積立投資は、資産形成をするうえで便利な投資手段の一つです。積立投資のメリットは、毎月少額から投資することで将来大きな資産を形成できることです。積立投資を始めることで、老後への準備もできます。
一方でデメリットもあるため、双方を考えた上での運用が必要になります。今回は、積立投資のメリット・デメリット、積立投資ができる投資の種類と始め方について解説します。
目次
- 積立投資とは
1-1.積立投資の種類
1-2.積立投資のメリット
1-3.積立投資のデメリット - るいとう(株式累積投資)
2-1.「るいとう」とは
2-2.「るいとう」の始め方
2-3.「るいとう」特有のメリット・デメリット - 積立投信
3-1.「つみたてNISA」と「iDeCo」のメリット
3-2.「つみたてNISA」と「iDeCo」のデメリット
3-3.積立投資はiDeCoから始めると無難
3-4.その他の積立投信 - まとめ
1.積立投資とは
積立投資とは、決められた金額を個別株や投資信託に定期的に投資する方法です。継続して投資することで、将来大きな資産を築ける可能性が広がります。
例えば、毎月1万円を30年間積み立てた場合の投資金額は360万円ですが、仮に年3%で運用できた場合は30年後に582万円、5%では832万円、10%なら2,260万円になります。
毎月1万円を運用利回り3%で40年間積み立てた場合は、元金480万円、40年後の金額は926万円、5%なら1,526万円、10%の場合は6,324万円になります。
このように積立投資は、期間が長いほど、運用利回りが高いほど、計算上は「将来受け取れる金額」が大きくなるという特徴があります。
1-1.積立投資の種類
積立投資を行うには、「るいとう(株式累積投資)」、「つみたてNISA」、「iDeCo」などの手段があります。それぞれにメリットとデメリットがありますので後述します。
1-2.積立投資のメリット
積立投資の大きなメリットは、少額から始められることです。金融機関・サービスによって最少投資額は異なりますが、ネット証券では毎月100円から積み立て可能な商品もあります。また、ひとつの銘柄に定期的に一定の金額を投資することで、期間分散ができ、同じ数量を買い続けるよりも1単位当たりの平均取得価額が結果的に割安となりやすいメリットがあります。
1-3.積立投資のデメリット
積立投資のデメリットは、積立を始めたことで満足してしまいかねないということです。ただ積立購入を続けていればいいというものではなく、こまめに運用報告書をチェックすることが大切です。ファンドがどんな銘柄を購入しているかなど詳細な情報が確認でき、銘柄入れ替え等の参考になります。
このほか、元本割れの可能性があることや手数料がかかることもデメリットです。
2.るいとう(株式累積投資)
以下、積立投資の主な選択肢について解説します。まずは株式累積投資、通称「るいとう」について説明します。
2-1.「るいとう」とは
「るいとう」とは、毎月定期的に一定の金額分の特定株式を購入する方法です。るいとうを使うと、少ない金額でも株式投資を始めることができます。
日本では、株式投資をする場合、一般的に100株が最低投資単位(単元株)に定められています。そのため、株価5,000円の株式を購入する場合、投資金額は50万円(100株×5,000円)となり、大きな資金が必要です。
「るいとう」では、月当たりの購入金額を決めて(月1万円以上1,000円単位など)、株を積み立てることができます。時が経ち単元株(最低取引単位)に積み上がれば、株主総会への出席が可能となり、株主優待も受けられます。
2-2.「るいとう」の始め方
まずは「るいとう」を取り扱っている証券会社に口座を開く必要があります。「るいとう」の取り扱いのある証券会社は、SMBC日興証券、auカブコム証券(プチ株積み立て)などです(2020年10月時点)。銘柄は証券会社によって異なるため、投資したい銘柄を扱っている証券会社に口座を開く必要があります。口座開設後は、銘柄、毎月の買付日と金額を決めます。
2-3.「るいとう」特有のメリット・デメリット
メリットは少額から株式投資ができる点です。コツコツ積み立てた結果、単元株に積み上がれば株主総会に出席することもできます。デメリットは、取り扱っている証券会社が少ないこと、単元株を持つまで原則として株主優待を受けることができないこと、投資対象銘柄が限られていることが挙げられます。
3.積立投信
次に、投資信託の積立投資(積立投信、投信積立)について、代表的な手段である「つみたてNISA」と「iDeCo」を解説します。
3-1.「つみたてNISA」と「iDeCo」のメリット
少額投資非課税制度(つみたてNISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)の対象商品は、金融機関によってラインアップが違います。運用の幅を広げるためには、ラインアップの多い金融機関を選びましょう。両商品は、ともに税制面で優遇措置が受けられることが主なメリットです。
つみたてNISAは、非課税上限枠が年間40万円で、20年間適用されます。20年間積み立てた場合、非課税枠の総額は40万円×20年間で800万円となります。また、運用益についても非課税で、投資期間中であれば、いつでも自由に売却することができます。
iDeCoの場合、会社員の拠出限度額は月1.2万円~2.3万円になります。所属する会社の年金制度により金額が異なるため注意が必要です。60歳まで利用可能で、投資金額は月5,000円以上です。メリットは、積立額全額が所得税控除の対象となるため、投資金額を所得から控除できることです。なお、法律改正にともない、2022年5月から、60歳以降も国民年金の加入を前提に加入年齢が65歳まで延長されることになりました。
3-2.「つみたてNISA」と「iDeCo」のデメリット
つみたてNISAのデメリットは、投資対象銘柄が限られることです。銘柄は金融庁が定めた一定の条件をみたす158銘柄(2020年9月末時点)の投資信託やETFです。個人で投資するには十分な本数ではありますが、世の中に存在する投資信託の一部のみに絞り込まれているため、人によっては不十分と感じる部分も出る可能性はあります。
iDeCoのデメリットは、原則60歳まで引き出すことが出来ないこと、上限年齢が60歳のため60歳に近い年齢の方ほどメリットを享受できないことです。また、iDeCo加入時に2,829円が必要で、そのほかに毎月の口座管理料が必要です。
口座管理料の最低金額は月171円ですが、金融機関によってまちまちです。なかには月500円を超える金融機関もあり、毎月支払う金額のため、注意が必要です。毎月5,000円を積み立てた場合、口座管理料が500円なら積立金額の10%に相当します。始める前に口座管理料を月171円に設定している金融機関を選ぶようにしましょう。
3-3.積立投資はiDeCoから始めると無難
初心者の方や手元資金が少ない方は、積立金額を所得から控除することができるiDeCoから始めるのが現実的です。iDeCoは毎月口座管理料が必要である点をデメリットとして挙げましたが、口座管理料を上回る節税効果があるためです。
口座管理料は年間で「事務手数料1,260円」と信託銀行に支払う「資産管理手数料792円」を合わせた2,052円(月ベースでは171円)が必要です。なおiDeCoは証券会社、銀行、郵便局、信用金庫、生命保険、投信会社などで申し込み、運用を始めることができます。
一方で、資金に余裕がある場合は、つみたてNISAを始めるのが良いでしょう。iDeCoとつみたてNISAを上手に活用することで、節税しながらの資産運用が可能です。
3-4.その他の積立投信
この他にもいろいろな積立投信が販売されています。
たとえば、ロボアドバイザーのWealthNavi(ウェルスナビ)では、定期的に一定額を(1万円以上)世界中に分散投資するETFに積み立てることができます。最低投資金額1万円が必要ですが、お任せ運用で手軽に始められます。ウェルスナビでは、NISAの投資枠を活用して投資ができる「おまかせNISA」というサービスも提供されています。
まとめ
積立投資はできるだけ若い年代で始めるのが得策です。若い世代の方は、つみたてNISAやiDeCoなどにより税制優遇のメリットを大きく享受することができるためです。
それぞれの積立投資商品のメリット・デメリットを把握したうえで投資を始めることで、年金不安の解消にもつながるでしょう。長期的な資産形成のため、事前によく調べてから積立投資をスタートし、継続的に軌道修正を図りつつ運用してください。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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