃止されることになります。一部の金融商品の売却などはできないことに注意が必要です。

18歳までの引き出し制限は、教育資金として使いたいときに使えないため制度上の欠陥と考えられています。最近は秋に合格が決まる学校推薦型選抜や総合型選抜といった方式で大学に入学する人が増えました。その場合、入学金などの納付も前倒しになるため、ジュニアNISAの資金が利用できなかったのです。

18歳になる前の払い出しが可能になれば、進学資金として有効に活用できるようになります。

3.ジュニアNISAのメリット

ジュニアNISAを今から始める場合、どのようなメリットがあるでしょうか。

3-1.運用益に課税されずに教育費を準備できる

ジュニアNISA口座から発生した金融商品の売却益や配当金・分配金には課税されません。通常、株式や投資信託などの運用益には20.315%の税金がかかります。10万円の運用益が出たとしても約2万円は税金として徴収され、手取りは約8万円となってしまうというわけです。

ジュニアNISAで運用すれば運用益には課税されないため、効率よく子どもの資産を増やせます。

3-2.相続対策になる

ジュニアNISAの口座の資金は口座開設者である未成年者の名義です。しかし、実際に資金を拠出するのは運用管理者である両親または祖父母であるケースがほとんどです。そのようなケースは、両親や祖父母からの贈与となります。

暦年贈与には年間110万円の基礎控除があるため、1年間に80万円の非課税枠内であれば贈与税がかかりません(贈与を受ける人に他の贈与がない場合)。また、基礎控除は贈与を受ける人ごとの設定であるため、複数の子や孫にジュニアNISAの資金を提供すれば、相続財産を上手に減らしながら生前に財産の承継が可能になります。

3-3.子どもの投資教育になる

ジュニアNISAは運用管理者である親などが子どもと共に運用し、投資経験を積ませることにも利用できます。ジュニアNISAは本来、子ども名義の口座です。子どもが親のサポートを受けながら、実際の運用を行っても問題ありません。

投資につきものの価格変動やドルコスト平均法などを体験することは、大人になって自己資金を運用するときに必ず役に立つでしょう。

4.ジュニアNISAのデメリット

ジュニアNISAを始めるかどうかを判断する上で、知っておきたいデメリットを解説します。

4-1.18歳になるまで払い出しできない

ジュニアNISA口座の資産は、子どもが18歳(3月31日で18歳である年の前年12月31日)になるまで引き出せません。18歳になる前に引き出すとさかのぼって運用益に課税され、ジュニアNISA口座は廃止されます(災害等やむを得ない場合は非課税払い出しが可能)。

先述のとおり、この払い出し制限は2024年からは無くなります。しかし、今からジュニアNISAを始めて2023年までに払い出しが必要になる可能性のある人は、慎重に検討すべきでしょう。ジュニアNISAを始めるとしても、余裕資金の範囲になるようにライフプランや家計を見直すことが大切です。

しかし、2023年いっぱいは使わずにすむ資金があれば、今からジュニアNISAを始めるメリットはあるといえます。

4-2.金融機関の変更は原則不可

ジュニアNISAでは、口座開設した金融機関の変更は原則としてできません。あえて金融機関を変更するなら、現在のジュニアNISA口座を廃止して、別の金融機関に新規で口座開設することになります。

払い出し制限のあるうちに口座廃止をすると、それまでのすべての運用益に課税されます。新規口座開設には手間も時間もかかるため、ジュニアNISAの金融機関は変更しないですむように慎重に選びましょう。

4-3.贈与税の課税対象

ジュニアNISAの資金は、子どもの親もしくは祖父母が出すケースがほとんどです。子どもがお金を出してもらうのは贈与にあたり、贈与税の課税対象になります。贈与税の基礎控除は1年間に110万円で、ジュニアNISA以外の贈与との総額に注意が必要です。

4-4.マイナス運用の場合、メリットがない

ジュニアNISAの非課税期間をマイナス運用で終了すると、メリットがなくなってしまいます。ジュニアNISAの非課税期間終了後は、課税口座への移管か、新しいNISAへの移管のいずれかを選択します。

このうち、特定口座などの課税口座へ移管する場合、払い出し時の時価が新たな取得価格となります。仮に160万円の元本が200万円になっていたら取得価格は200万円となり、そこからの値上がり益や配当金・分配金が課税対象となります。つまり、ジュニアNISAでの運用益には課税されないというわけです。

反対に160万円の元本が150万円になっていたら取得価格は150万円となります。そこから値を戻して160万円になって売却した場合、本来の利益は0円のはずです。しかし、取得価格は150万円となっているため10万円の売却益を得たことになり、課税されてしまうのです(いずれの例も手数料その他を考慮していません)。

マイナス運用の場合、新しいNISAへ移管して値上がりを待つのも選択肢の一つですが、見通しを慎重に検討しましょう。

5.今からジュニアNISAを始める場合の活用方法

2022年からジュニアNISAを始める場合の流れをチェックしておきましょう。

5-1.2022年からジュニアNISAを始める流れ

以下は、2022年に生まれた子どもがジュニアNISAを始めた場合の流れの一例です。

  1. 2022年(0歳):ジュニアNISA口座開設/80万円投資
  2. 2023年(1歳):80万円投資/ジュニアNISA終了
  3. 2024年(2歳):払い出し制限解除
  4. 2027年(5歳):2022年に買い付けた資産の非課税期間終了/ 継続管理勘定にロールオーバー
  5. 2028年(6歳):2023年に買い付けた資産の非課税期間終了/ 継続管理勘定にロールオーバー
  6. 2040年(18歳):継続管理勘定終了

子どもの年齢が小さい場合、2023年までに投資した資産を18歳までじっくり運用できます。2024年からは都合のいいタイミングで引き出せるので、学校の入学金や塾の費用などにも活用可能です。

5-2.【ジュニアNISAの活用方法1】子どもの進学資金として

子どもの将来の進学資金の一部を、ジュニアNISAの非課税投資で準備できます。2022年と2023年の2年間で最大160万円の非課税投資が可能です。家計の余裕資金や祖父母からの援助をジュニアNISAで長期運用できれば、子どもの大学進学資金などに充てられます。

5-3.【ジュニアNISAの活用方法2】世帯の非課税投資枠を広げる

夫婦でNISAやつみたてNISAの非課税投資をしている世帯でジュニアNISAを活用すると、非課税で投資できる限度額が拡大されます。

たとえば、夫婦でそれぞれNISAの非課税運用をしている世帯の非課税限度額は年間240万円です。子どもが2人いて、それぞれジュニアNISAの口座を開設すると、世帯の非課税限度額は年間400万円になります。

2024年以降は引き出し制限がなくなるため、活用の幅も広がるでしょう。

5-4.【ジュニアNISAの活用方法3】相続対策として

生前贈与とジュニアNISA口座を組み合わせて、相続対策が可能です。贈与税の基礎控除(年間110万円)にジュニアNISAの非課税投資枠を組み入れて活用することで、効率的な次世代への資産移転につながります。相続対策が必要な親や祖父母にとって、2022年から2023年のジュニアNISAの活用は有効といえます。

6.ジュニアNISAの始め方

最後にジュニアNISA口座開設の流れについて解説します。

6-1.ジュニアNISAの金融機関選び

ジュニアNISAを一旦始めると、原則として金融機関の変更ができません。そのため、金融機関選びは慎重に行う必要があります。

運用管理者となる親や祖父母がすでに利用している金融機関に、ジュニアNISAで運用したい金融商品があればそこに開設してもよいでしょう。もし一から金融機関を選ぶなら、運用商品の選択肢が多いネット証券が無難です。

6-2.2022年からジュニアNISAを始める流れ

金融機関が決まったら、口座開設の手続きを実行します。

ジュニアNISAの金融機関に運用管理者とともに口座開設

ジュニアNISAの口座を開設する金融機関に、子ども名義の「未成年者口座」と運用管理者の口座を開設します。未成年者口座とジュニアNISA口座は同時申し込みが可能です。

口座開設書類を取り寄せる

金融機関からジュニアNISA口座開設申込書一式を取り寄せます。

金融機関に必要書類を提出

申し込み書類に必要事項を記入し、未成年者の本人確認書類などを添付して金融機関に提出します。

税務署による申請内容の確認

金融機関は税務署にジュニアNISA口座開設の申請を行います。税務署は申請内容の確認し、金融機関へ確認した旨を通知します。

金融機関が口座を開設し、通知

金融機関はジュニアNISA口座を開設し、ジュニアNISA口座開設完了の通知を行います。これで、取引が始められます。

まとめ

ジュニアNISAの廃止に伴い、2024年以降は18歳までの引き出し制限が解除されることになりました。また、2023年までに投資した分は子どもが18歳まで非課税運用が続けられます。これらのメリットのため、廃止が決まっていてもジュニアNISAの口座開設をする人は多いのです。

2023年までは使う予定のない余裕資金がある人は、ジュニアNISAの活用を検討してはいかがでしょうか。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント