シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は12月8日、2022年の世界経済見通しを発表した。コロナ・ショックからの経済回復が継続し、堅調な経済成長となることが見込まれまるが、政府や中央銀行による大規模な支援策の効果が薄れるに伴い、「力強い回復をたどった21年の経済成長率は下回る」と予想。また、23年に向けインフレ率は落ち着いていくと見込んだ。
23年に向けてインフレ率は落ち着いていくことが見込まれるが、「その間、政策当局や投資家は難しい局面を迎える」と同社は予想。22年の世界経済成長率見通しは4.0%(2021年の世界経済成長率見通しは5.6%)、2022年の世界インフレ率は3.8%(2021年の世界インフレ率見通しは3.4%)を見込んでいる。
パンデミック後の経済回復について、同社は供給サイドのボトルネックによるサプライチェーンの問題や、企業が労働力不足に悩む労働市場といった問題について「インフレ率や賃金を予想以上に上昇させる」と懸念している。こうした不均衡な経済回復について、同社は米国消費者の支出パターンをたどることで読み取ろうと試みている。
例えば、現在の小売売上高(名目・実質)は、パンデミック以前の水準よりも10%以上上回る水準で推移しているすが、米国の消費者支出をみると、特にサービスセクターにおける実質的な支出は、パンデミック以前よりも2%程度低い水準で推移している。これは「消費の回復が、主に財セクター(非サービスセクター)に偏っており、これによりサプライチェーンやコモディティ市場に過度な圧力を与えている」状態を示す。
パンデミックに対応するために実施された大規模な財政政策(短期的に経済を支援するための政府支出や税政策)は、米国や英国ではすでに縮小が始まっている。同社は「今後も力強い政府支出が継続すると見込まれる一方で、全体的な財政政策は22年には縮小する」と予測。金融政策(中央銀行による経済刺激のための短期的な政策)の観点でも、米国と英国の支援の規模は縮小に向かっている。対照的に、ユーロ圏では、欧州の復興計画により、力強い財政支出の継続が見込まれる。一方で、中国については、22年、地方政府中心に財政刺激策が継続されることが見込まれるが、背景には、銀行が貸出を進めていることが挙げられる。
景気支援策は、経済回復が進めば終わる。しかし、同社は「経済成長を維持するためには、経済成長のドライバーが政府や中央銀行から民間セクターに移行する必要がある」と提言。そのためには消費者の動向が重要であり、消費者がロックダウン中に増加した貯蓄を支出に回すことが期待される。
同社は主要な経済圏ごとに、金融政策、財政政策、これまで控えられてきた消費需要の出現可能性をスコア付けした。米国や英国の政策は、21年のポジティブから、22年は中立のスタンスへ変化している。ユーロ圏については22年も引き続きポジティブ、中国の金融政策はポジティブへと変化している。
「米国・英国とユーロ圏・中国の相違は債券や為替市場に投資機会をもたらす。ただし、特に供給サイドのボトルネックや労働力不足が続くことに起因するインフレや経済成長を取りまく不透明感には注視が必要。賃金上昇は、コストや価格に波及し、予想されているよりも高いインフレや経済減速をもたらすスタグフレーションのリスクがある」と同社は注意を喚起する。
新型コロナウイルスのオミクロン株の出現は、パンデミックを巡る不透明さが残っていることを再認識させた。今後について「新たな行動制限や供給サイドの崩壊が再度発生するリスクは高まった。現時点では、マクロ経済への影響を判断するには不透明感が強すぎるが、スタグフレーションのリスクを高める要因となるだろう」という見方だ。
【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
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