子どもの教育費は、大学進学までを想定して準備する人が多いでしょう。また、大学の学費は長い間に少しずつ値上がりしていることもあり、いくら準備すべきか迷ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、大学の入学から卒業までにかかる費用を紹介し、教育費の準備に向けた計画の立て方や具体的な準備の手段を解説します。
※2023年11月時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 大学卒業までに教育費はいくらかかる?
1-1.入学先別の入学費用
1-2.入学先別の在学費用
1-3.大学4年間の学費の合計
1-4.下宿する場合の費用 - 大学卒業までの教育費を準備する計画
2-1.大学入学までに準備しておきたい費用の目安
2-2.毎月いくらずつ何年で準備するか?
2-3.児童手当を積立に回す
2-4.必要に応じて奨学金や教育ローンを利用 - 大学費用を準備する方法
3-1.教育資金の準備に適した運用方法の条件
3-2.学資保険などの保険商品はどうか?
3-3.NISAで投資信託の積立
3-4.外貨建てMMF
3-5.個人向け国債 - まとめ
1.大学卒業までに教育費はいくらかかる?
子どもの大学費用はいくらかかるでしょうか。日本政策金融公庫の教育費負担の実態調査(2021年度)のデータから紹介します。
1-1.入学先別の入学費用
入学先別の入学費用は、以下のとおりです。
- 高専・専修・各種学校:50万2,000円
- 短期大学:73万円
- 国公立大学:67万2,000円
- 私立大学文系:81万8,000円
- 私立大学理系:88万8,000円
1-2.入学先別の在学費用
入学先別の1年あたりの在学費用は、以下のとおりです。
- 高専・専修・各種学校:116万9,000円
- 短期大学:137万円
- 国公立大学:103万5,000円
- 私立大学文系:152万円
- 私立大学理系:183万2,000円
1-3.大学4年間の学費の合計
入学先別の大学4年間の学費合計は、以下のようになります。
- 国公立大学:481万2,000円
- 私立大学文系:689万8,000円
- 私立大学理系:821万6,000円
1-4.下宿する場合の費用
通学ができない遠くの大学に進学する場合、自宅を出て下宿します。下宿する子どもへの仕送り額は、年平均95万8,000円(月あたり約8万円)です。また、アパートの敷金や家具・家電の購入費のような下宿を始める費用は、平均38万7,000円となっています。
2.大学卒業までの教育費を準備する計画
大学入学から卒業にかかる学費がわかったら、資金準備の計画を立てましょう。
2-1.大学入学までに準備しておきたい費用の目安
大学入学までに費用を準備するといっても、子どもが小さいうちには将来の進路はわかりません。
どのような進路に進むかまだ確定していない段階では、まずは当面の目安として子ども1人あたり500万円を目安に準備しておくとよいでしょう。
2-2.毎月いくらずつ何年で準備するか?
子どもの教育費の準備は早く始めるほど負担が少なくすむため、できれば誕生してすぐに始めたいところです。誕生してすぐに始めれば18年間をフルに活用して必要資金を準備できます。
しかし、家庭の事情で教育費準備が遅れてしまう場合もあるでしょう。その場合も、目標から逆算してできる範囲で準備するようにしましょう。
以下は、毎年2%で500万円を準備する場合の積立年数別の毎月の積立金額です。試算には金融庁の資産運用シミュレーションを使用します。
- 18年:1万9,250円
- 15年:2万3,842円
- 12年:3万751円
- 10年:3万7,673円
- 8年:4万8,071円
- 5年:7万9,305円
長期間で準備したほうが、毎月の負担を少なくできます。子どもの教育費準備はなるべく早く始められるよう、心がけておきましょう。
2-3.児童手当を積立に回す
児童手当は、中学生以下の子どもがいる家庭への給付金です。現行の子どもの年齢ごとの支給額は、以下のとおりです。
- 3歳未満:1万5,000円
- 3歳以上小学校修了前:1万円(第3子以降は1万5,000円)
- 中学生:1万円
第2子までの場合、子ども1人あたりがもらえる児童手当の総額は約200万円です。児童手当を大学費用のために積み立てれば、目標の500万円のうち200万円は準備できることになります。
2023年11月時点、児童手当には所得制限があり、所得の高い世帯では児童手当が不支給または減額となります。
しかし、児童手当の制度は2024年10月から、所得制限の撤廃や支給期間の延長などの改正が行われる予定です。改正された児童手当を、子どもの大学費用の準備に活用しましょう。
※参照:内閣府「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案の概要」
2-4.必要に応じて奨学金や教育ローンを利用
準備した教育資金では、子どもの大学費用には足りないケースもあるでしょう。その際は、奨学金や教育ローンの利用を検討しましょう。
自治体や大学などによっては、返還のいらない奨学金や給付金を利用できる場合があります。入学前に利用できそうな制度がないか、チェックしてみましょう。
利用しやすいのは、独立行政法人日本学生支援機構の貸与型奨学金と、日本政策金融公庫の国の教育ローンです。日本学生支援機構の奨学金は子どもが借りて子どもが返済し、日本政策金融公庫の国の教育ローンは親が借りて親が返済します。
金利の低さでは日本学生支援機構の奨学金がありますが、子どもが返済義務を負うため、親子での慎重な検討が必要です。
3.大学費用を準備する方法
ここでは、効率よく大学費用を準備できる運用商品を紹介します。
3-1.教育資金の準備に適した運用方法の条件
教育資金の準備に適した運用方法は、以下の4つの条件を満たすものが望ましいといえます。
- 少額投資ができる
- 積立ができる
- リスクが過大でない
- インフレリスクに対応できる
教育費を準備する手段は少額から積立ができて、リスクが大きすぎないものが適しています。また、大学費用は長期的には値上がり傾向にあるため、インフレに対応できる利回りも必要です。
3-2.学資保険などの保険商品
学資保険は、子どもの教育資金を貯められる保険商品です。
学資保険の特徴
契約者(親や祖父母)が万が一の際には保険料の支払いが免除され、満期時に満期保険金が支払われます。学資保険は貯蓄機能と保険機能が備わった金融商品ですが、低金利の影響を受け、利回りが低下している点に注意が必要です。
医療の特約などを付けると、払い込んだ保険料より受け取れる満期保険金が少なくなる商品もあります。
学資保険での教育資金準備
学資保険は満期までの間に解約するとほとんどの場合、元本割れします。さらに最終的に支払った保険料を満期保険金が下回る、増えたとしてもわずかであれば、教育資金は他の方法で準備したほうがよいでしょう。
親に万が一のことがあった場合の備えは、定期保険などに加入すればそれほど大きなコストはかかりません。
3-3.NISAで投資信託の積立
NISA(少額投資非課税制度)での投資信託の積立は、子どもの教育資金準備に適しています。
2024年1月から始まる「新NISA」の特徴
NISAとは株や投資信託で得た運用益に課税されない、個人投資家を支援する制度です。2024年からの新NISAは抜本的に拡充され、以下のような特徴を持ちます。
- 制度が恒久化される
- 非課税期間が撤廃され、無期限になる
- つみたてNISAと成長投資枠の併用ができる
- 年間の投資枠が合計360万円になる
- 売却後に空いた非課税枠の再利用ができる
※画像引用:金融庁「NISAを知る」
NISAで教育資金を準備するポイント
新NISAではつみたて投資枠でも成長投資枠でも投資信託の積立ができ、100円から始められます。NISAの投資信託はハイリスクハイリターンなものから、ローリスクローリターンなものまでさまざまな種類があります。そのため、教育資金準備に適したリスクの高すぎない商品の選択が可能です。
新NISAでは年間投資枠が引き上げられたため、スタートが遅れた人でも積立金額を多くすることで、まとまった資金を準備できます。また、運用益に税金がかからない点も大きなメリットです。
【関連記事】つみたてNISAで低リスクな資産運用をする方法は?始め方や商品選びなど
3-4.外貨建てMMF
外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)とは、格付の高い外貨建ての短期証券に投資する投資信託の一種です。
外貨建てMMFの特徴
外貨建てMMFには、米ドル・豪ドル・南アフリカランド・トルコリラ建てなどがあります。元本保証ではありませんが、運用通貨を分散することができるメリットがあります。
最近の米ドル建てのMMFは、税別の年換算利回りが4.5%以上の商品がほとんどです。外貨建てMMFには、以下のような特徴があります。
- かかるコスト:為替手数料・信託報酬
- 税金:分配金に315%の源泉分離課税、為替差益は申告分離課税の対象
- 主なリスク:為替変動リスク・信用リスク・価格変動リスク
- 投資家保護:金融期間が破綻しても投資家の資産は分別管理される
外貨建てMMFには為替変動リスクはありますが、積立が可能な証券会社もあり、リスクを軽減できます。
外貨建てMMFで教育資金を準備するポイント
米国などの現在の高金利を利用して外貨建てMMFに投資すると、通貨を分散して教育資金を準備できます。多くの米ドル建てのMMFの利回り水準は2023年時点で4.5%以上と高く、インフレリスクへの適応もできるでしょう。
ただし、外貨建ては為替リスクがある投資方法となります。為替リスクを考慮して多額の資金を集中させず、少額の積立が可能であるメリットを活かし、他の方法と併用して運用するとなお良いでしょう。
【関連記事】外貨建てMMFに投資するメリット・デメリットは?外貨預金や通常の投資信託との違いも
3-5.個人向け国債
個人向け国債とは、文字どおり個人投資家を対象にした国債で、1万円から購入できます。
個人向け国債の特徴
現在、発行されている個人向け国債には、以下の3種類があります。
- 変動金利型10年債
- 固定金利型5年債
- 固定金利型3年債
いずれも最低保証金利が0.05%となっており、銀行の定期預金金利より高めです。個人向け国債の利子は、半年ごとに受け取れます。1年経過すれば中途換金可能で、その場合も元本割れしません。
2023年12月15日に発行される個人向け国債の税引き前の利率は、以下のとおりです。
- 変動金利型10年債:60%
- 固定金利型5年債:42%
- 固定金利型3年債:19%
変動金利型10年債の利率は初回に適用される利率で、その後の適用利率は変動します。個人向け国債の利率は2022年から上昇傾向にあり、特に変動金利型10年債の利率は預貯金の金利よりかなり高い水準です。
個人向け国債で教育資金を準備するポイント
個人向け国債はリスクの極めて低い運用商品で、堅実に子どもの教育費を準備したい人に適しています。毎月発行されていて取り扱う金融機関も多いため投資しやすい投資商品ですが、積立はできません。
また、利率が上がってきたといってもインフレリスクには強いとはいえないでしょう。教育資金準備で低リスクの運用を重視したい人は、個人向け国債をベースにして、投資額の何割かをNISAや外貨建てMMFに振り分けるとよいでしょう。
【関連記事】個人向け国債のメリット・デメリットは?他の投資との比較も
まとめ
子どもの大学費用は国立大学でも4年間で500万円近くかかるため、できれば子ども1人につき大学入学までに500万円を準備したいところです。教育資金の準備には児童手当を有効活用し、なるべく早くスタートすることが大切です。効率のよい準備のためには、NISAの活用も検討しましょう。
松田 聡子
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