投資信託のリスクをプロが徹底解説。主なリスクや商品別リスク、対策や計算方法も

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初心者にも投資しやすい投資信託ですが、投資する際にはリスクの種類や性質を理解しておくことが大切です。なお投資においてのリスクとは、不確実性の振れ幅(度合い)のことです。

今回は、リスクの種類や特徴について解説したうえで、投資信託の主要商品にどのようなリスクがあるかを説明します。また、収益の不確実性の振れ幅である「価格変動リスク(標準偏差)」の計算方法や使い方のほか、運用効率を示す「シャープレシオ」についても解説します。

目次

  1. 投資信託における主なリスク
    1-1.価格変動リスク(債券は金利変動リスク)
    1-2.為替リスク
    1-3.クレジットリスク(デフォルトリスク)
    1-4.カントリーリスク
  2. 投資信託の主な商品別リスク(リスクの低い順)
    2-1.国内債券型
    2-2.外国債券型
    2-3.国内株式型
    2-4.外国株式型
  3. リスクの対策方法
    3-1.分散投資
    3-2.長期保有
  4. 価格変動リスクの調べ方・求め方
  5. シャープレシオとは
    5-1.シャープレシオの求め方、使い方
    5-2.シャープレシオの注意点
  6. まとめ

1.投資信託における主なリスク

投資信託は、価格変動のある国内外の株式や債券等に投資するため元本保証がなく、それだけのリスクがある金融商品ということになります。主なリスクとしては、価格(金利)変動リスク、為替リスク、クレジットリスク、カントリーリスクの4つがあります。

1-1.価格変動リスク(債券は金利変動リスク)

価格変動リスクは、投資信託に組み入れられている株式や債券の価格・金利が変動することによって生じるリスクのことです。株式の価格、債券の利回り、為替レートは日々変動し、投資信託の基準価額はこれらの価格変動により変化します。

価格変動リスクは価格の振れ幅の大きさのことで、専門用語では標準偏差(シグマ=σ)といいます。標準偏差が大きいほど価格変動リスクが大きく、小さいほど価格変動リスクが小さいことを意味します。標準偏差の算出方法は後掲します。

1-2.為替リスク

為替リスクは、外国通貨建ての資産を投資・保有した場合に生じます。一般的に、円高の場合は基準価額が下落し、円安の場合は基準価額が上昇します。

1-3.クレジットリスク(デフォルトリスク)

クレジットリスクは、企業の経営不振、倒産、不祥事などその他要因に起因した資金調達コストの上昇のことです。例えば債券市場では、この調達コストの上昇は国債との金利差に反映されます。クレジットリスクが高まると、この国債と社債の金利差(クレジットスプレッド)が拡大します。

1-4.カントリーリスク

カントリーリスクは、投資先の国・地域における政治・経済不安に起因するリスクのことを指します。紛争や内乱、テロなどが起きると、投資した資産の価値が変動する可能性があり、また、その国・地域から投資資金を引き上げることが困難になることもあります。

2.投資信託の商品別リスク

次に商品別のリスクです。株式より債券の方がリスクは低く、投資先は海外より国内の方が低リスクとなります。以下、リスクの低い順に掲載します。

2-1.国内債券型

国内債券型のリスクは、価格変動リスクとクレジットリスクの2つです。債券には大きく分けて、国や国の機関が発行する国債と、企業が発行する社債の2種類があります。国債は国が元利金を保証しているため、クレジットリスクは発生しません。また、債券には満期(償還)が設定されているため、株よりも値動きが小さく低リスクだと言えます。

2-2.外国債券型

外国債券型は、円を外貨に両替し、その外貨で国外の債券に投資します。為替は常に変動するため、債券のリスクに加えて為替のリスクも発生することとなります。また、外国投資にはカントリーリスクが伴います。

2-3.国内株式型

国内株式には、有名大企業もあれば、上場間もない新興企業もあります。新興企業は将来大きな成長を狙うこともできますが、成長軌道に乗るまで値動きが安定しないこともあります。投資対象が大型株なのか、新興企業なのかによってリスクの度合いが違います。

また、企業規模にかかわらず、企業の倒産や不祥事に伴う株価の下落(クレジットリスク)のほか、価格変動リスクが伴うのが株式型投資信託の特徴です。

2-4.外国株式型

外国株式型は、価格変動リスク、クレジットリスクに加え、外貨を運用することから為替リスクとカントリーリスクも伴います。また、投資対象企業が在先進国か在新興諸国かによってリスクの大きさが違います。

先進国は大企業が多く比較的リスクの小さい運用を期待できますが、新興国は政情不安等により価格変動が大きいこと、インフレに伴う為替減価リスクがあることから先進国株に比べてリスクが高いと言えます。

3.リスクの対策方法

上記リスクを緩和する方法としては、分散投資と長期保有が挙げられます。

3-1.分散投資

分散投資とは、いろいろな種類の商品に投資することで、リスクを軽減することができる投資手法です。株と債券の関係をみると、一般的に株が下がると債券が買われ、債券利回りが低下します。株式だけに投資しているよりも、株と債券の両方に投資することで株価下落時のリスクを減らすことができます。

3-2.長期保有

金融商品は値上がりする時もあれば、値下がりする時もあります。この価格変動の影響を軽減させるためには長期で保有することが有用です。株式は、理論的には投資期間が長ければ投資対象企業の成長が見込まれるため、株価も値上がりする傾向にあるとされています。

4.価格変動リスクの調べ方・求め方

投資信託の価格変動リスクは、各ファンドの概要や目論見書などを見ることで数値として確認することができます。値が大きいほどリスクが高く、損益の幅が広いということになります。

なお具体的な計算方法は以下の通りです。投資を検討する際に実際に計算を行う必要まではありませんが、各ファンドはこのような形でリスク計算がなされた上で組成されているということは理解しておくと良いでしょう。

下表にあるファンドAの過去3年の収益率をもとに、標準偏差を求めてみます。

項目 Aの収益率 Bの収益率
1年目 2.50% 10%
2年目 3.00% -8%
3年目 3.50% 7%
  1. 収益率の平均値を求めます。
    (2.5%+3.0%+3.5%)÷3=3%
  2. 次に平均値と収益率の差を求めます。
    1年目:3.0%-2.5%=0.5%
    2年目:3.0%-3.0%=0%
    3年目:3.0%-3.5%=-0.5%
  3. ②で求めた値を二乗します。
    1年目:0.5%×0.5%=0.0025%
    2年目:0%×0%=0.00%
    3年目:(-0.5%)×(-0.5%)=0.0025%
  4. ③の平均値を求めます。
    (0.0025%+0.00%+0.0025%)÷3=0.0017%
  5. 最後に④の値の平方根を求めます。
    √0.0017%=0.408%

標準偏差は0.408%となりました。標準偏差は平均からのかい離値で、データの分布を示すものです。統計学上、平均±標準偏差の範囲に全データの68%が、平均±2×標準偏差の範囲内に95%が分布します。ファンドAは0.3%±0.408%(-0.108%~0.708%)の間にデータの68%が分布していることを意味しています。

ここで求めた標準偏差は、投資信託の運用実績の評価として使われているシャープレシオの計算の際に用いられます。

5.シャープレシオとは

シャープレシオは収益に対し、どれだけのリスクを取ったかという運用効率を指数化したものです。単純に収益の大きさではなく、その収益を得るためにどれ位のリスクをとっているかを表すもので、ファンドを比較するときに使います。

同じ収益率でも、リスクが大きければシャープレシオは小さく、リスクが小さければシャープレシオは大きくなります。収益率がプラスの場合、シャープレシオは大きいほど運用効率が良いファンドだということになります。

5-1.シャープレシオの求め方、使い方

シャープレシオも各ファンドの概要などで確認ができますが、参考に計算方法を解説します。

シャープレシオは(平均リターン-安全利子率)÷(標準偏差)で表されます。安全利子率には一般的に短期国債の金利が用いられます。今回は安全利子率を0%と想定し、上記のファンドAのシャープレシオを求めます。

  • 平均収益率が3%、標準偏差が0.408%
  • シャープレシオA:3%÷0.408%=7.35

ファンドAのシャープレオは7.35です。ここで、ファンドAとファンドBを比較してみましょう。ファンドBの平均収益率は3%、標準偏差は7.87%、シャープレシオは0.38となります。ファンドAとファンドBを比較すると、シャープレシオの高いファンドAが運用効率の良いファンドといえます。

5-2.シャープレシオの注意点

シャープレシオは便利な指数ですが、過去データを利用していることを念頭に置いて使うことが重要です。過去の成績が将来の成績を保証するものではありません。

まとめ

投資にはいろいろなリスクがあります。リスク回避のためには、分散投資と長期投資の組み合わせが効果的です。

相場の格言に「分散は富を守る。集中投資は富を築く」というものがあります。集中投資は富を築くことができるかもしれませんが、失う可能性も秘めており、十分な知識と備えが必要です。一方、分散投資は分散効果によりリスクを軽減しながら富を成長させる手法のため、初心者でも活用できます。

自身の投資経験や環境によって投資手法を選択し、適切なリスク管理を行いしましょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。