中国・恒大集団は「第二のリーマン・ショックにはならない」ナティクシスIMコメント

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経営危機に陥った中国恒大集団は海外から注視されている。万一破綻した場合、中国第2位の不動産デベロッパーだけに、2008年のリーマン・ショックのような世界的な負の連鎖が再来する可能性を危惧する声は少なくない。ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ(ナティクシスIM)は9月28日、中国恒大集団の経営危機とリーマン・ショックを比較し「第二のリーマン・ショックにはならない」とコメントを発表。ナティクシスIMでダイレクトインデクシング、オーバーレイ、マルチアセット・ポートフォリオ関連の運用ビジネスを担うナティクシスIMソリューションズの見解を示している。

中国恒大集団は、主に高所得者や中所得者を対象としたマンション販売しており、数年前からは自動車、ヘルスケア、メディア、金融など幅広い分野で事業を展開するコングロマリットへと進化している。このような状況の中、同社の負債は3000億ドル以上とされ、世界で最も負債を抱える不動産デベロッパーであることが報道で大きく取り上げられ、今後予定される借入金や社債の利払いの能力が懸念されている。しかし、同社は「恒大をめぐるニュースは突如現れたものではなく、市場では数ヶ月前から同社の苦境が知られており、それを反映して同社の株価は2021年3月以降、ほぼ一直線に下落している」と指摘。ほかにも、9月23日に利払い日を迎える22年償還の8.25%の社債が、5月末のほぼ額面通りの価格から、今月20日の時点で額面1ドルに対して24セントにまで急落し、25年償還の社債は7月の時点で50セントを下回っていた。これらのことから「デフォルトは何ヶ月も前から織り込み済みだった」と、経営危機の兆候が見えていたとする。

では、なぜ世界の市場は突然、恒大のことを気にし始めたのか。同社は「過剰反応が遅れて現れた」と見ている、恒大のデフォルト(債務不履行)の総負債額は2兆元(約3000億ドル)と小さくはないが、そのうち金融証券は接借入5730億元、880億ドルにとどまる。さらに業界の借入金の0.08%、オンショア債券全体の0.04%に過ぎず、決してシステミック・リスクではない。「これらの金融負債はグローバルな規模でシステミックな脅威を引き起こすには、あまりにも小さく、世界の投資家に広く分散している。負の連鎖は確かに起こるが大規模な連鎖が起こる状況ではない」と俯瞰する。

恒大が完全に破綻すれば、社会的不安が広範囲にわたって生じる可能性がある。同社は「金融システムではなく社会構造の経路にある」と指摘する。中国は、大部分が指揮統制型の経済で、中国のすべての不動産会社に資本市場が閉鎖されたとしても、規制当局は銀行に当該企業への融資を指示し、企業を浮揚させ、必要に応じてより長い猶予期間を与えることができる。不動産のような経済的に重要な戦略セクターでの貸し手のストライキは、簡単に言えば、政策上の誤り。中国共産党はそれを放置しなければならない。コントロールされたデフォルトを望むのであれば、そのように画策することもできるというのが、同社の見解だ。

中国共産党の動きについては「流動性をシステムに注入して、連鎖を抑制することが予想される。そしてリストラが行われ、株式の犠牲のもと、住宅購入者や労働者が報酬を得ることになるだろう。いずれにしても、社会不安を抑える必要がある」と予測する。

その上で、「これは第二のリーマン・ショックとは全く違う」と強調。理由として「中国のGDPの伸びが鈍化しても、米国の経済成長にはほとんど影響しない。米国の経済成長の70%は国内消費に依っており、米国は中国から商品を購入しているが、米国が中国への輸出に依存していることはほとんどない」点を根挙げる。

一方、欧州では、中国がデレバレッジを進め、不動産セクターへの依存から脱却することにより多少の打撃を受ける可能性がある。これはEUからの固定資産投資の減少と輸入の減少を意味するが「中国が経済の再構築を続けているため、恒大のデフォルトがなくても発生する可能性の高い二次的なもの」とする。

同社は恒大を中国における「いけにえの羊」に例え、中国当局の「模範を示して痛みを感じさせ、リスクを囲い込んでおく」という手法を喝破する。一方で、新型コロナウィルス関連の改善を筆頭に、堅調な消費者、堅調な企業のバランスシート、在庫の補充、新たな設備投資サイクルなど、成長のきっかけとなる要因を挙げ、「市場は驚くほどの回復力を維持しており、恒大はその状況を変えるものではない」と明言した。

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HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム

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