米ドルの下落トレンドはなぜ長期化する可能性があるのか?米大統領選前にシュローダーがレポート

英運用大手のシュローダーは日本時間の10月5日、「米ドルの下落トレンドはなぜ長期化する可能性があるのか?」と題したレポートを発表。グローバル・マルチセクター債券チームポートフォリオ・マネージャーのロビー・ブークフフェイン氏の「米ドルが下落トレンドをたどる可能性がある一方、ユーロには大きな上昇余地がある」という見解を紹介している。

新型コロナウイルスの世界的蔓延による混乱が深まった3月、安全通貨として認識されていた米ドルは、10営業日のうちに約10%急上昇した。4月以降、米ドルは下落に転じたが、感染第二波が本格化した場合、米ドルは安全通貨として再び上昇するリスクがある。しかし同債券チームは「3月以降の米ドル下落は序章に過ぎず、中長期的な米ドル下落トレンドが今後も継続する可能性がある」と見る。

直近発生した米ドル安は、新型コロナウイルス対策として実施された景気刺激策と関連しており、景気刺激策と同時に市場に注入された潤沢な流動性は、リスク性資産の急反発を招き、米ドル安も同時に引き起こしたと考えられる。加えて、パンデミックが深刻化して以降、アジアおよび欧州地域が、米国よりもウイルスの感染拡大防止に成功している点は、米ドル安の支援材料となっている。「つまり、米国以外の地域は、経済活動が米国より早く再開され、一足先に経済回復へと向かい始めているだけでなく、従来は米国が優位だった経済成長に関しても格差が縮小する可能性がある。これは、資金フローの観点から米ドル安、ユーロ高を引き起こす可能性がある」というのが債券チームの見立てだ。

さらに、第二波への懸念をはじめ、今後の経済回復軌道には不確実性と脆弱性が高いことから、現在世界の主要中央銀行と政府は、大規模な金融政策および財政出動が重要という認識を共有している。そのような中、欧州では、総額7500億ユーロにのぼる欧州復興基金の設立で合意され、経済下支え体制が整った点は、域内経済成長に対して構造的な改善をもたらすと考えられる。

欧州域内における経済統合が進むにつれ、経済が脆弱な参加国への支援が確実に実施されることとなり、最終的には、米国に変わって欧州域内資産クラス(つまりユーロ)が「低リスク」あるいは「安全資産」として認識される可能性がある。加えて、欧州復興基金は、域内経済のデジタル化やESGを推進する分野に対し支援も行うという野心的な目標も掲げている。「これらは欧州域内経済の中長期的な生産性の向上に寄与する可能性がある点も重要。このような動きは、ユーロに対しての支援材料となると考えられる」(債券チーム)。

11月に予定されている米国大統領選挙については「不確実性が高まっている。この不確実性は、米国資産および米ドルに対してマイナスの影響を与えるだろう。特に、民主党政権となった場合は、従来トランプ政権の下で拡大していた米国例外主義に対する疑問符が付く可能性があり、下落圧力が強まる可能性がある」と予想する。

中期的視点では、米ドルは構造的サポート材料を失っていくというシナリオもある。今後の米ドルの動向を分析する上で、債券チームは①米ドルの調達コストの人為的低②金利差によるキャリー妙味の消失③米ドル建て資産の相対パフォーマンス低下④FRB(連邦準備理事会)のバランスシート拡大と量的緩和――の4点を重視していく。また、長期的な米ドル安トレンドは「世界の基軸通貨として、米ドルの代替となり得る通貨の台頭が起こるか否かが、米ドルの本質的な価値に大きく影響を与える」と示唆した。

最後に、「仮に通貨ユーロを使用する欧州19か国の統合が更に進行した場合、ユーロの決済通貨としての機能が拡大する」と付言。「預金保険(金融機関破綻時の預金を保護する保険)や銀行セクターの強化において進展が見られた場合、ユーロが米ドルの基軸通貨としての役割を取って代わる可能性がある。今後5~10年の流れの中で、“脱米ドル化”の兆しを逃さないことは、米ドルの長期見通しを策定する上で重要」と締めくくっている。

【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

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