2024年6月現在、各国の金融政策に違いが出始めています。
本稿では、プロトレーダーの筆者が、米ドル・日本円・ユーロ・オセアニア通貨のポイントおよび、テクニカル分析から見たトレード戦略を解説します。注目の通貨ペアを3つ紹介するので、是非トレードの参考にしてみてください。
※本記事は2024年6月3日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 各通貨のポイント
1-1.米ドルはインフレと景気の動向に注目
1-2.日本円は利上げで一時的に円高圧力が掛かる可能性も
1-3.ユーロは短期的なショートカバーの巻き戻しが発生する可能性が
1-4.豪ドル・NZドルはロングの候補に - プロトレーダーの筆者が注目する通貨ペアを3つ解説
2-1.AUDUSD
2-2.EURGBP
2-3.EURGBP - まとめ
1.各通貨のポイント
1-1.米ドルはインフレと景気の動向に注目
まずは米ドルの動向を確認しましょう。ポイントは、インフレと景気の動向です。
2024年の年初には年間7回ほど予想されていた利下げは、インフレ抑制がなかなか進まず、一時は0回まで減少しました。足元では、利上げの可能性が否定されたため、金利の上昇は一旦落ち着いており、年1回ほどの利下げが織り込まれています。
個人消費も落ち込んできており、労働市場も軟化してきていることから、金利は低下方向に向かうと考えられるでしょう。
1-2.日本円は利上げで一時的に円高圧力が掛かる可能性も
日本円は円安が継続しています。円安抑制のために日本政府が再度為替介入を行うとの予想がある一方で、アメリカのイエレン財務長官は、十分なコミュニケーションをとった上で行われるべきとの見解を示しており、日本政府単体での介入は難しい状況です。そのため短期的に円安トレンドが反転することはないでしょう。
参照:ロイター「為替介入、「通常」手段とすべきではない=米財務長官」
ただし、円安抑制のために金融政策は変更しないとしていた日銀のトーンが変化しており、7月あたりに一回程度利上げをする可能性があります。
一度の利上げで5円程度の円高圧力が掛かるとの試算もあるため、日銀の利上げが織り込まれ始めた場合には短期的に円高方向に振れることが予想されます。一方で、円安トレンドが継続する可能性は高く、長期投資の場合はスワップポイントを考慮しても、日本円はショートでの取引が有利な展開が続くでしょう。
1-3.ユーロは短期的なショートカバーの巻き戻しが発生する可能性が
次にユーロを解説します。ECBは2024年6月に利下げを行う可能性が高く、すでに年間に3回程度の利下げが織り込まれています。
ただし、欧州圏のインフレ率が底堅くなってきている点には注意が必要です。これまでは、ECBが予想以上にインフレを抑制できたことや、ドイツやフランスの景気悪化を示す指標が出てきたことから利下げが織り込まれてきましたが、足元はややタカ派になる可能性が出てきています。利下げしていく通貨としてショート(売り)目線での取引をする場合には、短期的なショートカバーの巻き戻しが発生する可能性に注意しましょう。
今後は、ECBの金融政策のスタンスが維持され、ハト派になるのかがポイントになるでしょう。
1-4.豪ドル・NZドルはロングの候補に
次に豪ドルとNZドルについて解説します。オセアニア通貨は、ロング目線での取引を検討できるでしょう。
オーストラリアは、インフレ警戒感がまだまだ根強い状況が続いています。2024年はインフレ率があまり低下しておらず、更なる利上げを行う必要が出てくる可能性があります。
また、オーストラリアの最大の貿易相手国である中国の不動産市況が改善しつつある中、コモディティを輸出する先でもあるため、追い風となります。豪ドルは強含みの状況が続くでしょう。
中央銀行は、2025年半ばまで政策金利を据え置く姿勢を見せており、他の国が利下げに動いた場合に豪ドルは相対的に強くなりやすくなるでしょう。
NZドルもオーストラリアと同様に、高インフレの状況が続いています。サービス物価や非貿易財のインフレが高い状況となっており、生活必需品も高止まりしていることから、インフレを抑制するために政策金利を据え置く方向です。
2024年5月の政策会合においても、根強いインフレを抑えるため政策引き締めをより長く続ける必要性が示唆されています。政策金利をすぐに利下げ方向に持っていく可能性は低いでしょう。
参照:ブルームバーグ「NZ中銀、政策金利7会合連続据え置」
2.プロトレーダーの筆者が注目する通貨ペアを3つ解説
2-1.AUDUSD
まずAUDUSDを解説します。ファンダメンタルズの環境から、オセアニア通貨ロング・米ドルショートが夏場までワークしやすいと考えます。
※図はTradingView[PR]より筆者作成
チャート上の青色の水平線を見ると、AUDUSDは0.6600付近が短期的なサポートとなり、上値切り下げ型で揉み合いになっています。一方で、200日移動平均線が上向きになりつつあること、また50日移動平均線をゴールデンクロスし全体的に底堅くなりやすい動きになってきていることから0.6700を超えて上昇するかがポイントとなります。0.6500台半ばで一旦損切りを入れつつ、ロング目線でのトレードを行うことも選択肢の一つでしょう。
2-2.NZDUSD
次にNZDUSDを解説します。
※図はTradingView[PR]より筆者作成
NZDUSDは、日足では0.6100を超えて横ばいとなっているものの、テクニカルを見ると日柄調整を行っています。一度急激に上昇して節目を突破したので、休憩中と考えるのが自然でしょう。
そのため4月頃の高値である0.6080をサポートラインとして、ロングを検討するのがいいと考えています。まずは0.6120付近でロングエントリーを行い、0.6070あたりで損切りを入れつつ、0.6200超えを狙っていくトレード戦略は一つの選択肢となるでしょう。
2-3.EURGBP
最後にEURGBPを解説します。
※図はTradingView[PR]より筆者作成
週足のチャートを確認すると、大事なサポートラインで現在攻防を続けていると分かります。ここを抜けると次は0.8300付近まで真空地帯になるため、ユーロ売りを継続したい場合は、戻り売り戦略を検討することができます。
ショートエントリーを行う場合は、まずはサポートラインを抜けた後の反発が弱いことを確認しましょう。ただし、EU圏内でインフレ率が低下しないまま利下げ期待が後退すると、一時的にユーロ高に振れる可能性がある点に注意が必要です。
また、EURGBPは値幅が小さいため、損切りを入れつつ、ゆっくりとトレードすることができるでしょう。
3.まとめ
本稿では、2024年6月時点の各地域のマーケットポイントと、プロトレーダーの筆者が注目する通貨ペアについて解説しました。
どの通貨ペアを取引する場合でも、リスク管理を徹底して、無理のないトレードを行いましょう。
中島 翔
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