米国株と日本株、どっちに投資する?2023年末までに仕込みたい日本株5社も紹介

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イールド・スプレッドとは、債券と株式の利回り格差を指し、割安か割高かを判断する指標の一つです。

米国では、連邦準備理事会(FRB)が2022年3月より利上げに転じたため、国債利回りが上昇し、イールド・スプレッドからみると、株式市場が割高だと判断できます。一方、日本市場では日本銀行がマイナス金利政策を継続しているため、イールド・スプレッドからみると株式市場に割安感があります。

本稿では、割安圏で推移している日本株の中から、投資のプロが5銘柄をピックアップして解説します。

※本記事は2023年11月15日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. イールド・スプレッドから見た日米の株価水準
    1-1.S&P500指数
    1-2.TOPIX
  2. 追い風が吹く日本株
  3. 年末までに仕込むべき日本株5選
    3-1.ブリヂストン(5108)
    3-2.住友商事(8053)
    3-3.クミアイ化学工業(4996)
    3-4.コマツ(6301)
    3-5.フェローテックホールディングス(6890)
  4. まとめ

1.イールド・スプレッドから見た日米の株価水準

イールド・スプレッドとは、10年国債と株式益利回り(PERの逆数)の差のことです。株式相場の水準と長期金利を比較し、割高・割安を判断するひとつの材料となります。

ここでは、米国S&P500指数とTOPIXのイールド・スプレッドから、足元の株式指数の状況を解説します。

1-1.S&P500指数

FRBが利上げに転じた2022年3月から、米国債利回りは上昇傾向にあり、株式益回りに近づいています。

利上げが開始された2022年3月の10年国債利回りは2.47%、S&P500指数の益利回りは4.99%で、イールド・スプレッドはマイナス2.5%でした。しかし、相次ぐ利上げで2023年11月3日時点の10年利回りが4.57%に上昇する一方で、S&P500指数の益利回りは4.99%と変化はありませんでした。その結果、イールド・スプレッドはマイナス0.42%に縮小しました。

イールド・スプレッドから判断すると、S&P500指数に割高感があります。今後、年金資金などを運用するファンドでは、ポートフォリオの株式割合を減らし、債券を増やす動きが予想されます。

1-2.TOPIX

日本銀行はイールド・カーブコントロールを徐々に緩めているものの、依然としてマイナス金利政策を継続しているため、10年国債の利回りは低水準で推移しています。

2023年11月3日時点の10年国債利回りは0.92%、TOPIXの益利回りは6.76%であり、イールド・スプレッドはマイナス5.84%です。

日米イールド・スプレッドを比較すると、S&P500指数に割高感がある一方、TOPIXには割高感はないと言えそうです。このことから、投資家は株式の配分を減らし、債券の配分を増やす動きが予想されます。

2.追い風が吹く日本株

米国株式市場に割高感があるなか、日本では2024年1月から新しいNISA制度が始まります。日本の家計金融資産残高は2,115兆円(2023年6月末)で、このうち52.8%相当の1,117兆円が現金・預金です。日本ではインフレも進行しているため、新しいNISA制度スタートを機に、現金・預金から株式や投資信託への資金移動が起きる可能性があります。

参照:日本銀行調査統計局「2023年第2四半期の資金循環

また、東京証券取引所は、PBR(純資産倍率)が低迷する上場企業に対して、低迷する株価の改善策を開示・実施するように求めていることも株式市場に追い風となるでしょう。

3.年末までに仕込むべき日本株5選

3-1.ブリヂストン(5108)

ブリヂストンは、世界のタイヤ市場シェアで、フランスのミシュランと1位2位を争う日本のタイヤメーカーです。

タイヤ市場は年平均4%成長が予想され、自動車タイヤの世界市場規模は2021年の1,447億ドルから2030年には2,198億ドルに達する見通しです。市場が拡大傾向にあるため、同社の業績拡大が期待されます。

参照:PR TIMES「自動車用タイヤ市場は2030年まで年平均成長率4%で推移する見込み

同社の株価*は5,782円で、予想PERが11.31倍、配当利回りが3.41%、PBRは1.19倍とTOPIXと比較し(予想PER13.97倍、配当利回り2.30%)、割安感があります。

*以下、株価は全て、2023年11月10日の終値。

3-2.住友商事(8053)

住友商事の株価は3,267円、予想PERが7.98倍、PBRが0.92倍、配当利回りが3.83%で、5大商社の中では相対的に割安感があります。

著名投資家バフェット氏は、2020年に5大商社株を5%取得したと公表した際に、9.9%まで投資する方針を表明しており、今後も株価動向が注目されます。

参照:ブルームバーグ「バフェット氏が日本株の追加投資検討と報道

3-3.クミアイ化学工業(4996)

クミアイ化学工業は、殺虫剤・殺菌剤・除草剤などの農薬の製造・販売等を行っている企業です。順調に売上高を伸ばしており、第74期決算(2022年10月期)の売上高は前年比22.95%増の1,453億円、純利益は163.2億円(前年比80.97%増)と好調でした。製品の値上げや、円安効果で北米向けの売上が伸びています。

業績の成長とともに配当金額も増加傾向にあり、2018年に10円だった配当金は2022年10月に22円に増額され、2023年10月には42円への増額が予想されています。

参照:クミアイ化学工業「IR情報

株価は1,110円で、予想PERが8.00倍、PBRが1.05倍、配当利回りは3.78%と魅力的な水準と言えそうです。

3-4.コマツ(6301)

コマツは、世界第2位の建設機械・鉱山機械メーカーです。売上高は3.54兆円(2022年4月~2023年3月)、純利益は3,263億円でした。前期比では、売上高が26.44%増、純利益は45.11%増と好調でした。

業績も順調で、2024年第2四半期決算は売上高が前年同期比12.61%増の1.822兆円、四半期純利益は26.43%増の2,055億円でした。

同社は配当性向40%以上を掲げており、純利益の増加は配当金の増額に繋がります。2023年度の配当予想は144円で、2022年比5円増が予定されています。

参照:コマツ「株主・投資家情報

株価は2023年9月19日に高値4,511円を付けた後、下落基調にあり同年11月10日時点で3,640円です。予想PERが10.13倍、PBRが1.20倍、配当利回りは3.96%です。

3-5.フェローテックホールディングス(6890)

フェローテックホールディングスは、半導体ウエハ・半導体設計図向け部品を製造・販売しています。同社の半導体製造装置向け真空シールは、世界シェアトップ(市場の約7割)で、半導体製造において重要な役割をしています。

参照:フェローテックホールディングス「世界トップシェア

株価は2,815円で、予想PERが6.71倍、PBRが0.72倍、配当利回りは3.55%です。

4.まとめ

イールド・スプレッドから判断すると、米国のS&P500指数に割高感がある一方、日本株のTOPIXには割安感があります。

また、日本では、2024年1月から始まる新しいNISA制度や、東京証券取引所がPBRの低迷する上場企業に対し、株価の改善を求めていることなどを背景に、現金・預金から株式市場に資金が流れる可能性があります。是非参考にしてみてください。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。