株式投資を始めるにあたり、まず投資目的を明確にする必要があります。それは、投資目的によってリスクの許容度が異なるためです。今回は、投資目的別に株初心者にも投資しやすい銘柄のポイントを解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年3月22日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
1.投資目的別の銘柄紹介
人生にはいろいろなお金がかかります。主な費用に、“子どもの教育費”、“住宅購入”、“老後の生活費”があり、これを3大費用と言います。ここでは、各費用別の投資銘柄の選び方や、投資銘柄、各銘柄のポイントを説明します。
1-1.子どもの教育費
子どもの教育資金のためには、長期投資に適した銘柄を選ぶ必要があります。投資期間は、大学4年までと想定した場合、0歳から22歳の22年間程度です。進学先が私学か国公立か、また大学では学部が文系、理系かによっても必要な資金が大きく違います。学校の学費だけではなく、塾や習い事のための費用も必要になります。
資金が必要な時期がある程度決まっているため、本来は株式で運用するよりも、元本割れのリスクが少ない保険商品や社債が適しています。株式で運用する場合は、倒産リスクが低く、大型銘柄で乱高下が激しくないディフェンシブ銘柄を選ぶようにしましょう。
商社5銘柄の格付け
銘柄 | R&I格付け |
---|---|
伊藤忠商事 | AA- |
三井物産 | AA- |
三菱商事 | AA- |
丸紅 | A |
住友商事 | A⁺ |
5大医薬品メーカーの格付け
銘柄 | R&I格付け |
---|---|
武田薬品工業 | A |
アステラス製薬 | AA |
第一三共 | AA |
大塚ホールディングス | AA- |
エーザイ | AA- |
銘柄のポイントは以下の通りです。
- 伊藤忠商事:エネルギー・化学品、食料の売上比率が50%
- 三井物産:生活産業と化学品の売上が全体の53%
- 三菱商事 :コンシューマー産業の売上が全体の40%
- 丸紅 :食品と農業関連事業が全体の約65%
- 住友商事 :金属、資源・化学品、生活・不動産の3分野が事業の柱。他社とくらべ、事業のバランスが良い。
- 武田薬品工業:シャイアー社を買収したことによりグローバル化が進み売上収益の50%が米国(日本18%)と海外比率が圧倒的に高い。日本では製薬業界売上シェアNo1の26%。
- アステラス製薬:日本第二位の製薬会社。がん泌尿器分野の薬品開発に定評。
- 第一三共:4年連続で医療用医薬品の売上シェアNo1を達成。
- 大塚ホールディングス:医薬品分野とニュートラシューティカルズ分野(ポカリ等)の2本分の柱をもっている。
- エーザイ:神経系、消化器系に強み、抗認知症薬・抗潰瘍薬では、グローバル市場での展開を果たしている。
1-2.住宅購入費
投資目的が住宅購入費の場合には、まず、住宅を購入する時期と住宅価格を想定する必要があります。住宅を購入する際には、一般的に頭金を購入時までに準備する必要があります。頭金の相場は、一般的に住宅価格の10%から20%程度です。5,000万円の家を購入する場合は500~1,000万円程が目安となり、この金額を一括で支払う必要があります。
頭金を準備するためには、定期預金、財形貯蓄制度を利用する方が一般的です。投資商品で頭金を準備する場合には、株式市場で個別銘柄に投資するよりも、バランス型の投資信託が適当です。なかでも、国内債重視型のファンドは相性が良いと言えます。
東京海上・円資産バランスファンド年1回決済型は、日本債券が70%、日本株式が15%、日本REITが15%を基本としたファンドです。大きな収益は期待できませんが、元本リスクを抑えたファンドです。
1-3.老後の生活費
老後資金のための投資は、株式中心の運用が適しています。倒産リスクの低い企業を中心とした銘柄を選択するようにしましょう。優良銘柄を見分けるツールとして、格付け機関が発表している格付けを参考にすると良いでしょう。格付けとは、企業の倒産リスクをアルファベットで表記したものです。最も倒産の可能性が低い企業がAAA(格付け機関によって表示は異なる)です。
債券市場は、倒産確率の低いBBB以上の銘柄と、倒産確率の高いBB以下に銘柄が区別され、BBB以上の銘柄を投資適格債といい、BB以下をジャンク債と呼んでいます。株式投資においても、高格付けの銘柄に投資することで倒産リスクを軽減することができます。老後資金のための投資には、より堅実な銘柄を選択するために最低でもA格以上、できればAA格以上の銘柄に投資することを推奨します。
主な格付け機関は、日本では格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)、米国ではムーディーズとS&Pです。日本企業の格付けを調べる場合は日本の格付け機関を参考にすると良いでしょう(R&Iの格付けと定義は下記表参照)。各企業の格付けは、各格付け機関のホームページで確認することができます。
R&Iの格付けを参考にすると、トヨタ自動車、富士フィルム、日本電産、村田製作所などがAA以上で、老後資金の対象銘柄として挙げられます。また、これらの企業には卓越した技術力があり、今後も企業成長が期待できるため堅実な銘柄と言えます。
各銘柄のポイントは以下の通りです。
- トヨタ自動車:世界的な自動車メーカー。売上高は30兆円と日本のトップ企業。世界中に生産・販売網がある。ハイブリッド車や水素燃料車など最先端技術をいち早く実現する技術力を保持。
- 富士フィルム:医用画像情報システム、偏光板保護フィルム、インスタントカメラの販売台数などで世界シェア1位。フィルム用化学物質の技術を医療分野、半導体、IT分野にも活用するなど、臨機応変に対応する力が強み。
- 日本電産:永守CEOが率いる世界No1の総合モーターメーカー。モーター需要は、電気自動車をはじめ、家電、住設機器などの市場に拡大。
- 村田製作所:セラミックコンデンサ世界No1メーカー。電気自動車や宇宙機器にも同社製品が使用されており、同社部品がなければ電子機器が動かせないと言われる。
4銘柄の格付け
銘柄 | R&I | JCR |
---|---|---|
トヨタ自動車 | AAA | AAA |
富士フィルム | AA | – |
日本電産 | AA- | AA- |
村田製作所 | AA+ | – |
上記銘柄以外にも有力な銘柄は国内外問わず様々にあります。注意点は、倒産確率が高いBB以下の銘柄には投資しないことです。
R&I 格付けの定義
格付け | 定義 |
---|---|
AAA | 信用力は最も高く、多くの優れた要素がある |
AA+ | |
AA | 信用力は極めて高く、優れた要素がある |
AA- | |
A+ | |
A | 信用力は高く、部分的に優れた要素がある |
A- | |
BBB+ | |
BBB | 信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある |
BBB- | |
BB+ | |
BB | 信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある |
BB- | |
B+ | |
B | 信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある |
B- | |
CCC+ | |
CCC | 信用力に重大な問題があり、金融債務が不履行に陥る懸念が強い |
CCC- | |
D | 発行体のすべての金融債務が不履行に陥っているとR&Iが判断する格付 |
2.そのほかの投資目的
そのほか、投資目的別の投資手法を見ていきます。
2-1.株主優待
株主優待とは、企業が株主に対し、自社製品やサービス券などを提供するもので、企業によって導入している企業としていない企業があります。食品メーカーなどは自社製品を投資家に配り、商品を株主にアピールすることで売上増に繋げている企業もあります。
株主優待は非課税のため、投資家にとってもメリットがあります。QUOカードのような現金に近い優待も課税されないためです。優待銘柄ばかり投資をしている方も存在します。
株主優待のある銘柄は優待が廃止になった場合、株価が急落するリスクがあります。優待を維持できるか財務内容を随時確認する必要があります。また、株主優待は日本の制度で海外には同様の制度はありません。
銘柄としては日本取引所グループがお得です。同社の株主優待は保有年に応じてQUOカードがもらえます。同社の3月19日時点の終値は2,520.5円のため、優待がもらえる100株の投資額は25.205万円です。配当金額が52円なので配当金額は100株につき5,200円です。同社株を3年保有した場合の優待はQUOカード4,000円です。配当金と優待の合計額が9,200円のため、投資利回りは3.9%となります。
2-2.配当金
高配当目的の投資の場合は、高配当が継続できるかどうかがポイントです。高配当銘柄として、三菱商事や住友商事などの商社、NTTなどの通信会社、銀行などが挙げられます。高配当銘柄は減配が決まると株価が急落します。高配当銘柄として知られる日本たばこ産業の株価は、減配の発表を機に大幅に下落しました。配当利回りだけではなく、企業業績が直近の変動が少ない銘柄を選ぶようにしましょう。
2-3.短期売買
短期売買により短期間での利益確定が目的の場合は、IPO(新規公開株式)投資を検討してみると良いでしょう。IPOはなかなか当選しないため、複数の証券会社に口座を開設し、IPOを申し込む必要があります。当選したら上場日に寄付きで売却しましょう。
IPOに申し込む際に、申し込み額相当の資金(前受金)を入金する必要がある証券会社と、必要ではない証券会社があります。前受金が必要のない岡三オンライン、DMM株、松井証券、野村證券、SBIネオトレード証券などを中心にIPOに申し込み、資金に余裕があれば主幹事会社に申し込みましょう。
まとめ
今回は、投資目的別の投資銘柄の選び方、投資銘柄、各銘柄のポイントを説明しました。人生における3大費用は“子どもの教育費”、“住宅購入”、“老後の生活費”ですが、個々のライフプラン、ライフステージによって重点を置く費用は違うはずです。それぞれの投資目的に合った銘柄を選び、賢く資産運用をしましょう。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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