老後の資産形成のための制度である確定拠出年金では、さまざまな金融商品で資産運用をすることができます。例えば投資信託(ファンド)も確定拠出年金を運用するための商品の1つですが、どのようにファンドを選べばいいのかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、確定拠出年金の運用に利用可能なファンドを種類別に詳しく解説したいと思います。
目次
- 確定拠出年金で運用できる商品は2種類
1-1.元本確保型の商品
1-2.価格変動型の商品
1-3.どの商品を選ぶのかは自由 - 投資信託を選ぶ場合のチェックポイント
2-1.投資信託の投資対象をチェックする
2-2.投資信託の運用方針をチェックする
2-3.投資信託にかかるコストをチェックする - 投資信託を選ぶ場合はリスク許容度を考えること
3-1.リスク許容度が高くなりやすいケース
3-2.リスク許容度が低くなりやすいケース - 確定拠出年金を運用するための3つの選択肢
4-1.資産配分固定型のバランスファンドを購入する
4-2.資産配分変更型バランスファンドを購入する
4-3.単一資産ファンドを組み合わせて購入する - まとめ
1.確定拠出年金で運用できる商品は2種類
確定拠出年金を運用するための金融商品にはさまざまなものがありますが、大きく以下の2種類に分類できます。
- 元本確保型
- 価格変動型
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.元本確保型の商品
元本確保型の商品は、文字通り元本が保証されている金融商品のことをいいます。その代わり、資産が大きく増える可能性もほぼありません。
具体的には、定期預金や保険などが元本確保型の金融商品に当たります。
1-2.価格変動型の商品
一方、価格変動型の商品は、元本は保証されていないものの、運用次第では資産を増やせる可能性がある金融商品のことをいいます。
これに当てはまるのが投資信託(ファンド)となります。
1-3.どの商品を選ぶのかは自由
確定拠出年金に加入する場合、どのような金融商品を選択するのか、1つの商品で運用するのかまたは複数の商品で運用するのか、といったことは加入者の自由です。
逆にいえば、確定拠出年金に加入するということは、どの商品で運用するのかを決めなければならないということでもあります。そのため、商品選びのためには事前に知識を付けておくことが必要になります。
2.投資信託を選ぶ場合のチェックポイント
確定拠出年金を価格変動型の商品で運用したい場合、以下の3点をチェックすることが重要です。
- 投資信託の投資対象
- 投資信託の運用方針
- 投資信託にかかるコスト
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1.投資信託の投資対象をチェックする
チェックポイントの1つが、投資信託の投資対象は何なのかということです。
投資信託では、さまざまな資産が投資の対象となります。主な投資対象としては、以下のようなものが挙げられます。
- 株式(日本株式・海外株式)
- 債券(日本国債・社債・外国債)
- 不動産投資信託(REIT)
- コモディティ(金・原油・穀物など)
- ETF(上場投資信託)
- 公社債投資信託(MRF・MMF) など
これらを確認する理由は、投資対象によってリスクやリターンが異なるからです。また、投資信託によっては、あらかじめ複数の資産に分散して運用することでリスクを避けようとする商品などもあります。
確定拠出年金は、長期的な運用が前提となるため、どの組み合わせが適切なのか、どんなリスクがありどんなリターンが期待できるのかを把握しておく必要があります。
2-2.投資信託の運用方針をチェックする
次のチェックポイントは、投資信託がどんな方針で運用されるのかということです。
投資信託の運用方針には、以下の2種類があります。
- パッシブ運用(インデックス運用)
- アクティブ運用
パッシブ運用またはインデックス運用とは、目標とするベンチマークに連動するような値動きとなることを目指して運用されるものをいいます。ベンチマークとなるのは、有名な株価指数や指標、特定の商品の値動きなどです。例えば、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などがベンチマークになることがあります。
パッシブ運用の投資信託は、ベンチマークの値動きに連動するため、ベンチマークの値動きを把握していれば投資信託の値動きも大まかに把握できます。
一方、アクティブ運用とは、目標とするベンチマークよりも高い成績を目指して運用されるものをいいます。リターンによって資産が増える可能性がありますが、損失が発生するリスクも高くなる運用方法です。
各投資信託では、運用レポートが必ず発行されており、それまでの運用成績を確認できるようになっています。パッシブ運用ならベンチマークにしっかり連動しているか、アクティブ運用ならベンチマークより高い成績を残せているかを確認して、商品選択の判断を行いましょう。
2-3.投資信託にかかるコストをチェックする
最後のチェックポイントは、投資信託での運用にどれくらいのコストがかかるのか、ということです。
投資信託によって資産を運用する場合、信託報酬を支払う必要があり、運用成績に関係なく利益から差し引かれることになります。そのため、確定拠出年金を投資信託にて運用する場合は、予想されるリターンや提供されるサービスの水準などと照らし合わせたり、同じような投資対象を持つ別の投資信託と比較したりして、信託報酬が適切な価格なのか確認するようにしましょう。
また、一般的な投資信託では、購入時や解約時にそれぞれ手数料(販売手数料、信託財産留保額など)が発生することがあります。ですが、確定拠出年金を投資信託で運用する場合はこれらの手数料が発生することはほとんどありません。
3.投資信託を選ぶ場合はリスク許容度を考えること
確定拠出年金を投資信託で運用する場合に大切になることがあります。それは、リスク許容度を考えるということです。
リスク許容度とは、運用におけるリターンがマイナスになった場合に、どれくらいのマイナスまで許容できるのか、という尺度となる考え方のことをいいます。
確定拠出年金を投資信託で運用する場合、資産を増やせる可能性がある一方で、場合によっては損失が発生して資産が減少する可能性もあります。
原則として、何らかのリターンを得ようとする場合は、必ずリスクが伴います。ローリターンならローリスク、ハイリターンならハイリスクとなるわけです。そのため、資産を運用することで、どれくらいのリターンを求めるのか、そのためにどれくらいのリスクを覚悟できるのかを考えることが重要になります。
リスク許容度が把握できれば、あとはそれに見合った投資信託を選択することになります。
3-1.リスク許容度が高くなりやすいケース
リスク許容度が高くなりやすい例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 年齢が若い(=今後収入が増える可能性がある)
- 投資経験が豊富(=リスクを取ることに慣れている)
- 資産が豊富にある(=損失がそれほど気にならない)
- 安定収入がある(=リスクを取りやすい状況にある)
リスク許容度が高い場合は、比較的値動きが大きいファンドを選択しやすくなります。そのため、リターンを得られる可能性も高くなるということになります。
3-2.リスク許容度が低くなりやすいケース
一方で、リスク許容度が低くなりやすい例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 年齢が高い(=今後収入が増えにくい、積立期間が短い)
- 投資経験がない(=リスクを取った経験がない)
- 保有金融資産が少ない(=資産を減らしたくない)
- 収入が安定しない(=リスクを取りにくい状況にある)
リスク許容度が低い場合は、できるだけ損失が出ないようにすることを考えるため、値動きが緩やかなファンドを選択する傾向にあります。大きなリターンは得にくいものの、リスクの低さを重視して掛け金を積み立てることになります。
4.確定拠出年金を運用するための3つの選択肢
投資信託のチェックとリスク許容度の判定が済んだら、実際に投資信託を選択することになります。
確定拠出年金を投資信託にて運用する場合、選択肢には主に以下の2つがあります。
- 単一資産のファンドを自分で組み合わせる
- バランスファンド(パッケージファンド)を選択する
確定拠出年金を運用するための商品は自由に選択することができます。また、長期的にリスクを抑えながら積み立てる場合は、複数の資産に投資をする「分散投資」が基本になります。確定拠出年金を投資信託で、なおかつ分散投資にて運用する場合は、単一資産のファンドを自分で組み合わせて運用するか、バランスファンドを選択するかの2択が基本になります。
バランスファンドとは、あらかじめ複数のファンドが組み合わされている投資信託商品のことで、バランスファンドに積立投資を行うことで、複数の資産に分散投資を行うのと同じ効果を得ることができます。
また、バランスファンドにも大きく2つの種類があります。
- 資産配分固定型
- 資産配分変更型
それぞれ詳しく解説していきます。
4-1.資産配分固定型のバランスファンドを購入する
資産配分固定型のバランスファンドとは、投資対象となる複数の資産の組み合わせや比率があらかじめ決められているファンドのことをいいます。先述したリスク許容度に対応して、資産の配分比率が異なるファンドが提供されていることが多い傾向です。
このファンドを購入するメリットは、あらかじめ決められた資産の配分比率をいかなるときでも自動的に維持するように管理してもらえるということです。
一方で、世界情勢や経済情勢によって相場環境が変動しても、配分比率を変更することがないため、投資対象の資産の価格が下落し続けても資産を持ち続けてしまい、リターンに影響するというデメリットがあります。
4-2.資産配分変更型バランスファンドを購入する
資産配分変更型バランスファンドとは、投資対象となる複数の資産への配分比率を、相場の状況に応じて変更するファンドのことをいいます。
どのような変更を行うかはファンドによって異なり、より多くのリターンを求めて配分比率を変更するファンドや、市場の混乱時に大幅な損失が発生するリスクを抑えることを目指すファンドなどがあります。
資産配分変更型のファンドを購入するメリットは、状況に応じて臨機応変に対応してもらえるという点です。そのため、先述したようなリターンの増加や損失のリスク回避を目指すことができます。
一方、定期的に配分比率が変更されるため、ベンチマークとなる指標や指数と異なる動きを見せることがあります。値動きや掛け金の運用状況が把握しづらいというデメリットがあるということを理解しておきましょう。
4-3.単一資産ファンドを組み合わせて購入する
バランスファンドを購入する以外に、単一資産に投資するファンドを自分で組み合わせて購入するという方法もあります。単一資産ファンドとは、国内株式や海外債券など、1つの資産に対して投資を行う投資信託のことをいいます。
確定拠出年金を運用する場合、選択する商品の数に制限は設けられていません。そのため、自分で組み合わせや配分を考えて、単一資産ファンドを複数購入することが可能です。
この場合、投資対象地域・投資対象資産・投資手法の3つのポイントについて検討する必要があります。
- 投資対象地域:どの国に対して投資をするのか
- 投資対象資産:どの資産に対して投資をするのか
- 投資手法:アクティブ運用かパッシブ運用か、配分固定か配分変更か
この方法のメリットは、自分の相場観に合わせて、自由に商品を選択できるということです。投資経験が豊富な人なら、バランスファンドよりも効率的に運用できる組み合わせを目指すこともできるでしょう。また、単一資産ファンドはコストが安いケースが多いため、全体的なコストを下げられるというのもメリットとなります。
一方で、一口にファンドといってもその数は多く、それぞれを比較検討しながら取捨選択する必要があります。そのため、組み合わせを決定して購入するまでに手間がかかるうえに、ファンドに対する深い知識が必要になるのがデメリットとなります。
また、相場が変動している場合でも、自分でファンドの組み替えなどに対応しなければならないというのもデメリットといえます。
まとめ
今回は確定拠出年金で運用できるファンドについて、種類別に特徴やメリット・デメリットを解説しました。
それぞれのファンドの特徴やメリット・デメリットをよく理解してからファンドを選択することが大切です。確定拠出年金は数十年にも及ぶ長期投資が前提となるため、自身の状況に合わせて適宜ポートフォリオを組み替えながら運用しましょう。
山本 将弘
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