投資信託の販売額は、コロナ禍による将来への不安の高まりを背景として、伸びています。投資信託協会の発表によると、2021年3月末時点での公募投信の純資産額は約151兆円と過去最高を記録しました。
投資信託には低リスクから高リスクの銘柄までさまざまです。投資信託は資産が分散されているから安全、という考えでは大損をしてしまう可能性もあります。そこで今回は、投資信託で大損しないための注意すべきポイントについて解説します。
目次
- 投資信託で大損しないために注意すべきこと
1-1.運用成績が悪く高手数料率の銘柄を選ばない
1-2.適当に銘柄を選ばない
1-3.特別分配金が支払われるファンドを買わない
1-4.短期間で儲けようとしない
1-5.レバレッジ型に投資しない
1-6.一度に購入しない
1-7.NISAを活用する
1-8.貯蓄の全額を投資しない
1-9.偏った投資信託に投資をしない - まとめ
1.投資信託で大損しないために注意すべきこと
投資信託で大損しないために注意すべきこととして、9点挙げます。これら9点を意識することで、大損を回避することができます。
1-1.運用成績が悪く高手数料率の銘柄を選ばない
投資信託の手数料は、①購入時の手数料、②保有時の信託報酬、③解約時に必要な信託財産留保額の3つです。最近では、購入時手数料が無料のノーロード投信が増えているほか、信託財産留保額も支払う必要のない銘柄があることから、実際には②の信託報酬が主な手数料となります。
信託報酬はすべての投資信託に必要な手数料です。手数料は毎日自動的に引かれ、引かれた後の価格が基準価額となるため、投信の保有者が手数料を支払っているという実感がありません。信託報酬の手数料率は0.1%程度から3.5%程度まで様々ですが、保有している限り支払う必要のある手数料のため、なるべく信託報酬の手数料率が低い銘柄を選ぶようにしましょう。
しかし、実際には手数料率が高くても運用成績が良いファンドもあるため、手数料率だけで判断することは難しいのです。運用成績と手数料率を比較し、相対的に手数料率が多少高くても運用成績が良ければ良いファンドとも言えます。運用成績の良いファンドは、優秀なファンドマネージャーが資産を運用管理しています。
1-2.適当に銘柄を選ばない
流行やテーマだけで投資した場合、流行りが過ぎると基準価額が下落してしまう可能性があります。自身が投資する投資信託がどういう銘柄なのかを理解する必要があります。投資信託の運用方針や投資対象については、目論見書に運用方針など書かれているので詳細を把握しましょう。
1-3.特別分配金が支払われるファンドを買わない
投資信託には“分配金あり”と“分配金なし”のファンドの2種類があり、分配金には“普通分配金”と“特別分配金”の2種類があります。特別分配金が支払われている投資信託には、注意する必要があります。普通分配金の原資は投資信託が保有している銘柄の売却益や配当金・利息ですが、特別配当金の原資は投資信託の元本を取り崩したものだからです。
元本が取り崩されれば、そのぶん投資する資金が少なくなるため、投資信託の強みである複利効果を狙うことが難しくなってしまいます。分配金を再投資することは可能ですが、手間はかかります。
1-4.短期間で儲けようとしない
投資信託の運用は、長期投資が基本です。投資信託は、複数の銘柄に分散投資されているため、個別株に比べ値動きが小さいことが多いのが特徴です。短期間で儲けようと思うと値動きが大きいレバレッジ型などに投資することとなり、過度なリスクを取ることになります。
1-5.レバレッジ型に投資しない
投資信託には、レバレッジ型ファンドというリスクの高い銘柄があります。レバレッジ型は日経平均株価やS&P500指数などの株式指数が対象です。対象指数の先物やオプションなどデリバティブを使い資産より大きな金額の売買をすることで、より多くの収益を得ることができる一方で、損失も大きくなります。
レバレッジ型は、投資というより投機の性質が強いため、元本を下回ってしまう可能性が一般的な投資信託より高いと言えます。大損をしないためには近寄らないことです。
1-6.一度に購入しない
投資信託の基準価額は日々変動します。そのため投資予定資金を一度に全額購入するより、定期的に一定の金額を購入することで、価格変動リスクを軽減させることができます。
1-7.NISAを活用する
通常の投資では、投資信託の分配金や値上がり益に対し、所得税と住民税が課税されます。しかしNISA口座で運用した場合は、所得税と住民税ともに非課税となります。
NISAには“一般NISA”と“つみたてNISA”の2種類がありますが、つみたてNISAの方が有利です。非課税で運用できる期間が20年と、一般NISAの5年より4倍長いためです。つみたてNISAは、対象銘柄が金融庁の基準を満たした投資信託のみで、長期・積立・分散投資に適した低コスト銘柄ばかりということもポイントです。
また、つみたて金額はネット証券を使えば100円(最大月33,333円)から可能で、長期間にわたり無理なく資産形成ができる仕組みになっています。
1-8.貯蓄の全額を投資しない
貯蓄の全額を投資することは避けましょう。急にお金が必要になる病気やケガ、事故はいつ起きてもおかしくありません。そのため、全貯蓄を投資に回さずに、一部は現金や預金として備えておきましょう。
また、現金が必要となり投資信託を売却する際にも注意が必要です。投資信託の価格が買値より上昇していれば問題ありませんが、下落していた場合は損失を出して売却することになります。ベストな売り時を逃してしまう可能性が上がると言えるのです。
1-9.偏った投資信託に投資をしない
投資信託の中には、特定の地域の株式や債券に投資するファンドがあります。投資先の株式が下落していても、他国の株式が上昇しているケースもあります。そのため、できるだけ地域や資産が分散された投資信託を選ぶ、あるいは地域や投資対象が異なる複数の投資信託を組み合わせることで、リスクを軽減させることができます。
まとめ
投資信託で大損する例としては、急な現金が必要となり、相場の水準に関係なく保有している投資信託を売却せざるをえない時です。急な病気やケガ、災害、失業などで現金が必要となった場合が考えられます。手元に預貯金がない場合は、投資信託を売却する必要があります。その時、投資信託の基準価格が購入価格を上回っていれば良いのですが、下回っている場合は損失を出すことになります。
また、レバレッジ型はリスクが非常に高く、投機的色彩の強い投資信託です。損失を出す可能性が高いため避けるようにしましょう。投資信託の基本は長期・分散・積立が基本です。大損をしないためには、この基本を守ることも大切です。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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