確定拠出年金はどう運用すべき?投資初心者におすすめの方法をプロが解説

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確定拠出年金には企業型(企業型DC)と個人型(iDeCo)の2種類があります。企業型は所属している企業が掛金を毎月積み立て、個人型は加入者が毎月の掛け金を決めて積み立てる年金制度です。

いずれも、金融機関が用意した金融商品の中から銘柄や積立金額を自身で選び運用します。年金額は運用成績次第で、受け取る年金額は確定していません。そのため、選ぶ金融商品によって満期時の受け取り額が大きく異なります。

今回は、確定拠出年金の銘柄選びにおける注意点や運用方法について解説します。

目次

  1. 確定拠出年金とは
  2. 企業型DCのメリット・デメリット
    2-1.企業型DCのメリット
    2-2.企業型DCのデメリット
  3. iDeCoのメリット・デメリット
    3-1.iDeCoのメリット
    3-2.iDeCoのデメリット
  4. iDeCoを始めるうえでのポイント
    4-1.金融機関の選択
    4-2.運用商品
  5. 運用商品の種類と特徴
    5-1.元本確保型商品
    5-2.株式型
    5-3.債券型
    5-4.REIT(不動産投資信託)
    5-5.バランス型
  6. まとめ

1 確定拠出年金とは

確定拠出年金は、加入者が毎月掛け金を積み立て、自身が選んだ運用商品で運用します。将来受け取ることができる年金の金額は運用成績次第で変わりますが、上手く運用ができれば受け取る金額は増えることになります。

確定拠出年金には企業型DCと個人型(iDeCo)があり、企業型DCは自身が勤めている企業が掛金を負担し、個人型は自身が掛金を負担します。

日本の年金制度では、会社員・公務員と自営業者・フリーランスでは加入できる年金制度が異なります。年金制度は3階建てのビルに例えられます。1階部分は全国民の加入が義務付けられている国民年金。2階部分には会社員と公務員の厚生年金、自営業者やフリーランスには任意加入の国民年金基金。3階部分は企業年金です。

会社員の年金は2階建てか3階建てに対し、自営業者やフリーランスの年金は国民年金基金に加入しない場合には1階建てです。1階の国民年金に40年間加入した場合の年金額は約78万円です(2021年現在)。月あたりに換算すると6.5万円です。年金だけで生活するには厳しい金額です。そのため自営業者やフリーランスは自助努力で年金不足額を用意する必要があります。

年金の不足額を補充する目的で国が準備した制度が個人型確定拠出年金(iDeCo)です。当初は会社員の方は対象外でしたが、現在では一部の企業を除き加入することができるようになりました。

なお、年間投資額の上限は、フリーランスや自営業の方は国民年金基金と合算し年間81.6万円(月6.8万円)、会社員や公務員の方は年間14.4万円です。

2 企業型DCのメリット・デメリット

企業型DCのメリット・デメリットを解説します。

2-1 企業型DCのメリット

企業型DCのメリットは企業が掛金を負担してくれることです。企業によっては掛金を上乗せするマッチング拠出を利用することができます。マッチング拠出を利用した場合の掛金は全額所得控除の対象となります。

転職時(勤務年数が3年以上の場合)に転職先に企業型DCがある場合には、それまで積み立てられた資産を移換できます。転職先に企業型DCがない場合には、iDeCo口座を開設して、企業型DCの資産を移換することができます。

2-2 企業型DCのデメリット

勤務年数が3年未満で転職や退職をすると、確定拠出金年金規約により企業がそれまで積み立てた掛金相当額または一部を勤務先に返還するように定められている場合があります。転職する際には担当部署に問い合わせるなどして確認すると良いでしょう。

3 iDeCoのメリット・デメリット

続いてiDeCoについても確認していきましょう。

3-1 iDeCoのメリット

iDeCoは自営業やフリーランスの方のほかに、会社員や公務員の方(一部を除く)も加入できます。iDeCoに加入すると、掛金が全額所得から控除されるため、所得税と住民税が軽減されます。また、運用益が非課税となることもメリットです。

iDeCoの加入年齢は20歳以上60歳未満(2022年5月以降は20歳~65歳未満)です。早く始めれば始めるほど優遇税制の恩恵を受けることができます。

3-2 iDeCoのデメリット

iDeCoのデメリットは、原則60歳になるまで資金を引き出すことができないことです。これはIDeCoが老後の資産を築くことを目的とした制度であるためです。最低積立金額は月5,000円で金額の変更も可能ですが、まずは無理のない金額を設定しましょう。

また各種手数料が必要なこともデメリットです。

4 iDeCoを始めるうえでのポイント

iDeCoは自身で申込手続きが必要です。以下では始めるにあたってのポイントをまとめました。

4-1 金融機関の選択

iDeCoは、証券会社のほか、普段から利用している銀行、信用金庫、郵便局でも始めることができます。金融機関を選ぶ際のチェックポイントは2点あります。

1つ目は毎月かかる手数料(口座管理料)です。iDeCoの手数料は、加入時に必要な加入手数料(2,829円)と、毎月の口座管理手数料の2つです。毎月の口座管理手数料は、171円(国民年金基金連合会に105円、信託銀行に66円)です。

これに加えて、金融機関によっては運用管理機関手数料が必要な場合もありますが、手数料が高額となる場合もあるため、運用管理機関手数料が無料の金融機関を選ぶようにしましょう。ネット証券やネット銀行は運用管理手数料が不要な場合が多い傾向にあります。

各金融機関の運用管理手数料はモーニングスターのホームページで確認することができます。

4-2 運用商品

2点目に、運用商品は金融機関によって商品ラインアップが異なるため、できるだけ取扱い銘柄数が多い金融機関を選ぶようにしましょう。銘柄が多いほど運用成績の相対比較ができます。運用商品のラインアップは、証券会社が他の金融機関よりも多い傾向があります。

5 運用商品の種類と特徴

確定拠出年金の運用商品選びのため、種類ごとに特徴をまとめました。

5-1 元本確保型商品

長期投資を前提とする場合、元本保証型商品の投資は避けるようにしましょう。元本確保型商品とは定期預金や積立年金保険などが対象です。元本割れの心配がない金融商品ですが、落とし穴が2つあります。毎月の口座管理手数料(最低171円)とインフレです。

毎月の積立金を1万円と想定した場合、171円は1.71%に相当します。一方、定期預金の利率はメガバンクでは0.002%、利率が高い銀行でさえ0.2%前後です。(2021年9月時点)

定期預金に毎月1万円預ける場合、1万円から手数料171円が差し引かれた9,829円が元本となります。この金額を利率0.002%で40年複利運用した場合、満期額は9,836円となり、当初の1万円を下回ってしまいます。そのため、低金利の現在は元本確定型商品は避けるようにしましょう。

また、預金はインフレに弱いと言えます。現在1万円で購入できる商品が40年後にも同じ価格で購入できる保証はありません。貨幣価値の低下は元本割れと同じです。50代の方などで残りの運用期間が短く、インフレリスクよりも額面の維持を優先する場合に投資を検討するのが良いでしょう。

5-2 株式型

株式型は長期運用に適しています。以下の表は、日米主要株価指数と商品指数、金価格、不動産投資信託の2021年8月末から遡った10年間の円換算騰落率を示しています。

各指数の円換算騰落率(%)

指数/期間 10年 20年 30年
日経平均株価指数 210.46 166.95 23.60
TOPIX 153.33 81.96 11.45
ダウ工業平均 340.70  225.50 847.80
S&P500指数 437.90  267.47 833.17
ナスダック指数 758.52  692.52 2,268.05
商品指数 -8.26  18.03 87.89
42.39  510.90 318.18
J-REIT 117.05 117.75
米国REIT 187.78 260.04

ナスダック指数は30年間で約23倍に、S&P500指数やダウ工業平均指数は8倍以上に成長しています。米国株は長いほど上昇していることが観測できます。株式はリスクが高いと言われますが、長期間保有することで資産を大きく成長させることが期待できます。

株価と経済成長は正の相関関係にあります。残念ながら日本の人口は減少傾向にあるため、高い経済成長は期待できません。そのため、確定拠出年金で株式運用をする場合は、米国を中心とした先進国に投資するのも良いでしょう。新興諸国はインフレリスクや政治リスクなど不安定要素が多いため、運用する場合は金額を少な目にしましょう。

投資信託の運用にはアクティブ運用とパッシブ運用の2種類があります。アクティブ運用は専門家が投資対象銘柄を精査し運用し、高いリターンを目指します。パッシブ運用では対象の株式指数と同じ動きを目指します。

アクティブ運用は高い収益が期待できますが、手数料(信託報酬)がパッシブ運用より高く設定されています。確定拠出年金は長期間にわたる運用なのでパッシブ運用でも十分高い収益が期待できることや、株式指数の動きがそのまま収益につながるため、投資初心者の方にも分かりやすいと言えます。

ただし、残りの運用期間が短い場合には、株式のリスクは高いため、タイミングによっては運用資産が目減りした状態で手じまいとなってしまうことも考えられます。運用期間と市況を考えながらリスクのバランスを取る必要があります。

5-3 債券型

元本割れリスクの低い債券型ですが、長期運用にはあまり適していません。債券価格には理論的な上限価格が設定されていることから、株式のように2倍、3倍には成長しないためです。

債券価格の条件価格を求めてみましょう。期間10年、クーポン1%の債券は上限価格が110です。計算方法は簡単です。それは今後受け取ることができるクーポン金額と償還時の額面金額の合計だからです。

事例では10年間に受け取るクーポンが10(1%×100(額面)×10年)、償還額100なので、10+100=110が最大金額です。クーポンは毎年支払われるため、1年後の最大価格は109、2年後には108、9年後は101となります。

5-4 REIT(不動産投資信託)

REITは不動産投資信託のことで、賃貸収入や不動産の売却益が分配金として投資家に還元されます。不動産価格や賃貸料が上昇するとREITの価格が上昇します。株式や債券との連動性が低いため、REITを選択することでポートフォリオの分散効果が高まります。

5-5 バランス型

バランス型とは株式や債券、REITなどに均等に配分されている投資信託のことを指します。複数の銘柄に投資するため、分散効果が期待できます。資産が分散されているため、株式型のような大きな収益は期待できませんが、債券型よりも高い収益が期待できます。

まとめ

iDeCoは、開始年齢が若いほど長く運用することができます。20歳の方は60歳までの40年間運用することが可能です。運用は株式を中心とした銘柄を選ぶことで、将来大きな成長が期待できます。

経済成長と株価は連動します。日本は超高齢化社会を迎えているため高い経済成長はあまり期待できませんが、世界経済はまだまだ成長余力があります。そのため、日本一国に投資をするのではなく、先進国を中心とした株式型インデックスファンドなどに投資することで将来的に経済成長の恩恵を受けることができます。

一方、50代後半になり残りの運用期間も短くなった際には、資産をなるべく目減りさせない低リスクな運用にシフトしていくほうが無難だと言えます。株式よりもバランス型や債券型、預金や保険といった、値動きのより小さい商品も積極的に検討すると良いでしょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。