レバレッジ型「Direxion ETF」の評判は?主なファンドの比較や注意点も

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投資信託の人気ランキング上位にはインデックスファンドほか、レバレッジ型投資信託(ファンド)が入っています。レバレッジ型は、指数の2倍、3倍の値動きを目指した投資信託で、短期間に大きく変動するため一部の投資家の間では人気です。

しかし、レバレッジ型には大きな収益機会があるものの、大きな損失を出してしまうこともあるため、特に初心者の方は注意する必要があります。今回は米国でレバレッジETFを数多く組成している運用会社DirexionのETFについて、評判やコストなどを解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定の企業・商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. レバレッジ型(ブル型)とインバース型(ベア型)とは
    1-1.レバレッジ型(ブル型)
    1-2.インバース型(ベア型)
  2. レバレッジ・アンド・インバースETFの活用方法
    2-1.短期売買
    2-2.ポートフォリオのヘッジ
  3. レバレッジ・アンド・インバースETFの注意点
  4. Direxion ETFの銘柄例と経費率、実績
    4-1.S&P500連動型
    4-2.テクノロジー指数に連動
    4-3.米国20年超国債指数に連動
  5. まとめ

1 レバレッジ型(ブル型)とインバース型(ベア型)とは

レバレッジ型やインバース型は表裏一体です。それぞれ見ていきましょう。

1-1 レバレッジ型(ブル型)

レバレッジ型とは、対象の指数の動きに対し、数倍の動きに連動するように設計されています。S&P500ブル3倍のETFは、S&P500指数が1%上昇した場合、3%の上昇することを目指したETFです。これを実現するために、株式およびデリバティブ(先物やスワップ)組み合わせ指数の日々の3倍の動きに連動するようにETFを組成します。

なおレバレッジ型は、日々の変動率に対し何倍となるように設計されているため、2日以上保有した場合には、複利効果により基準日と比較すると原指数に対する倍率は変動します。レバレッジ型は、指数が上昇局面では複利効果により上昇幅が拡大するという特徴があります。

下表の例はS&P500指数の基準日を100とし、1日後に110、2日後には115.5に上昇した場合、日々の変動は3倍ですが、基準日と比較すると3.2倍となっていることが確認できます。

S&P500指数とレバレッジ3倍型(レバ3倍)ETFの推移

指数・銘柄 基準日 1日後 2日後
S&P500 100 110 115.5
レバ3倍ETF 100 130 149.5

騰落率(前日比)

指数・銘柄・倍率 1日後 2日後
S&P500 10.0% 5.0%
レバ3倍ETF 30.0% 15.0%
倍率(倍) 3 3

騰落率基準比

指数・銘柄・倍率 1日後 2日後
S&P500 10.0% 15.5%
レバ3倍ETF 30.0% 49.5%
倍率(倍) 3.0 3.2

1-2 インバース型(ベア型)

インバースとは反対という意味です。インバース型は対象指数が上昇すると、ETF価格が下落し、指数が下落するとETFの価格が上昇するように設計されています。S&P500インバース3倍のETFは、S&P500指数が1%上昇した場合、3%下落することを目指したETFです。

インバース型も日々の変動率に対し、何倍となるように設計されているため、2日以上保有した場合には、複利効果により基準日と比較すると原指数に対する倍率は変動します。

インバース型の特徴として、指数が下落局面では複利効果により下落幅が縮小します。下表の例はS&P500指数の基準日を100とし、1日後に110、2日後には115.5に上昇した場合、日々の変動はマイナス3倍ですが、基準日と比較すると2.6倍となっていることが確認できます。

S&P500指数とインバース3倍ETFの推移

指数・銘柄 基準日 1日後 2日後
S&P500 100 110 115.5
インバース3倍ETF 100 70 59.5

騰落率(前日比)

指数・銘柄・倍率 1日後 2日後
S&P500 10.0% 5.0%
インバース3倍ETF -30.0% -15.0%
倍率(倍) -3 -3

騰落率(基準日比)

指数・銘柄・倍率 1日後 2日後
S&P500 10.0% 15.5%
インバース3倍ETF -30.0% -40.5%
倍率(倍) -3.0 -2.6

2 レバレッジ・アンド・インバースETFの活用方法

レバレッジ・アンド・インバースETFの活用方法としては、短期売買や一時的なポートフォリオのヘッジが挙げられます。

2-1 短期売買

レバレッジ・アンド・インバースETFは価格変化が大きいため、短期売買に向いています。

米国ではFRBが金融政策を引締め方向に転換したため、株式市場が下落傾向にあります。S&P500指数は16.6%(2022年5月23日迄)下落しています。同指数を対象としたインバースETFは大きく値を上げています。

2-2 ポートフォリオのヘッジ

インバースETFは自身が保有しているポートフォリオや投資信託の一時的なヘッジとしても使うことができます。

例えば自身がS&P500に連動する投資信託を保有している場合、相場が下落してしまうと含み損が発生します。しかし、S&P500インバース型のETFに投資することで、保有資産の下落をETF価格の上昇で補うことができるため、資産の目減りを抑えることができます。

3 レバレッジ・アンド・インバースETFの注意点

一般的なETFの場合には組入れている企業が全て倒産しない限り価値がゼロにはなりません。しかしレバレッジ・アンド・インバースは、場合によっては資産が限りなくゼロとなるリスクがあります。また、ETFは日々の指数変動が基準となるため、2営業日以上の期間の場合には、期待した投資効果が得られない場合もあります。

4 Direxion ETFの銘柄例と経費率、実績

DirexionはレバレッジETFで有名な米国の運用会社です。数多くのレバレッジETFを組成しており、82本がNY市場に上場しています。

日本ではS&P500指数や半導体指数、米国小型株、金鉱株、新興国株などを対象としたETFが40銘柄登録されています。今回、その中から人気のある銘柄についてみていきましょう。

4-1 S&P500連動型

S&P500指数の日々の動きに3倍連動するように組成されたETFで、ブル型とベア型が取引されています。経費率はブル3倍(SPXL)が1.01%、ベア3倍が1.0%です。

2021年12月末時点のS&P500指数は4,766.18pt、ブル3倍*(SXPL)が143.41ドル、ベア3倍が16.38ドルでした。米国の金融政策変更(緩和から引締め)にともないS&P500指数は昨年末比16.6%下落しています(2022年5月23日時点)。

この下落を受け、ブル3倍(SPXL)が77.97ドルと昨年末比45.6%下落する一方、ベア3倍(SPXS)は24.28ドルと48.2%上昇しています。なお、経費率は、DirexionデイリーS&P500ブル3倍(SPXL)が0.97%、DirexionデイリーS&P500ベア3倍(SPXS)が1.01%です。

  • DirexionデイリーS&P500ブル3倍(SPXL)
  • DirexionデイリーS&P500ベア3倍(SPXS)

*():ティッカーコード

4-2 テクノロジー指数に連動

テクノロジー指数であるTechnology Select Sector指数は昨年末比22.7%下落しました(2022年5月23日時点)。Direxionデイリーテクノロジー株ブル3倍(TECL)は昨年末比60.2%下落、一方、Direxion デイリーテクノロジー株ベア3倍(TECS)は65.7%上昇しています。なお、経費率は、ブル3倍(TECL)が0.94%、ベア3倍(TECS)が1.01%です。

  • Direxionデイリーテクノロジー株ブル3倍(TECL)
  • Direxionデイリーテクノロジー株ベア3倍(TECS)

4-3 米国20年超国債指数に連動

ICE米国国債20年超指数は昨年末比約20%下落しました(2022年5月23日時点)。Direxionデイリー20年超国債ブル3倍(TMF)は昨年末比52.7%下落する一方で、Direxionデイリー20年超国債ベア3倍(TMV)は昨年末比84%上昇しています。

なお、経費率はDirexionデイリー20年超国債ブル3倍(TMF)が1.0%、Direxionデイリー20年超国債ベア3倍(TMV)が0.93%です。

  • Direxionデイリー20年超国債ブル3倍(TMF)
  • Direxionデイリー20年超国債ベア3倍(TMV)

まとめ

レバレッジド・アンド・インバースETFは、短期間で大きな利益を得ることができるものの、大きな損失を出す可能性もあります。投資する場合には、商品性を理解し、余裕資金で運用するようにしましょう。動きが激しいETFなので、ディトレーダー向けと言えそうです。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。