中国で不動産投資大手「恒大集団」の経営危機が世界的に注目を集める中、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ(ナティクシスIM)は9月22日、「新興国への投資機会に関する考察:少なくとも今は、まず中国を見る必要がある理由」と題したコメントの日本語訳を発表した。同社ソリューションズのマルチ・アセット・ポートフォリオ・マネジメント責任者ジェームス・ボモント氏は中国における直近の規制強化に警戒しながらも「今日の中国に関する見解を有するためには『成長』と『規制改革』という2つの重要テーマに関するリスクと機会を理解する必要がある」と主張している。
「過去10年間の中国経済の絶え間ない成長により、新興国投資においては、ひとまず中国に対して十分な見解を持つことが必要」とボモント氏は前置きする。「成長」と「規制改革」については「中国の成長に障害があることは明らか。中国の年間GDP成長率は、2007年のピーク時の14%から一桁台に減速している。また、デルタ変異株による集団感染にも悩まされ、各地で封鎖措置が取られているため、パンデミックの『先入れ先出し』国である中国の経済回復の遅れはリスクになりつつある」と指摘する。
中央が進める規制や改革は「脅威」として「明らかなハードル。アリババやテンセントなど金融テクノロジー企業に始まった規制強化は、最近では教育分野にも及び、学習塾に非営利化を強要している」と、7月に発表された学外教育の負担を軽減する「双減」方針にも言及した。この影響で中国大手の学習塾「巨人教育」が経営難に陥るなど、それまで過熱していた教育産業に強い逆風が吹いている。
しかし「指数に占める中国の割合が大きいからといって、アクティブ投資のポートフォリオが中国中心となる必要はない」というのが同社の見解だ。さらに現在のパンデミックは「世界の経済とサプライチェーンに大きな影響を与えると考えられ、世界第2位の経済大国である中国とは異なる、固有の機会を生み出す」という可能性を示す。
投資対象としての新興国については「過去30年間、新興国市場は経済成長率で先進国を大きく上回っただけでなく、しばしば市場リターンでも先進国を上回ってきた。現在では輸出製造業から国内サービス業へと徐々に移行している。また、個人所得の増加、消費パターンの成熟化、より健康的で高度な教育を受け、よりコネクテッドな労働力の増加などの恩恵を受けている」と俯瞰。「パンデミックから脱却した世界は、それ以前とは多少違ったものになると思われる。少なくとも今は、中国の運命は重要な考慮事項だが、さらに先の将来を見据える準備ができている人は、短期的な逆風が長期的なチャンスをもたらすことに気づくだろう」と示唆した。

HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム

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