長期投資で失敗しないためには?運用前の準備と運用中のポイント

長期投資は時間をかけることで投資のリスクを軽減し、堅実に収益を狙う手法です。短期の投資に比べて大きな失敗をしにくい特徴がありますが、必ず成功するとはかぎりません。この記事では、長期投資の失敗例や原因、成功させるためのポイントなどを解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年8月15日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. よくある長期投資の4つの失敗例
    1-1.失敗例1.多少の値上がりで売却する
    1-2.失敗例2.値下がりして慌てて売ってしまう
    1-3.失敗例3.毎月分配型の投資信託を買い続ける
    1-4.失敗例4.積立の銘柄を頻繁に変える
  2. 長期投資で失敗してしまう3つの原因
    2-1.投資や商品についての知識不足
    2-2.資金計画がずさん
    2-3.無計画に始めてしまう
  3. 運用前の準備とは?
    3-1.投資の目的と目標を決める
    3-2.ポートフォリオを決める
    3-3.運用に回す資金を確保する
  4. 長期投資を成功させるためのポイント
    4-1.取引コストを意識する
    4-2.いきなり大金を投資しない
    4-3.利益が出てもすぐに売らない
    4-4.一時的な損失は気にしない
    4-5.積立投資を活用する
    4-6.取引判断にマイルールを決めておく
    4-7.運用の終了期間が近づいたら出口戦略を考える
    4-8.iDeCoやつみたてNISAを活用する
  5. まとめ

1.よくある長期投資の4つの失敗例

最初に長期投資で多くの人がやりがちな失敗例を紹介します。

1-1.失敗例1.多少の値上がりで売却する

買付けた株式や投資信託が値上がりしたからとすぐに売却してしまうと、さらなる資産形成の芽を摘んでしまうことになります。長期投資は短期の値動きは気にせず、値上がりした運用商品が値下がりしたとしても保有を続けるやり方です。

同じ商品を長く保有しているうちに運用益が元本に組み込まれ、徐々に元本が膨らみます(複利運用)。元本が大きくなると得られる運用益も大きくなります。多少の値上がりで売ってしまっては、元本を育てられないことを理解しましょう。

1-2.失敗例2.値下がりして慌てて売ってしまう

反対に保有する運用商品が値下がりしたときに慌てて売ってしまうのも、長期の資産形成にはマイナスです。運用商品は右肩上がりに値上がりし続けることは、ほぼありません。10年以上の長期で運用していると、リーマンショックのような大きな経済危機が起こりえます。

そのような局面も想定して運用するには、一時的な値下がりを気にする必要はありません。どうしても値下がりが気になる人は、あまり頻繁に値動きを追わないほうがよいでしょう。

1-3.失敗例3.毎月分配型の投資信託を買い続ける

長期投資に毎月分配型の投資信託は適していません。なぜなら、分配金を支払うと投資元本が減り、複利効果が薄れるからです。分配金を受け取らずに再投資する方法もありますが、税金を引かれてからの買付となります。

長期投資をするなら最初から分配金の支払い頻度の少ない投資信託を選んだほうが、投資効率がよくなります。

1-4.失敗例4.積立の銘柄を頻繁に変える

積立投資では、選んだ商品の運用成績が思わしくないからと頻繁に銘柄を変えると、積立のメリットが享受できなくなります。積立投資は長期でよく活用され、同じ銘柄を定期的に同じ金額分買い付ける方法です。

先月2万円だった投資信託が1万円に値下がりすると、同じ金額で2倍の数量が買えるようになります。つまり、値下がり時は同じ銘柄を多く買い付け、平均購入単価を下げるチャンスなのです。長期的に成長の見込めない銘柄でなければ、値動きを気にせずに買い続けることが大切です。

2.長期投資で失敗してしまう3つの原因

長期投資に失敗してしまうのはなぜでしょうか。原因を確認しておきましょう。

2-1.投資や商品についての知識不足

長期投資は短期投資に比べて取り組みやすい方法ですが、知識不足で始めると失敗につながりやすくなります。まずは基本的な投資の仕組みを理解し、長期投資に向いた運用商品を調べます。運用で損失を被っても保証はされないことを認識し、納得のいく商品選択ができるようにしましょう。

2-2.資金計画がずさん

資金管理がルーズな人は、長期投資での成功は難しくなります。長期投資の資産を安易に引き出しては意味がありません。投資に回すお金と生活費などの区別を明確にする習慣が大切です。

2-3.無計画に始めてしまう

「周りの人から勧められてなんとなく儲かりそうだから」と無計画に投資を始めると、資産形成につながらない可能性があります。目的や目標を決めなければ、少し利益が出た程度で引き出してしまう場合もあるでしょう。それではまとまった資産形成につながりません。

長期投資は、目的や「いつまでにいくら」という目標を設定してから始めましょう。

3.運用前の準備とは?

ここでは、長期投資の成功のための事前準備について解説します。

3-1.投資の目的と目標を決める

長期投資を始めるなら、「65歳までに老後資金を2,000万円準備する」のような目的と目標を明確にしましょう。このような具体的な目標がないまま投資を始めると、ついつい途中でお金を引き出してしまうなど挫折につながりやすくなるからです。

たとえば、子どもの教育費として準備中の資金であれば、よほどのことがないかぎり生活費の不足分などには充てないでしょう。長期投資にかぎらず、投資では目的や目標をはっきり決めることで、目的外の引き出しを抑制できます。

3-2.ポートフォリオを決める

長期投資を始める前に、目的に応じたポートフォリオを決めましょう。ポートフォリオとは、分散投資のための金融資産の組み合わせのことです。長期投資ではリスクを軽減するために、分散投資を行います。

リスク・リターンの関係

たとえば、日本の公的年金の管理・運用を行っておいるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオは以下のようになっています。

項目 割合 期待リターン 標準偏差(リスク)
国内債券 25% 0.7% 2.56%
外国債券 25% 2.6% 11.87%
国内株式 25% 5.6% 23.14%
外国株式 25% 7.2% 24.85%

出典:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)「基本ポートフォリオの考え方」

このポートフォリオの1年間の期待リターンは4.0%で、中程度のリスク・リターンです。

表の数字から、リターンが高ければリスクも高くなることがわかります。つまり、リスクを抑えたいなら債券の割合を増やし、リターンを狙いたいなら株式の割合を増やすように調整するのです。

ポートフォリオが決まると、具体的な運用商品も決められるようになります。

3-3.運用に回す資金を確保する

まとまった余裕資金で金融商品を買付ける、または毎月1万円ずつのような積立投資をするなど、いずれの場合も資金を確保しなければなりません。通常の買付の場合、当面の生活費や使う予定のあるお金を除いた資金であることが条件です。

積立の場合は家計を見直して、毎月どの程度投資に回せるか確認しましょう。数十年に及ぶ投資が続けられるように、無理のない金額の設定が重要です。

4.長期投資を成功させるためのポイント

長期投資を始めてから、資産形成につなげていくポイントを解説します。

4-1.取引コストを意識する

長期投資では取引コストを抑えていくことが、収益に影響します。運用成績をコントロールすることはできませんが、取引にかかる手数料などのコストは意識して低くできます。

たとえば、信託報酬が年に1%の投資信託を100万円分保有していると、毎年1万円かかり、10年なら10万円です。このコスト分は運用の利益を出さないと、元本割れしてしまいます。そのため、似たような商品であれば、コストが少ないほうを選ぶとよいでしょう。

4-2.いきなり大金を投資しない

投資経験のない初心者の方が長期運用を始める場合、最初からあまり大きな金額を投資しないようにしましょう。運用商品には値動きがあり、始めてすぐに大きく値下がりする可能性があります。人によっては精神的にダメージを受け、投資をやめたくなってしまうかもしれません。

長く続けるには、少額から始めてリスクがどういうものかを体験し、徐々に金額を増やしていくとよいでしょう。

4-3.利益が出てもすぐに売らない

長期投資で予定している投資期間中は、運用商品に利益が出ても売却しないようにしましょう。保有している商品が値上がりすると、値下がりする前に利益を確定したくなる人も少なくありません。

短期投資ではタイミングを図って売却すべきですが、長期投資は運用益を投資元本に組み入れてさらなる利益を得る方法です。短期的な値動きにはとらわれず、値上がりしても保有し続けましょう。

4-4.一時的な損失は気にしない

反対に値下がりしても、慌てて売ることは避けるべきです。ただし、値下がりの原因を調べ、将来的に回復する見込みがないと判断した場合は売却もやむを得ないでしょう。

金融商品の値動きには浮き沈みがあり、ずっと右肩上がりであり続けることはほとんどありません。数十年間も値上がりし続ける商品は皆無といえます。投資とはそういうものだと認識し、一時的な損失を受け入れることが長続きのポイントです。

4-5.積立投資を活用する

積立投資は長期投資と親和性の高い方法であり、まとまったお金のない人でも取り組めます。

毎月1万円ずつのような定時定額の投資は「ドルコスト平均法」といい、リスクの軽減に有効です。値動きのある金融商品を一定の金額ずつ買付けると、購入できる数量が毎回変動します。単価が高いときは購入できる数量が少なくなり、値下がりすれば多く買付けられるわけです。

よって、長期の積立投資では値下がりは数量を増やすチャンスとなります。値動きを気にせずに淡々と続けていくと、長期的にはまとまった資産形成に近づけるのです。

4-6.取引判断にマイルールを決めておく

買付や売却の取引判断については、ルールに則って行うとよいでしょう。投資において感情に流されたり、勘に頼ったりすると失敗につながりやすくなります。あらかじめルールを決めておき、いかなる場合もルールに則った取引をすると、致命的な失敗をしにくくなります。

4-7.運用の終了期間が近づいたら出口戦略を考える

長期投資では短期的な値動きを気にする必要はありませんが、運用が終わりに近づいたら資産を減らさない方法を考える必要があります。

たとえば、子どもが18歳になるまでに教育資金を準備しようとしていて、途中まで順調に運用できていたとします。しかし、終了間際にリーマンショックのような経済危機が起きると、資産が大きく減ってしまうかもしれません。

運用の終わりが近づいたら、ポートフォリオのリスクを下げるなどの対策が必要となります。

4-8.iDeCoやつみたてNISAを活用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)は掛金を自分で運用する、公的年金の上乗せになる制度です。つみたてNISAは、積立投資で得た利益に税金がかからない制度です。いずれの制度も税の優遇が受けられるため、目的に合えば積極的に活用するとよいでしょう。

まとめ

長期投資は計画や自分の決めたルールに則って続けていくと、時間の経過に従って資産の成長が期待できます。途中で大きな経済変動が起き、一時的に資産が目減りしても淡々と続けることが大切です。

将来の受取額は確定できませんが、コツコツ続けることで堅実な運用ができるようになり、まとまった資産形成につながるのです。

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松田 聡子

松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント