不動産への投資といえば、高額な資金を用意して物件のオーナーとなり、管理・運営をするイメージを持つ方も多いでしょう。
しかし、最近では不動産への小口投資が可能になり、法整備も相まって投資しやすい環境が整いつつあります。今回は、不動産への小口投資のメリットやデメリットのほか、REITとの違い、小口投資ができるサービスなどについて紹介します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 不動産の小口投資とは?
1-1.不動産特定共同事業の仕組み
1-2.不動産小口化商品の種類 - 不動産小口投資のメリット
2-1.少額から投資できる
2-2.大規模な物件・施設に投資できる
2-3.相続対策に活用できる(任意組合型)
2-4.投資リスクを分散できる
2-5.物件管理の手間が掛からない - 不動産小口投資のデメリット
3-1.元本保証や収益の保証がない
3-2.投資の選択肢が少ない
3-3.投資には自己資金を工面する必要がある
3-4.運用の手間がない反面、自由度が低い
3-5.購入物件の途中解約は原則できない - 不動産小口投資とREITとの違い
4-1.REITのメリット
4-2.REITのデリット - 不動産小口投資ができる投資サービス
5-1.COZUCHI
5-2.ちょこっと不動産
5-3.オーナーズブック - まとめ
1.不動産の小口投資とは?
不動産小口化商品とは、特定の不動産を一口数万円から100万円程度に小口化して販売し、投資額に応じて賃料収入や売却益を出資者(投資家)に分配する金融商品のことをいいます。このような不動産小口化商品に投資することで、不動産への小口投資ができます。
現物不動産への投資と比較して少額から不動産投資ができる点や、個人投資家が投資対象にできなかった大規模施設などへの投資が可能になることから、注目する投資家の方も増えています。
なお、このような事業は「不動産特定共同事業」と呼ばれ、不動産小口化商品は「不動産特定共同事業法」という法律に基づく投資商品として販売されています。
1-1.不動産特定共同事業の仕組み
不動産特定共同事業では、事業者は立地や建物、市場などを調査し、将来的に資産価値の維持や値上がり、一定以上の収益があると見込まれる不動産を購入します。
事業者は購入した不動産物件を分解し、「小口化投資商品」として複数の投資家に販売して、事業による収益を投資家に分配します。
なお、不動産特定共同事業の事業者は、不動産特定共同事業法により、原則として国土交通大臣または都道府県知事の許可を受ける必要があります。不動産特定共同事業法によって、不動産特定共同事業に対する信頼性が高まり、投資家も投資しやすくなってきているというのが現状です。
1-2.不動産小口化商品の種類
不動産小口化商品には、大きく分けて下記の3つの種類があります。
- 賃貸型
- 任意組合型
- 匿名組合型
賃貸型
賃貸型とは、不動産の持分を複数人の投資家で所有し合い、業者に不動産を貸し出して物件を管理してもらうタイプの不動産小口化商品をいいます。
複数人で所有する物件の管理を外部の業者に任せ、不動産経営で得られた家賃収入は、投資家に不動産所得として分配されます。
物件を管理する業者が倒産した場合、投資家の持つ債権は失われません。また、不動産の登記では持分を持つ投資家全員の名義を記載します。
任意組合型
任意組合型とは、不動産を管理する業者と投資家の間で「任意組合契約」を締結する形で運営を行う不動産小口化商品をいいます。
任意組合契約とは、複数人で出資して共同で事業を経営する旨を約束する契約で、管理業者も不動産の持分権を所有する点が賃貸型とは異なります。
投資家は不動産の所有権を持っているので、分配される利益は賃貸型同様に不動産所得となり、不動産登記においても各投資家の登記が必要となります。
匿名組合型
匿名組合型とは、不動産を管理する業者と投資家の間で「匿名組合契約」を締結する形で行う不動産小口化商品をいいます。
匿名組合契約とは、特定の事業者(会社)に対して匿名で出資することで、会社側が得られた利益の一部を分配してもらう形の契約です。
現物の不動産ではなく、会社に対して出資する契約であり、投資家が不動産の所有権(持分)を保有することはありません。そのため、分配金として得られた利益は不動産所得ではなく、雑所得として計上することになります。
また、匿名で出資するため、登記簿に投資家自身の氏名が載ることもありません。
2.不動産小口投資のメリット
不動産への小口投資には下記のメリットがあります。
- 少額から投資できる
- 大規模な物件・施設に投資できる
- 相続対策に活用できる(任意組合型)
- 投資リスクを分散できる
- 物件管理の手間が掛からない
2-1.少額から投資できる
不動産への小口投資であれば、少ない資金で投資を始めることができます。
現物の不動産投資では物件や土地の購入費用として、数千万円程度の運用資金が必要になります。資金調達のために金融機関からの融資を受けてレバレッジ効果を狙った投資を行える点はメリットである反面、リスクが大きくなるデメリットがあります。
一方、不動産小口化商品への投資なら、一口数万円から100万円程度の資金があれば始めることができます。少額から投資できるため、運用資金のコントロールがしやすく、借入による返済リスクを失くせるメリットがあります。
2-2.大規模な物件・施設に投資できる
不動産小口化商品では、多くの個人投資家にとって資金調達のハードルが高い大規模な物件・施設に投資できるケースがあります。
例えば、利便性が高い物件や、都心の一等地にあるような物件は高収益が期待できる反面、購入するには高額な資金を工面する必要があります。その他、物流不動産や保育園など、事業性の高い施設などは個人が投資検討するにはハードルの高い投資対象と言えます。
不動産小口化商品であれば、これらの大規模な物件や施設に投資が可能となり、資金は少額ながら様々な物件をポートフォリオに加えることができます。
2-3.相続対策に活用できる(任意組合型)
任意組合型の不動産小口化商品は相続対策に活用できるというメリットがあります。不動産投資を行っている状態で相続が発生した場合、保有資産の評価額は以下のように算出されます
- 土地の場合:路線価方式または倍率方式で定めた評価額
- 不動産の場合:固定資産税評価額に1.0を乗じた額
現金や有価証券を相続する場合、その金額がそのまま相続税の対象となりますが、不動産を相続する場合は上記の方法で算出した金額が相続税の対象となり、時価と比較して低額になるため、相続対策として活用できます。
また、同じ不動産投資でも現物不動産では相続時に不動産を分割しづらく、相続トラブルにつながるケースがありますが、不動産への小口投資では相続時の分割も容易になるため、トラブルが発生するリスクを回避しやすいメリットがあります。
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2-4.投資リスクを分散できる
不動産への小口投資では、少額からの投資家可能であるため、投資対象を複数に分散しやすいというメリットがあります。
不動産投資においては、空室や災害の発生、価格変動など、さまざまなリスクが影響して収益率が減少する可能性があります。投資資金を全て1つの現物不動産に投資していると、収益が一気に激減してしまうことも考えられます。
複数の不動産小口化商品に少しずつ投資すれば、1つの物件の収益が下がっても、他の投資物件でカバーできることがあります。また、少額から投資できる強みを生かして、資金の一部を不動産に、残りをそれ以外の金融商品に投資するといった分散投資も検討しやすくなります。
2-5.物件管理の手間が掛からない
不動産小口化商品を購入する場合、物件の管理・運営は管理会社が行います。そのため、投資家が投資物件を管理する手間が掛かりません。
実物不動産への投資では、物件のメンテナンスから入居者の募集、退去手続き、家賃の管理・回収、定期清掃など、物件の管理をするためのさまざまな業務が発生します。これらの業務は管理会社への委託が可能ですが、定期的に報告を受け、最終的な判断は投資家自身で行う必要があります。
3.不動産小口投資のデメリット
一方、不動産小口投資では下記のデメリットがあります。
- 元本保証や収益の保証がない
- 投資の選択肢が少ない
- 投資には自己資金を工面する必要がある
- 実質的な利回りは小さい
- 購入物件の途中解約は原則できない
3-1.元本保証や収益の保証がない
現物の不動産投資と同じく、不動産小口投資であっても元本保証がありません。これは、元本を保証して資金の受け入れをすることが出資法によって禁じられているためです。
また、不動産投資では空室状態が続くと賃料収入は減ってしまい、不動産価値が下がってしまうと売却時に元本割れを起こす可能性があります。投資を検討する際はリスクがあることに留意し、慎重に判断することが大切です。
3-2.投資の選択肢が少ない
不動産小口化商品は、株式投資やアパート経営などの投資方法と比較して新しい投資手法です。利用できるサービスや購入できる商品の種類は増加傾向にあるものの、投資対象としての選択肢が少ないといえます。
加えて、投資家の間では不動産小口化商品への関心が高く、人気案件では募集開始後すぐに応募が殺到し、購入できないケースもあります。
3-3.投資には自己資金を工面する必要がある
実物の不動産投資では、投資対象の不動産を担保に融資を受けられることがあります。一方、不動産小口化商品への投資では、投資対象物件を担保にした融資を受けることはできません。
金融機関の融資を活用したレバレッジ投資ができる点は実物の不動産投資の大きなメリットです。小口投資では自己資金しか使用できず、投資効率が低下してしまう点に注意が必要です。
3-4.運用の手間がない反面、自由度が低い
不動産小口化商品では、意思決定・業務を運営会社が行うために、投資家は手間を省きながら賃料収入などを受け取ることができます。
しかし、物件の管理・運営の手間を省ける点はメリットである一方で、投資家の意思を運営に反映することができず不動産経営の自由度が低くなる点はデメリットです。
また、運営会社へ委託することでコストが発生することになり、自身で同じ物件に投資した場合と比較して実質利回りが下がることになります。
3-5.購入物件の途中解約は原則できない
実物不動産投資では、物件を購入したあとに好きなタイミングで売却できます。一方、多くの不動産小口化商品は運用期間が終了するまでの途中解約ができなかったり、売却にあたって条件が設けられていることがあります。
案件によっては、投資したお金は運用期間が終わるまで手元に戻ってこなくなります。投資前には、元本回収の時期や条件についても詳しく確認しておきましょう。
4.不動産小口投資とREITとの違い
少額でできる不動産投資には今回紹介した不動産小口化商品への投資のほかに、REITへ投資する方法があります。
REITとは不動産を主な投資対象とした、投資信託の一種です。「不動産投資法人」が投資家から集めた資金によってオフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産を複数購入し、発生した賃料収入や売却益を投資家に分配する金融商品となります。
4-1.REITのメリット
REITでは、投資家が証券取引所を通じて不動産投資法人の投資信託証券を購入します。銘柄により異なりますが、最低投資金額は数万円から数十万円となり、投資家の好きなタイミングで売却できるなど、流動性が高い金融商品となっています。
小口化商品と同じく不動産運営の手間なく投資でき、ホテルや商業施設など大規模な投資対象への投資が可能です。また、証券口座を開設することで手軽に購入できる点もメリットと言えるでしょう。
4-2.REITのデリット
REITは不動産に特化した金融商品であり、不動産市況や金利などの影響を受けやすいため、賃料下落による分配金の変動や投資信託証券価格の下落リスクがあります。
また、証券市場の需給関係で値動きが多くなるリスク、上場廃止・不動産投資法人の倒産による価格下落・取引停止・デフォルトなどのリスクもあります。その他、不動産小口商品で提供されている小型の賃貸物件への単体投資ができない点もデメリットと言えるでしょう。
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5.不動産小口投資ができる投資サービス
最後に、不動産小口投資ができる投資サービスを紹介します。
5-1.COZUCHI
COZUCHI(ワラシベ)は、1999年創業の不動産会社LAETOLI社が運営する不動産クラウドファンディングサービスです。
都心や首都圏のマンションをメインとした物件に1口1万円から投資できます。運用期間は3ヶ月から1年程度と比較的短いので、投資リスクを軽減しやすいといえます。想定利回り(予定分配率)が4.5%~12.0%と幅広く、運用期間も2ヶ月~2年と豊富である点もCOZUCHIの運用案件の大きな特徴です。
また、途中解約ができる珍しい不動産クラウドファンディングサービスで、事務手数料を支払えば、翌月には出資金を現金化することができます。
5-2.ちょこっと不動産
ちょこっと不動産は2021年3月にスタートした不動産クラウドファンディングサービスです。
レジデンス(戸建・アパート・マンション)やオフィス、テナントビル、店舗など、さまざまな不動産物件に対して1口1万円から投資できます。
2021年6月時点、2件のファンドが公開されており、いずれも運用期間が6ヶ月、予定分配率は6.0%に設定されています。
5-3.オーナーズブック
オーナーズブックは不動産投資案件に特化したソーシャルレンディングサービスで、累積投資額が約250億円超(2021年8月現在)の実績があります。
上場企業100%子会社のロードスターインベストメンツ株式会社が運営し、不動産のプロが厳選した案件に1口1万円から投資可能です。
運用期間に半年程度から2年などの幅があるため、投資家のニーズに応えやすいサービスといえます。
まとめ
今回は不動産の小口投資について、特徴やメリット、デメリットを紹介しました。現物不動産への投資に必要な高額な資金や煩雑な手間などを省きながら不動産投資ができるというのが、不動産小口投資の特徴です。
少額投資でリスクを軽減できる反面、融資のレバレッジ効果が狙えず投資効率が下がってしまう点はデメリットとなります。また、売却のタイミングが選べない案件も多く、REITと比較して流動性が低い点にも注意が必要です。このような違いに留意して、慎重に投資判断を行っていきましょう。
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山本 将弘
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