オルカンとS&P500はどっちがお得なの?投資のプロが投資戦略と今後の見通しを解説

※ このページには広告・PRが含まれています

投資信託選びにおいて、オルカン(全世界株式)とSP500のどちらに投資するか悩む投資家は少なくありません。両者はそれぞれ特徴があり、投資家のリスク許容度や投資目的に応じて選ぶことが重要です。

本記事では、投資のプロである筆者が、オルカンとS&P500の特徴を比較し、投資戦略と今後の展望について詳しく解説します。

※本記事は2024年4月25日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. オルカンの特徴とメリット
  2. S&P500の特徴とメリット
  3. 投資戦略とリスク管理の重要性
    3-1.株式以外の資産にも目を向ける
    3-2.為替変動リスクを知っておく
  4. オルカンとS&P500の相関係数
    4-1.相関係数は2つのデータの関係性の強さを表す
    4-2.オルカンとS&P500には非常に強い正の相関関係がある
  5. 今後の見通し
  6. 投資は長期的な目線で

1.オルカンの特徴とメリット

オルカン、正式名称「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、日本を含む先進国と新興国の株式に幅広く投資するインデックスファンドです。その特徴は、地域分散によって特定の国のリスクを抑えつつ、新興国の高い経済成長も取り込めるところにあります。純資産総額は2024年4月に3兆円を突破し、低コストで手軽にグローバル株式に投資できる商品として人気が高まっています。


参照:eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)「月次レポート3月29日現在

組み入れ比率を見ると、2024年3月末時点で約6割が米国株式で、上位銘柄にはマイクロソフト、アップル、エヌビディア、アマゾンなどのハイテク大手が並びます。先進国の安定成長と新興国の高成長を同時に狙える点が、オルカン最大のメリットと言えるでしょう。

2.S&P500の特徴とメリット

一方、S&P500は米国の時価総額上位500社で構成される株価指数であり、これに連動する投資信託としては「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が代表的です。米国経済の強さを背景に、過去の実績リターンの高さが大きな特長となっています。純資産総額は2024年3月末に4兆円を突破し、インデックスファンド史上初の快挙を達成しました。


参照:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)「月次レポート2024年3月29日現在

S&P500は、情報技術セクターからエネルギー、金融、ヘルスケアまで幅広い産業をカバーしており、米国経済の動向を反映する重要な指標として世界中で注目されています。米国株式市場の成長を効率的に取り込める点が、S&P500投資の最大の強みだと言えます。

3.投資戦略とリスク管理の重要性

3-1.株式以外の資産にも目を向ける

オルカンは分散投資を重視し、新興国への投資にも積極的な人に向いている一方、S&P500は米国株中心で高いリターンを狙いたい人に適しています。ただし、どちらも株式100%投資である以上、ハイリスクであることは避けられません。

自身のリスク許容度を見極め、株式以外に債券やREITなども組み入れたバランスファンドの活用も検討すべきでしょう。

3-2.為替変動リスクを知っておく

オルカンもS&P500も、基本的に為替ヘッジを行わないため、為替リスクは大きな考慮点です。円高局面では投資価値が目減りするリスクがあることを理解しておく必要があります。長期投資家は為替変動リスクを念頭に置きつつ、分散投資の徹底でリスクの総量をコントロールするようにしましょう。

例えば、投資タイミングの分散も有効な手段の一つです。定期的に一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」を活用することで、価格変動の影響を平準化し、リスクの低減を図ることができます。その際は、非課税制度である新NISAを利用するようにしましょう。

4.オルカンとS&P500の相関係数は?

4-1.相関係数は2つのデータの関係性の強さを表す

相関係数は、2つのデータの関係性の強さを表す指標です。-1から1の間の値をとり、正の値であれば正の相関、負の値であれば負の相関があることを示します。絶対値が1に近いほど相関が強く、0に近いほど相関が弱いことを意味します。

例えば、相関係数が0.9であれば、非常に強い正の相関があり、一方が上昇すればもう一方も上昇する傾向が強いことを表します。逆に-0.9であれば、強い負の相関があり、一方が上昇すればもう一方は下降する傾向が強いことを示します。

なお、相関係数は因果関係を表すものではなく、あくまで2つのデータの連動性の強さを表します。適切に解釈することで、データの関係性を理解し、予測や意思決定に役立てることができます。

4-2.オルカンとS&P500には非常に強い正の相関関係がある

2023年4月から2024年3月までのオルカンとeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の相関係数は、0.998となり、非常に強い正の相関関係があることがわかります。つまり、一方のデータ(オルカン)が上昇すると、もう一方のデータ(S&P500)もほぼ同じように上昇する傾向が非常に強いことを示しています。

つまり、この期間(2023年4月から2024年3月)での値動きはほぼ同じで、S&P500がやや上回っているものの、どちらを購入してもパフォーマンスの差はあまりなかったということです。


※グラフはMUFGのデータを元に筆者作成

5.今後の見通し

IMF(国際通貨基金)によると、2024年と2025年の世界経済成長率は、2023年と同様に年3.2%と予測されており、成長が継続する見通しです。ですから、世界経済の成長の恩恵を享受できるオルカンへの注目度は今後も高まっていくでしょう。米国経済の底堅さを背景に、S&P500の人気も根強く続くと予想されます。

参照:IMF「世界経済見通し

6.投資は長期的な目線で

ただし、グローバル経済は常にリスクと隣り合わせであり、地政学リスクや金融市場の変調などに警戒が必要です。短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、投資は長期的な目で見て取り組むようにしてください。

自分のリスク許容度と期待するリターンを基にして長期的に投資判断を行うことが、賢明な投資家に求められる条件です。オルカンとS&P500は、世界経済の成長に対応する投資先ですが、特定のファンドに集中投資するのではなく、複数の投資先に分散して資金を配分するようにしましょう。

The following two tabs change content below.

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011