ウッドショックが与える株価への影響は?現状と今後を分析

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2020年、建築用木材の供給が需要に追いつかないことによって、木材価格の高騰「ウッドショック」が起こりました。これは、1970年代に起こった「オイルショック」になぞらえて、このように呼ばれています。この記事では、ウッドショックが起きた原因と、株価に与える影響について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2021年9月時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. ウッドショックとは
  2. ウッドショックの日本への影響
  3. ウッドショックが株式市場にも影響を与える
  4. 米国の木材価格は急落
  5. まとめ

1.ウッドショックとは

2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、米国の住宅建設が一時的に落ち込みましたが、2020年5月のロックダウン解除後から住宅の建築需要が増え、7月ごろから大きく増えるようになりました。これは、過去に例がない規模の財政出動と金融政策が取られた結果、米国ではリモートワークで自宅にいることが多くなった人たちが郊外に住宅を新しく建てたり、リフォームをする流れが進んだりしたことが原因です。

米国の住宅建築の需要が増えたことにより、世界的に木材の需要が逼迫。木材価格も上昇しました。そして、日本国内でも2021年になってから住宅建築に使われる製材や丸太の輸入価格が上昇し、国内の木材価格も上がっているのです。

2.ウッドショックの日本への影響

日本は木材自給率が4割程度であり、約6割を輸入材に頼っています。そして、新型コロナウイルスの影響で米国や中国の木材需要が高まったことから輸入材の調達が難しくなり、国内の住宅業界に大きな影響を与え始めているのです。

日本が輸入木材に頼らざるを得なくなったのは、国内の林業の衰退が原因です。戦時中に国内の森林はかなり伐採され、戦後も住宅需要の高まりにより伐採されました。木材は植林から伐採まで30年以上の時間が必要になるので、木材の需要は海外の輸入材に頼るようになっていったのです。

そして、新型コロナウイルスによる米国での住宅需要の高まりや、中国による木材需要の高まりによって、国際的な木材需要が急増しました。そして、日本も輸入材の調達が困難になってしまったのです。

3.ウッドショックが株式市場にも影響を与える

日本の住宅の約6割は、木造住宅と言われています(参考:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」)。ですから、輸入木材の調達が難しくなることや、木材価格が高くなるということは、木造住宅の供給不足や住宅価格の高騰、賃貸アパートの家賃上昇というところにまで影響がおよぶのです。

ウッドショックは、建築や不動産関連銘柄の業績や株価に影響を与えます。たとえば、木材などの住宅資材販売を手掛ける山大(7426)に買いが集まり、2021年4月23日に1,672円の高値をつけました。株価は、約2週間で倍になったのです。

また、MDF(中質繊維板)専業のホクシン(7897)も4月28日に高値264円をつけ、数日で株価が倍になりました。さらに、木材建材大手の住友林業(1911)も、4月30日に2,582円の高値をつけています。

また、住宅関連企業は、木材価格の上昇に関してIR(株主や投資家に対して投資判断に必要な情報を提供)を発表しています。住宅の分譲販売を行うオープンハウス(3288)は、木材価格の上昇が販売価格に与える影響は軽微と発表。また、三栄建築設計(3228)やケイアイスター不動産(3465)とともに一般社団法人日本木造分譲住宅協会を設立し、資材調達や国産木材の活用を進めると発表しました。

ただ、注文住宅会社のタマホーム(1419)は、7月12日に2021年5月期の決算を発表し、連結純利益が前期比40%増の71億円と、過去最高を更新しました。これにより、株価は19日に3,245円の上場来高値をつけています。新型コロナウイルスの感染拡大により在宅時間が増え、狭い賃貸住宅から持ち家を志向する人が増えました。ウッドショックによる木材価格の上昇よりも、戸建て人気による業績改善が好感されているのです。

4.米国の木材価格は急落

「ウッドショック」の起点となった米国では、木材先物の価格が急落しています。投機マネーの売りが進んだほか、木材価格の急騰を嫌気し、需要家が調達を控えたからです。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の木材先物価格は、8月にはいって600ドル前後で推移しています。5月には1,500ドルを突破し、例年の4倍以上の価格をつけましたが、足下では3分の1程度に下落しているのです。

主な原因は、米国での住宅着工の遅れです。住宅需要は旺盛なものの、住宅の壁に使う建材や合板の供給が追いつかずに着工が遅れ、ハウスメーカーなどが木材の住宅を控えました。その影響で価格が下落に転じると、需要家が様子見姿勢を強めて下げが加速したのです。

まとめ

米国では木材価格が下落していますが、米国での最高値の頃に契約した木材が日本に輸入されるのはこれからなので、国内の木材価格の上昇は続くとみられています。コンテナ船物流の混乱に伴う輸送費の高止まりも解消していません。日本の住宅コストの上昇圧力は、今後も続きそうなので注意が必要です。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011