2021年12月のFOMC、議事まとめと今後の株式市場への影響は

2021年12月14~15日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和の縮小終了が前倒しされることが決まりました。テーパリング(量的緩和の縮小)が終了すると、利上げの準備が整い、その後、利上げは数回にわたり行われます。

利上げは株式市場の混乱材料です。そこで今回は、議事の内容と、今後の株式市場への影響を、過去の利上げ時の株価の動きから予想します。

目次

  1. 12月FOMCの要点
  2. 利上げ幅と時期
  3. 利上げ後の株式市場の反応
    3-1.過去の利上げ:2004年6月~2006年6月
    3-2.過去の利上げ:2015年12月~2018年12月
  4. 利上げに備える
  5. まとめ

1 12月FOMCの要点

米連邦準備制度理事会(FRB)は、2021年12月14~15日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和の縮小(テーパリング)ペースを速めることを発表しました。

FRBは、月800億ドルの米国債と月400億ドルのMBS(住宅ローン担保証券)を購入していましたが、同年11月から毎月150億ドル(毎月国債100億ドル、MBS50億ドル)減額をしていました。

今回のFOMCでは、さらに減額ペースを速め、2022年1月から毎月300億ドル(米国債200億ドル、MBS100億ドル)の減額とすることを公表しました。今回の決定により、2022年6月に終了予定だったテーパリングが2022年3月に前倒しされることになりました。

一方、パウエルFRB議長は、量的緩和(資産購入)を続けながら利上げをするのは適切ではないとし、利上げの実施はテーパリング終了後の2022年3月以降となることを示唆しました。

【参照記事】ロイター「FRB、22年に3回利上げ想定 量的緩和終了3月へ前倒し

2 利上げ時期と利上げ幅

利上げ時期と利上げ幅を予想する際には、ドットチャートが参考になります。ドットチャートとは、FOMCの各メンバーによる政策金利(フェデラルファンドレート)の予想分布図のことです。

ドットチャートの中央値が示唆する利上げ回数は2021年9月時点では、2022年は0.5回、2023年と2024年が各3回でした。これに対し今回12月の会合では、2022年と2023年が各3回、2024年が2回という結果でした。

2021年12月時点の政策金利の誘導目標は0~0.25%です。つまり、ドットチャートから、政策金利の誘導目標が2022年末に0.75~1.00%に引き上げられ、2023年末には1.5~1.75%、2023年末は2.0~2.25%に上昇することを予想していることが読み取れます。

また、FOMC後の声明でパウエル議長は、これまで「高インフレは一時的」としていましたが、この文言が削除され「物価上昇がさらに続くリスクがある」とし、「インフレが定着しないような政策手段を講じる」としました。これは、インフレが収まらないようなら、利上げを進めるということを示唆しています。

【参照記事】ロイター「FRB議長、根強いインフレ高進のリスク高まる-政策調整し対応

3 利上げ後の株式市場の反応

2000年以降の米国の利上げは、2004年6月~2006年6月、2015年12月~2018年12月にかけての2期間に行われました。株式市場への影響をみると、長期的には株価は上昇したものの、利上げ後の株価は大きく売られる場面もありました。

3-1 過去の利上げ:2004年6月~2006年6月

2004年6月から2006年6月にかけて、政策金利は1%から5.25%に17回にわたり引き上げられました。

利上げ直前時の2004年6月29日を基準とし、利上げ開始後の主要株式指数(ナスダック、S&P500、ダウ平均、日経平均、TOPIX、マザーズ)の最低水準(終値)を検証しました。ナスダックとS&P500は、2004年8月12に安値を付けました。その他の指数については、2004年10月下旬~11月上旬にかけて安値を付けました。

下の表は、2004年6月29日の各指数価格、安値、下落率を示したものです。割高な指数ほど大きく下落したことがわかります。

株価指数水準:利上げの前日2004年6月29日を基準とした場合

項目 ナスダック S&P500 ダウ平均 日経平均 TOPIX マザーズ
利上げ前日 2,034.93 1,136.20 10,413.43 11,860.81 1,187.01 2,551.46
利上げ後の安値 1,752.49 1,063.23 9,749.99 10,659.15 1,073.20 1,394.91
下落率(%) 13.88 6.42 6.37 10.13 9.59 45.33

PER

項目 ナスダック S&P500 ダウ平均 日経平均 TOPIX マザーズ
利上げ前日 41 19 18 24 28 197
利上げ後の安値 30 16 16 14 18 62

下落率が最も高かった指数は東証マザーズで、45.3%下落しました。次は、ナスダックの13.8%です。利上げ前はマザーズのPERが197倍と他の指数を大きく上回っていたことが確認できます。ナスダックのPERは41倍から30倍に下落。ダウ平均やS&P500の下落率は6%台と、成長株中心のナスダック指数の半分以下でした。

3-2 過去の利上げ:2015年12月~2018年12月

2015年12月~2018年12月にかけて、政策金利は0.25%から2.5%に、9回にわたり引き上げられました。利上げ直前日を基準として、利上げ期間に付けた株式指数の安値と下落率を下表にまとめました。

株価指数水準:利上げの前日2015年12月15日を基準とした場合

項目 ナスダック S&P500 ダウ平均 日経平均 TOPIX マザーズ
利上げ前日 4,995.36 2,043.41 17,524.91 18,565.90 1,502.55 873.14
利上げ後の安値 4,266.84 1,829.08 15,660.18 14,952.61 1,196.28 667.49
下落率(%) 14.58 10.49% 10.64% 19.46% 20.38% 23.55%

PER

項目 ナスダック S&P500 ダウ平均 日経平均 TOPIX マザーズ
利上げ前日 32 19 16 20 16 99
利上げ後の安値 21 16 14 14 12 53

主要株式指数は、利上げ後の約2か月後(2016年2月11日~12日)に安値を付けました。下落率が最大だった指数は、2004年6月からの利上げ時期と同じでマザーズでした。米国の株式指数では、ナスダックがS&P500 やダウ平均の下落率を4%程度上回っていました。

PERは、マザーズが99倍→53倍、ナスダックが32→21倍に低下しました。

4 利上げに備える

上記の過去2回の利上げ時には、ナスダックやマザーズが大きく下落しました。ナスダックやマザーズの構成銘柄には成長株が多く、割高な水準で取引されているため、金融政策が引き締めに向かうと下落する可能性があります。

米国では2022年3月にテーパリングが終了することで、利上げ開始の準備が整います。利上げが開始した場合には、割高銘柄が大きく売られる可能性があります。

2021年12月20日時点のPERはナスダックが125倍、マザーズの予想PERは155倍(1株あたり利益がマイナスのため予想PERを使用)という高水準です。一方、日経平均やTOPIXは、PERが15倍前後と、過去2回の利上げ後の安値とほぼ同水準なので、下落した場合でも前回2015年の利上げ時のような大幅な下落にはならない可能性が高いと思われます。

2021年12月20日終値時点のPER

項目 ナスダック S&P500 ダウ平均 日経平均 TOPIX マザーズ
利上げ前日 125 25 19 16 14 予想155

このことから、割高なナスダックやマザーズは下落リスクが高いと考えられます。米国の利上げが開始される2022年3月以降までに、下落に備える必要があります。

まとめ

米国のテーパリングは2022年3月に終了し、その後、利上げが開始される予定です。政策金利は数回にわたり引き上げられ、最終的には2%台となりそうです。過去2回の利上げ時には、割高な成長株の下落が目立ちました。割高な成長株に投資している方は売却を考えたほうが良さそうです。

資金は成長株から大型株に向かうことが予想されます。利上げにより株式市場が混乱し、銘柄が割安な水準まで下落した時が投資のタイミングです。利上げによる株式市場の混乱は投資のチャンスとも言えます。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。