円安解消の動きはなぜ?日米の背景と今後の見通しは【2022年12月~2023年1月】

2022年は大幅な円安ドル高が急速に進行し、世界経済に大きな影響を与えました。年初は1ドル=105円前後だったドル円のレートも、一時は32年ぶりとなる節目の1ドル=150円を超えるなど、前代未聞の高騰をみせ、資産運用を行うにもかなり難しい年となりました。

また、22年末にかけては円安解消の動きが見られるなど、相場転換したともとれるような動きとなっており、23年以降の投資をうまく行うためにも、日米における金融市場の現状をしっかりと把握し、見通しを立てることがより一層重要となっています。

そこで今回は、円安解消の動きはなぜ発生しているのか、その日米における背景と、今後の見通しについて詳しく解説していきます。

※2022年12月28日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 円安の現状
    1-1.22年に生じた大幅な円安ドル高
    1-2.急速な円安ドル高が発生した原因
  2. 円安解消の動き
    2-1.日銀による事実上の利上げ
    2-2.FRBによる利上げ幅の縮小
  3. 今後の見通し
    3-1.日米金利差の縮小
    3-2.23年における円高転換
  4. まとめ

1.円安の現状

まず、円安ドル高に至った背景を振り返ってみます。

1-1.22年に生じた大幅な円安ドル高

冒頭でも触れた通り、22年は大幅な円安ドル高が生じた年となりました。

実際に、22年1月時点における為替レートは1ドル=105円前後だったにもかかわらず、そのわずか半年後の7月半ばには1ドル=140円にタッチしそうな水準にまで到達するなど、急激な円安ドル高の進行が見られました。

このような状況の中、政府・日銀は9月22日、1998年6月以来の約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施しました。

当時、日銀は金融政策決定会合において大規模な金融緩和を維持することを決定しており、利上げを進めるアメリカとの間に金融政策の違いが生まれたことから、円安・ドル高に拍車がかかっている状況でした。

これを受けて、政府・日銀は輸入物価が高騰することによって家計の負担が増加してしまう事態を防ぐため、円安を阻止する姿勢を示し、円買い介入としては最大額となる2.8兆円を投じました。

その後、円相場は一時的に5円ほど円高方向への動きを見せたものの、10月20日には外国為替市場における円相場が32年ぶりとなる節目の1ドル=150円を超えて急騰するなど、円買い介入後の140円台前半の高値から約10円も円安が進む形となりました。

しかし、円安はなぜ約30年ぶりという驚異的な水準にまで進行したのでしょうか。ここまで円安が進んだ主な原因としては、アメリカの利上げによって、日米間の金利差が拡大したことが挙げられています。

では、次の項で、急速な円安ドル高が発生した原因について詳しく見ていきましょう。

1-2.急速な円安ドル高が発生した原因

前述の通り、円安は、日本とアメリカにおける金融政策の違いによって生じています。

アメリカでは、新型コロナウイルスの蔓延によって労働者不足が深刻化しており、生産および物流機能の低下による物資不足や賃金上昇などから、インフレ率が上昇する状況が続いていました。

そこで、この歴史的とも言われる高インフレを抑制することを目的として、アメリカの中央銀行にあたる「FRB(連邦準備制度理事会)」が22年に入ってから急ピッチで政策金利の大幅な利上げを断行したというわけです。

その利上げ幅は3月から7月の間で2.25%にまで到達するなど、稀に見る徹底的な金融の引き締めが実施されました。

一方で、日本では新型コロナウイルス禍からの景気回復を下支えするために、日銀がこれまで通りマイナス金利政策を維持していました。

このような状況の中、日米の金利差の拡大がより顕著となり、その差は継続的に拡大していくという見方が強まったため、機関投資家は金利がより高いドルで資産運用を行った方が効率が良いと考え、円が売られてドルが買われることとなり、こうした動きの結果、円安が急激に進行したと考えられています。

2.円安解消の動き

以上のような円安ドル高の流れは、22年末あたりから変わり始めています。背景も含めて解説していきます。

2-1.日銀による事実上の利上げ

前述の通り、22年に入ってからというものの大幅な円安が続いていましたが、日本政府が9月と10月に24年ぶりとなるドル売り・円買い介入を実施したことから、ドル高・円安の勢いを抑制することに成功しました。

また、12月20日には日銀が「金融政策決定会合」において大規模緩和を修正する方針を決定し、従来0.25%程度としてきた長期金利の変動許容幅を0.5%にまで拡大することを発表しました。

これを受け、外国為替市場では円が対ドルで上昇を見せ、一時1ドル=132円台後半となるなど、8月中旬以来の4ヶ月ぶりとなる円高・ドル安水準を付けました。

日銀の黒田総裁はこれについて「市場機能の改善をはかる」と語っており、事実上の利上げが決行されることとなりました。

2-2.FRBによる利上げ幅の縮小

円安解消の動きが生じた背景には、11月10日に発表された米国の10月「CPI(消費者物価指数)」が予想を下回ったことも原因として挙げられます。

これによって、金融市場では先行きの「米連邦準備制度理事会(FRB)」の利上げ見通しの下方修正が行われ、その結果同日のドル円レートは、1ドル146円台前半から140円台前半まで、一時6円近くも円安修正が進行しました。

また、11日には一時138円台前半を付けるなど8月31日以来の高値となり、円は1週間で2008年以来となる大幅な上昇を記録することとなりました。

また、最近ではインフレ率が鈍化していることなどを受け、FRBが12月14日の「米連邦公開市場委員会(FOMC)」において、前回まで継続していた75ベーシスポイントの利上げ幅を5ベーシスポイントに縮小することを明らかにしました。

3月からの金融引き締め局面でFRBが利上げ幅の縮小を行うのは今回が初めてとなっており、このような背景から円安解消の動きが生じていると見られています。

3.今後の見通し

以上のような流れを受け、今後はどのように推移していくのかを考えていきます。

3-1.日米金利差の縮小

これまでの傾向を見ても、ドル円レートはアメリカの金融政策の見通し変化の影響をかなり大きく受けていることが分かります。

前述の通り、FRBが12月14日に利上げ幅を縮小したことなどから、アメリカでは23年中には利上げが終了するだろうという見方が強まっています。そうなった場合、日米金利差による円安ドル高圧力は大幅に低下すると予想されています。

また、日本においても事実上の利上げが発表されたことで、アメリカとの金利差が縮小し、為替相場の急激な変動を抑制する効果も大いに期待できると考えられます。

なお、今回の発表について日銀の黒田総裁は、あくまでも金融緩和の効果をより円滑にするためのものとしており、金融引き締めではないと強調しています。

3-2.23年における円高転換

22年は日銀による緩和継続で円売りの動きが強まったものの、今後はその反動による円買いが強まるのではないかという見方が広まっています。

また、今回日銀が長期金利の変動許容幅拡大を発表したことを受けて急速な円高が生じており、今後も引き続き円高方向に振れる可能性が高いと見られています。

なお、市場ではさらなる変動幅拡大や緩和路線の修正などを警戒する動きが強まっており、今回の発表を理由に流動性が低下するなど、反対に市場機能が低下する可能性も否定できないため、注意が必要です。

まとめ

22年は急速な円安が進行していましたが、年末あたりから円安解消の動きが出てきています。

今後は徐々に日米間の金利差が縮小していくという考え方が強まっており、23年には円高へと転換していく可能性も高いと見られているため、引き続き日米それぞれの金融政策に注目したいところです。

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中島 翔

中島 翔

学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12