拡大するインド市場で注目の銘柄は?インドに詳しい投資のプロが解説

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インドの主な証券取引所はインドナショナル証券取引所とボンベイ証券取引所の2カ所で、上場銘柄数はインドナショナル証券取引所が2,736銘柄、ボンベイ証券取引所には、3,915社が上場しています。なお、上場企業の多くは両市場に上場しています。

インド株式市場で時価額が最も大きな会社はリライアンス・インダストリーズの19.7兆ルピー(約35.5兆円)で、日本市場で時価総額2位の三菱UFJフィナンシャル・グループ(約19.2兆円)を上回る規模です。

本稿では、インドに詳しい投資のプロである筆者が、年々拡大する株式市場の中でも特に押さえておきたい5銘柄を解説します。是非参考にしてみてください。

※株価は全て2024年5月末時点です。
※2024年6月3日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. インドの株式指数
    1-1.Nifty50指数
    1-2.センセックス指数
  2. インド投資で押さえておきたい5銘柄
    2-1.リライアンス・インダストリーズ
    2-2.タタ・コンサルタンシー・サービシズ
    2-3.HDFC銀行
    2-4.マルチ・スズキ・インディア
    2-5.インフォシス
  3. まとめ

1.インドの株式指数

インド株式市場の代表的な株式指数は、インドナショナル証券取引所が算出しているNifty50指数とボンベイ証券取引所のセンセックス指数です。それぞれ見ていきましょう。

1-1.Nifty50指数

Nifty50指数は、インドナショナル証券取引所に上場する銘柄のうち、時価総額や流動性などを基準に選定されたインドを代表する50銘柄で構成されています。

構成銘柄のうち、時価総額が最も高い銘柄はリライアンス・インダストリーズの約20兆ルピー(37.8兆円)、最も低い銘柄はアポロ・ホスピラルズ・エンタープライズの約8,580億ルピー(1.6兆円)です。

1-2.センセックス指数

センセックス指数はボンベイ証券取引所上場企業の中から、時価総額や流動性などを基準に選定されたインドを代表する30銘柄で構成されています。すべての構成銘柄がNifty50指数に組み入れられています。

構成銘柄で時価総額が最も高い銘柄は、リライアンス・インダストリーズの約20兆ルピー(37.8兆円)、最も低い銘柄はインダスインド銀行の約1.1兆ルピー(2.1兆円)です。

2.インド投資で押さえておきたい5銘柄

インド株式市場で押さえておきたい5銘柄を解説します。

2-1.リライアンス・インダストリーズ

リライアンス・インダストリーズは、炭化水素開発、石油化学品、石油・ガス開発、再生可能エネルギーなどの事業を手掛けるインド最大のコングロマリットです。株式時価総額は、インド最大の約20兆ルピー(37.8兆円)で、日本株式市場第2位の三菱UFJフィナンシャルグループの約19兆円を大きく上回る規模です。

2023年度の売上高が9.74兆ルピー(約18.3兆円)、純利益は7,408億ルピー(約1.39兆円)です。業績は好調で、売上高は前年比23.5%増、純利益は9.20%増でした。

セグメントは、小売り、デジタル・サービス、石油化学、メディア・ビジネス、石油ガスの5つで、石油化学部門が売上の約60%を占めています。石油・ガス部門は前年度の売上寄与度が1.6%と低いものの、売上高は120%増加しました。次が小売り部門で30.0%増加しました。コアビジネスの石油化学部門の売上は、前年比18.7%増となりました。

株価は2,860.80ルピー、予想PERが23.91倍、配当利回りは0.35%です。騰落率は5年間で137%、1年間が28%で、センセックス指数(5年83%、1年18%)やNifty50指数(5年86%、1年21%)と比較し、アウトパフォームしています。

参照:リライアンス・インダストリーズ「Annual Report 2022-23

2-2.タタ・コンサルタンシー・サービシズ

タタ・コンサルタンシー・サービシズはITサービス企業で、企業向けコンサルティングを行っています。

2023年度の売上高は前年比7.1%増の2.45兆ルピー(約4.6兆円)、純利益は前年比8.9%増の4,609億ルピー(約8,666億円)です。収益のうち、金融関連企業への売上が約38%と最大。地域別では、北米向けが約51%を占めています。製造業向け売上が前年比10.6%増と好調で、金融関連向け売上成長率5.6%を大きく上回っています。

株価は3,670.95ルピー、予想PERは25.88倍、配当利回りは1.50%です。時価総額は、インド市場第2位の約13.2兆ルピー(約24.8兆円)です。騰落率は5年間で85%、1年間が14%で、センセックス指数(5年83%、1年18%)やNifty50指数(5年86%、1年21%)でした。

参照:タタ・コンサルタンシー・サービシズ「Annual Report 2023-2024

2-3.HDFC銀行

HDFC銀行はインド民間銀行の最大手で、金融サービスの複合会社で、子会社を通じて銀行業から保険、投資信託を提供しています。

インド経済の成長とともに、預金残高が増加傾向にあり、2023年度の預金量は18.8兆ルピー(約35.4兆円)で、前年比20.8%増です。預金残高は、りそなホールディングスと同水準です。税引き後利益は4,410億ルピー(約8,292億円)で、前年比19.3%増でした。支店数は2022年比1,479増の7,821支店となり、ATMは19,727台が設置されました。

時価総額は約11.6兆ルピー(約21.8兆円)、株価は1,531.55ルピー、予想PERは16.15倍、配当利回りは1.27%です。

騰落率は5年間で30.9%、1年間がマイナス3.3%、センセックス指数(5年83%、1年18%)やNifty50指数(5年86%、1年21%)を大きく下回っているため、株価のフォーマンスは今一つと言えそうです。同社の株式は米国ADRでも取引されており、日本からも投資可能な銘柄です。

参照:HDFC銀行「Annual Report 2022-23

2-4.マルチ・スズキ・インディア

マルチ・スズキ・インディアは自動車メーカで、1981年に日本のスズキとインドの国営企業との合併会社として設立されました。インド市場のシェアは41.7%で国内1位(2023年度)、販売台数は176万台で、2位の現代自動車(61.4万台)を大きく上回っています。

インドでは、自動車販売台数が増加傾向にあり、2023年度は過去最多の421.8万台でした。背景には、経済成長に伴い中間所得層の所得が増加していることが挙げられます。インドの一世帯当たりの乗用車保有率は8.5%と低く、自動車市場には拡大余地がありそうです。

参照:ジェトロ「成長するインド乗用車市場、2023年度は過去最

2024年度決算は、売上が前年同期比8.6%増の2.1兆億ルピー(約4.01兆円)、純利益は同64.1%増の1,320億ルピー(約2,480億円)でした。

株価は12,399.307ルピー、予想PERが25.26倍、配当利回りは1.010%です。時価総額は約3.8兆ルピー(約7.3兆円)とスズキの時価総額約3.6兆円の2倍超の規模です。

騰落率は5年間で84.7%、1年間が31.9%で、センセックス指数(5年83%、1年18%)やNifty50指数(5年86%、1年21%)を上回っています。

参照:マルチ・スズキ・インディア「PowerPoint Presentation

2-5.インフォシス

インフォシスは、インドを代表するITコンサルティングやソフトウエアサービスを提供する企業です。サービスとしては、アプリケーション開発、製品の共同開発など多くの企業に提供しています。また、世界56カ国で事業展開しているグローバル企業です。

2023年度(2023年4月~2024年3月)の売上は前年比1.9%増の185.6億ドル(約2.8兆円)、純利益は同6.2%増の31.6億ドル(約4,940億円)です。売上高の内訳は、金融サービスが50億ドルと全体の約27%を占め、次が小売りの27億ドル(約14%)です。

株価は1,406.90ルピー、予想PERが22.20倍、配当利回りは2.70%です。株式時価総額は約5.84兆ルピー(約10.97兆円)で、時価総額は伊藤忠や東京海上と肩を並べる水準です。

騰落率は5年間で116.8%、1年間が11.9%で、センセックス指数(5年83%、1年18%)やNifty50指数(5年86%、1年21%)でした。5年間の騰落率はインデックスを上回っているものの、ここ1年ではセンセックス指数と同水準とはいえ、Nifty50指数を下回っています。なお、同社の株式は米国ADRでも取引されており、日本からも投資可能な数少ないインド銘柄の1つです。

参照:インフォシス「IT Services
参照:インフォシス「ifrs usd earnings release

3.まとめ

インド株式市場は外国人に開放されていないため、日本人がインド株に投資するには、投資信託に投資することになります。

今回紹介した5銘柄は日本では聞きなれない企業かもしれませんが、インドを代表する企業ばかりです。HDFC銀行とインフォシスが米国市場に上場しており、日本からも直接投資が可能です。

インド株式市場は、インド経済の成長とともに成長余地があるため、長期投資を検討してみてはいかがでしょうか。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。