インフレと株価の関係性は?2022年以降の投資に向いた銘柄の特徴も

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インフレとは、物価が継続的に上昇することです。そして、インフレと株価には密接な関係があります。

2022年2月時点の経済情勢においては、インフレに関する議論が多く交わされており、株式投資家にとっても投資判断がシビアな局面です。この記事では、インフレになる仕組みと、どのような銘柄が注目されるのかについて解説します。

目次

  1. インフレとは
  2. 長期的に株はインフレに強いが、短期的には下落することも
  3. 金利と物価
  4. 米国のCPI(消費者物価指数)に注目
  5. グロース株とバリュー株
  6. スタグフレーションに注意
  7. まとめ

1.インフレとは

インフレとは「インフレーション」の略で、サービスやモノの値段である物価が継続的に上昇することをいいます。1個100円だったリンゴが数ヶ月後に120円になり、1年後には150円、2年後には200円になるといった現象です。

上記の例でいうと、200円で2つ購入できたリンゴが、2年後には1つしか買えなくなってしまうのです。つまり、物の値段が上がることによって、お金の価値が下がる現象ともいえます。通常、物価上昇が2年以上続く状態のことを「インフレ」と呼んでいるのです。

2.長期的に株はインフレに強いが、短期的には下落することも

日銀(日本銀行)やFRB(米連邦準備制度理事会)などの中央銀行は、物価を安定させながら経済を成長させるための金融政策を行います。そして、物価の目安は「年率2%の消費者物価指数の上昇」です。

ですから、長期的に見れば、株式はインフレに強い資産になります。インフレで物価が上昇すれば企業の利益は大きくなり、株価は上がりやすくなるからです。

株価の決定要因の一つは、企業業績です。景気拡大局面では企業が販売価格を引き上げても消費者の購入意欲は衰えず、販売数量も落ちません。ですから「販売数量×単価」である売上高が増加して利益も拡大し、株価は上昇しやすくなるのです。

ただし、消費者物価指数が大きく上昇するときは、景気の過熱を押さえて物価を安定させるため、金融引締めが行われます。インフレによる金融引き締めが行われる場合、短期的に株価が下落する可能性があるのです。

ただ、金融引き締めは景気の拡大が前提にあります。米国の1950年以降の利上げ(金融引き締め)局面では、開始直後の1~2ヶ月は株価が横ばいか下落になりますが、過度な利上げが行われなければ株価は上昇に転じています。つまり、「過度な金融引き締め」が行われるかどうかを見極める必要があるのです。

3.金利と物価

通常、物価が上昇(インフレ)すると金利も上昇しやすくなります。物価が上昇すると人々は少しでも安い値段のときにモノやサービスを買おうとするので、お金を使います。そして、金融機関は多くのお金を集めようとするため、より高い金利を提示するようになり、その結果金利が上昇するのです。

4.米国のCPI(消費者物価指数)に注目

世界の株式市場に大きな影響を与えるのが、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策です。そして、FRBは金融政策を行うときに物価上昇率を考慮しています。米労働省が2021年12月10日に発表した11月のCPI(消費者物価指数)は、前年同月比6.8%の上昇となり39年ぶりの高い伸びとなりました。インフレが進んでいるので、FRBによる金融引き締め加速への懸念も急速に強まっています。

市場では、2022年3月にも利上げが開始され、2022年度中に4回の政策金利引き上げが行われると考えられているのです。

前回、FRBがテーパリング(量的緩和の縮小)を行ったのは2014年です。2014年10月に量的緩和を終え、2015年12月に利上げを開始しました。ただ緩和マネーが減少することで金融資産の買い手が少なくなるとみて、株式市場は動揺。株価の変動率が大きくなりました。

2022年度も金融政策を巡り、株価が乱高下する可能性が高まっているのです。

5.グロース株とバリュー株

世界の株式市場は、金融引締めによる金利上昇を見込み、高いPER(株価収益率。低いほど割安な銘柄とされる)のIT関連などのグロース株が下落しています。高PER銘柄は、金利が上昇する時に相対的な割高感が強まるからです。

グロース株とは成長株のことで、企業の売上や利益の成長率が高く、今後株価が大きく上昇することが期待できる株式のことです。ただ、グロース株は企業価値に比べて株価が高くなります。

金利上昇局面では、投資家が企業の価値評価(バリュエーション)に対して株価が妥当なのか、割高ではないのかと考えるようになり、グロース株が売られやすくなるのです。

一方、企業が本来持っているか価値に比べて株価が低い銘柄を、「バリュー株(割安株)」といいます。投資家が企業価値を意識するようになるので、金利上昇局面ではグロース株よりもバリュー株の方が買われる傾向にあるのです。

6.スタグフレーションに注意

スタグフレーションとは、景気後退とインフレが同時に進行することです。通常、景気の停滞は需要が落ち込むことからデフレ(物価下落)の要因になりますが、原油などの原材料価格の上昇などによって、不景気でも物価が上昇することがあります。これが、「スタグフレーション」です。

ゆるやかなインフレは株価や経済にとってプラスになりますが、大切なのはモノやサービスの価格上昇以上に収入が上がるかどうかです。景気後退で賃金が上がらないのにもかかわらず物価が上昇する状態は、生活者にとって極めて苦しい経済状況になります。

1970年代のオイルショック後には日本もスタグフレーションとなりましたが、今後はスタグフレーションへの警戒も必要でしょう。

まとめ

ゆるやかなインフレは企業業績も拡大するので、株価にプラス材料になります。しかし、急激なインフレは消費者の購買意欲をなくすので、マイナス材料になります。とくに景気停滞とインフレが同時に進行する「スタグフレーション」は、非常に厳しい経済状況になります。

インフレがどの程度進んでいるのかを見極めて株式市場に与える影響を考えるようにしてください。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011