2021年2月に、日経平均株価が1990年8月以来の3万円の大台を回復しました。株式市場が活気づいてきたことで、投資を始めたいと考えている方も多いと思います。
様々な投資商品があるなかで、初心者の方や投資リスクの高さを懸念している方には積立投資信託が向いています。定期的に投資信託を購入することで、将来的にまとまった資産を築くことも可能です。
今回は投資信託を積立購入するメリット・デメリットについて説明します。
目次
- 投資信託とは
- 投資信託を積立購入するメリット
2-1.少額から投資が可能
2-2.ドル・コスト平均法が利用できる
2-3.市場の動きを気にする必要がない - 投資信託を積立購入するデメリット
3-1.販売手数料や運用コストが必要
3-2.元本割れの可能性がある
3-3.短期間で大きな利益が期待できない - 投資信託の積立を始める
4-1.金融機関を選ぶ
4-2.投資信託の種類と運用スタイル
4-3.銘柄を選ぶ - 投資信託の積立購入に適した証券会社
5-1.SBI証券
5-2.松井証券
5-3.楽天証券 - まとめ
1 投資信託とは
投資信託とは、多くの人が資金を出し合って、その資金を専門家(ファンドマネージャー)が国内外の株式や債券等に投資・運用する金融商品のことです。
投資信託を購入する方法は、一括して購入する方法と積み立てて購入する方法がありますが、初心者の方にはリスク分散の観点から積立購入の方がより適していると言えます。積立購入とは、定期的(毎月・毎週)に決まった金額の投資を行うことで長期的に資産を形成する投資方法です。
2 投資信託を積立購入するメリット
主なものに以下3点があります。
2-1 少額から投資が可能
一回の積立金額は金融会社によってまちまちですが、ネット証券では最低100円から(多くの金融機関では1,000円から)購入することができます。少額から投資が可能なため、複数の投資信託に分散投資することでよりリスクを下げた運用ができます。
2-2 ドル・コスト平均法が利用できる
ドル・コスト平均法とは、価格が毎日変化する金融商品を一度に購入するのではなく、一定金額を定期的に購入することで平均買付単価を抑える方法です。一回の投資金額が決まっているので、購入対象の投資信託の価格が高いときには購入できる投資信託の金額は少なく、価格が安いときには購入できる投資信託の金額は大きくなるため、平均単価を引き下げることができます。
株式市場は2000年10月のハイテクバブル崩壊、2008年9月リーマン・ショックなど暴落を何度も経験していますが、その都度克服してきました。2021年2月現在では、冒頭の通り日経平均株価が3万円を超えるなど活況を呈しています。
2-3 市場の動向を気にする必要がない
積立投資は個別株投資などと比較し、日々の市場価格や経済の動きを気にする必要がありません。一定の金額を機械的に投資するからです。
個別株投資の場合、市場や経済動向を注視する必要がありますが、投資信託は運用担当者が市場状況にあった運用(銘柄の入れ替えや資産配分の見直し)をするため、こうした動向を気にする必要はありません。
3 投資信託を積立購入するデメリット
一方でデメリットもあります。
3-1 販売手数料や運用コストが必要
投資信託のデメリットとしては、手数料や運用コストがかかる点が挙げられます。購入時には販売手数料が必要で、日々の運用には運用手数料(信託報酬)、解約時には解約手数料が必要となります。なお販売手数料が無料のノーロード投資信託もあります。
運用手数料は、日々の価格にすでに含まれているため、別途支払う必要はありません。投資信託によって運用手数料は異なり、年率0.05~3%程です。手数料は安い方が良いと考えがちですが、手数料が高くても高収益をあげている投資信託もあるため、一概に手数料が安い方が良いとは言えません。過去の運用実績と運用手数料を考慮したうえで、銘柄を選ぶようにしましょう。
解約手数料は、運用期間の途中で積立投資信託を解約・換金(売却)した場合に必要な手数料のことです。銘柄によってまちまちなので、購入する前に確認するようにしましょう。
3-2 元本割れの可能性がある
投資信託は預金のように元本が保証されていません。株式と同じ投資商品のため、元本を下回ってしまう可能性もあります。
積立投信信託は、小口投資が可能なため、複数の銘柄に分散投資することでリスクを回避することが簡単にできます。資金に余裕があれば複数の投資信託に投資するようにしましょう。
3-3 短期間で大きな利益が期待できない
積立投資は、資産や購入時期を分散して投資する形となるため、個別株投資のように短期間で価格が2倍、3倍になることはありません。大きく損する可能性が下がるのと同時に、大きく資産を殖やせる可能性も相応に下がるということです。
4 投資信託の積立を始める
実際に投資信託の積立購入を始めるための手順を解説します。
4-1 金融機関を選ぶ
積立投資信託は、証券会社のほか、郵便局や銀行・信用金庫等で始めることができます。証券会社は心理的なハードルが高くて行きにくいと思われる方は、お近くの郵便局や普段から利用している銀行で始めてみるという選択肢もあります。
金融機関にはネット型と対面型があります。ネット型は、担当がつかないことが多いため、投資アドバイス等を受けることはできません。しかし販売手数料が無料(ノーロード)の投資信託が多かったり、別途株式投資を行う場合には対面型に比べて手数料が安価だったりすることから、ネット証券を利用する人は多くいます。
一方、対面型の場合は担当者に相談をすることができます。手数料面ではネット証券に劣る点もありますが、運用方法や商品選びを相談しながら決めたい方には、対面型の金融機関が向いています。
4-2 投資信託の種類と運用スタイル
投資信託には大きく分けて、株式の組み入れが可能な株式投資信託と、株式を一切組み入れない公社債投資信託の2種類があり、それぞれメリット、デメリットがあります。
株式投資信託は大きな収益が期待できますが、元本割れのリスクがあります。一方、公社債投資信託は大きなリターンは期待できませんが、元本割れのリスクが低い商品です。しかし、世界各国の金利水準が歴史的な低水準である現在、公社債投資信託はリターンの観点からおすすめできません。
一方で、株式投資信託は将来的に大きな資産を形成する可能性があります。IMF(国際通貨基金)によると、2021年の予想経済成長率は日本の3.1%に対し、世界経済の成長率は5.5%です。日本より世界全体の経済成長率が高いため、全世界の株式を対象とした投信信託を中心に投資することで経済成長の波に乗れる可能性が高まります。
投資信託には様々な運用スタイルがあります。市場の動き(指数)に連動したインデックス運用、運用担当者が銘柄を精査し投資をするアクティブ運用のほか、組み入れる銘柄の属性によって分けるグロース型(成長株に投資)やバリュー型(市場で割安とされる銘柄に投資)などがあります。
市場に連動した収益を目指したい方はインデックス運用を、より高い収益を求めたい方はアクティブ運用を選ぶのが適当です。アクティブ運用を選択する際は、運用手数料がインデックス運用よりも高く設定されているため、過去の運用成績を調べて手数料が運用成績に見合っているかを確認しましょう。
4-3 銘柄を選ぶ
積立投資信託の対象銘柄は数が多いため、銘柄を選ぶ際には証券会社や、投資評価会社のモーニングスターなどが提供している検索機能を使うと便利です。
初心者の方が検索する際は、買付手数料、償還までの期間、純資産額、ファンドの分類といった項目で絞り込むと良いでしょう。例えば、SBI証券の検索機能で積立投資信託対象銘柄を買付手数料“無料(ノーロード)”、償還までの期間“無期限”、純資産額“50億円以上”、ファンドの分類“国際株式”という条件で検索すると、65銘柄が抽出されます(2021年2月19日時点)。
検索した銘柄を投資指標(運用成績とシャープレシオ)で並べ替えると、さらに銘柄を絞り込むことができます。シャープレシオとは、リスクに対するリターンの割合を示した指数で、数値が大きいほど効率的に収益を上げている投資信託といえます。
5 投資信託の積立購入に適した証券会社
積立投資信託を始めるなら、金融機関のなかでも、銘柄数が豊富で積立金が最低100円から可能なネット証券が利用しやすいと言えます。ここではネット証券で積立投資信託の購入に向く主な3社を紹介します。
5-1 SBI証券
SBI証券は口座開設数トップクラスの人気ネット証券で、積立投資信託の取扱銘柄数は2,521銘柄、最低100円から積立が可能です。銘柄検索機能が充実しており、使いやすい証券会社です。ノーロード投資信託の取扱も多いため、手数料を安く抑えやすいのも強みです。
5-2 松井証券
松井証券には、投信工房という簡単な8つの質問に答えるだけで、ロボアドバイザーが最適な投資信託の組み合わせを提案する機能があり、銘柄選びの参考になります。投資信託を100円から積み立てることができることや、マネープランニングサポートという電話での相談も可能なので初心者の方にも利用しやすい証券会社です。
5-3 楽天証券
楽天証券の積立投信信託の取扱い銘柄数は2,557銘柄と多く、最低100円から積立が可能です。楽天ポイントを貯めたり使ったりできることや、投資信託以外の商品やツールも充実していることから、SBI証券と並んで人気のある証券会社です。
まとめ
投資信託を積立購入する大きなメリットは、少額から投資をはじめることができる点です。加えて長期間にわたり積み立てることでリスクを抑えながら将来的に大きな資産を築くことも可能であるため、資産運用が初めての方でも始めやすい運用方法です。
関心のある方は、投資信託を積立購入するメリット、デメリットを考慮し、どのような投資信託を購入するか、どの証券会社で口座を開設するかなども含め検討を進めてみてください。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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