個人や企業が資金調達を行う手段や個人投資家の投資方法の1つとして、クラウドファンディングを利用するケースが増加しています。
クラウドファンディングで資金調達を行っている事業は様々ですが、出資者へのリターンの形式によって大きく5つのタイプに分類することができます。クラウドファンディングで投資のリターンを得ようと考えている場合、このタイプごとの違いについて確認しておくことが大切です。
今回はクラウドファンディング投資における投資タイプごとの問題点やリスクについて紹介しますので、参考にしてください。
目次
- クラウドファンディングとは
- クラウドファンディング投資に共通するリスク
2-1.運営会社が倒産するリスクがある
2-2.元本割れが発生するリスクがある
2-3.途中解約ができないサービスが多い - 融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)のリスク
3-1.貸し倒れが発生する可能性がある
3-2.返済遅延が起きる可能性がある
3-3.高利回りの案件ほどハイリスクになる - ファンド型(不動産投資型)クラウドファンディングのリスク
4-1.空室リスク
4-2.災害リスク
4-3.人気案件に応募ができない可能性がある - 株式型クラウドファンディングのリスク
5-2.投資先企業が倒産する可能性がある
5-2.エグジットを実現できない可能性が高い
5-3.流動性・換金性が著しく乏しい - まとめ
1.クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは、インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する仕組みのことをいいます。
クラウドファンディングは金銭的なリターンを受け取る「投資型」、金銭以外のモノやサービスを特典として受け取る「非投資型」に分類されます。さらに、それぞれの型のうち、投資型は「融資型」「株式型」「ファンド型」、非投資型は「購入型」「寄附型」に分類されます。
投資型クラウドファンディング
- 融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)
- 株式型クラウドファンディング
- ファンド型(不動産投資型)クラウドファンディング
非投資型クラウドファンディング
- 購入型クラウドファンディング
- 寄附型クラウドファンディング
クラウドファンディングで投資を行うのであれば、まずは投資型クラウドファンディングの中から自身の投資目的に合ったサービスを検討することになります。
2.クラウドファンディング投資に共通するリスク
融資型・株式型・ファンド型のすべてのクラウドファンディングに共通するリスクとしては、下記の点が挙げられます。
- 運営会社が倒産するリスクがある
- 元本割れが発生するリスクがある
- 途中解約ができないサービスが多い
2-1.運営会社が倒産するリスクがある
クラウドファンディングでは、プラットフォームを提供する運営会社(事業者)を通じて企業やファンドなどに出資することになります。
ただし、経営状態や不祥事などによって運営会社が倒産したり、クラウドファンディング事業が停止したりするリスクがあります。このようなリスクを事業者リスクと言い、比較的に新しい投資方法であるクラウドファンディング特に投資で注意しておきたいポイントです。
上場企業がクラウドファンディングサービスを提供しているケースもありますが、一方で規模が小さい企業が同様にサービス提供しているケースも多くみられます。上場企業と異なり決算情報を公開していない企業も多く、この場合、事業者リスクはさらに高まります。
また、運営会社は自社の資金と投資家からの出資金を分別管理することが義務付けられています。しかし、管理体制が整っていない場合に、出資金に関するトラブルを招くこともあり、投資家が何らかの損失を被る可能性もあります。
事業者リスクに備えて複数の投資先に分散してリスクを軽減したり、運営会社について良く調べてリスクを回避したりするなどの対策を取るようにしましょう。
2-2.元本割れが発生するリスクがある
投資型クラウドファンディングの各サービスで公表されている予定分配率は、あくまでも想定されている利回りであり、必ずしも利益を得られるという保証はなく、元本を毀損するリスクがあります。
例えば融資型の場合、貸付先の企業の事業が整っておらず、予定していた返済スケジュール大きく遅延してしまうことがあります。また、ファンド型の場合は、案件の運用次第で想定通りの利益が生まれず、運用終了後に元本割れとなるケースがあります。
株式型の場合も、企業の事業撤退・倒産などが発生すると、出資元本が返ってこないことがあります。
2-3.途中解約ができないサービスが多い
クラウドファンディングの投資タイプや投資する企業・事業によって、資金が運用される期間は異なります。
また、一部のサービスを除いて、運用期間の途中で解約することができません。つまり、一度投資をしてしまえば、運用期間が終了するまで出資金が返ってこないことになります。
余剰資金で投資活動を行わなければ、生活やライフプランの資金繰りに支障をきたす恐れがありますので注意しましょう。
3.融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)のリスク
融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)とは、事業者が仲介役となって資産運用を行いたい個人投資家から小口資金を集め、大口化したものを資金調達したい企業に融資するタイプのクラウドファンディングです。
ソーシャルレンディングのサービスとしては、「オーナーズブック」や「クラウドバンク」などが代表的です。
支援者は事業者を通じて企業に融資を行い、融資を受けた企業が返済する利息から分配金をリターンとして得ることができます。
融資を受けたい企業にとって、融資型クラウドファンディングは金融機関からの資金調達の代替手段となっており、金利が高めに設定されているのが特徴です。一方で、融資型クラウドファンディングには下記の問題点・リスクがあります。
- 貸し倒れが発生する可能性がある
- 返済遅延が起きる可能性がある
- 高利回りの案件ほどハイリスクになる
3-1.貸し倒れが発生する可能性がある
融資型クラウドファンディングの大きなリスクは、貸し倒れが発生する可能性があるということです。
貸付に伴う金利が収益となる投資方法であるものの、返済が100%実行されるという保証はありません。
そのため、融資先からの返済が滞った場合、投資家の損失が発生することがあります。特に、無担保・無保証の案件では、大きな損失が発生することもあるため、注意が必要です。
また、担保や保証が設定されている案件でも、投資家の出資金が満額返済されるとは限りません。過去には、担保不動産の査定額が不正確で、投資金額の満額返済ができなかったケースがあります。
3-2.返済遅延が起きる可能性がある
貸し倒れとならない場合でも、融資先企業の財務状況によっては返済遅延が起きる可能性があります。返済遅延が起きると元本を回収できる日程が先延ばしとなり、投資効率を大きく低下させてしまうことに繋がります。
融資型クラウドファンディングに投資する際は、返済遅延が起きた時の対応について、過去の実績も踏まえながら確認しておくことが大切です。
3-3.高利回りの案件ほどハイリスクになる
融資型クラウドファンディングは、貸付金の金利収入が主な収益となる投資方法です。そのため、高利回りの案件になるほど融資先企業の返済負担が大きくなり、貸し倒れリスクが増大するという特徴を持っています。
リターンだけに注目してしまうと、貸し倒れリスクが非常に高い案件に投資してしまう可能性もあります。高利回り案件へ投資を検討する場合は投資する案件を複数に分け、投資金を分散させるなどの工夫をすることが大切です。
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ファンド型(不動産投資型)クラウドファンディングのリスク
ファンド型クラウドファンディングとは、個別の事業やプロジェクトに対して出資を募るタイプのクラウドファンディングです。事業・プロジェクトを行う借り手企業とクラウドファンディングの運営会社が契約している間、投資家は売上に対して出資額に応じた配当金・サービスなどをリターンとして受け取ります。
ファンド型クラウドファンディングで最もポピュラーなのは、不動産を投資対象とした不動産投資型クラウドファンディングです。不動産投資型クラウドファンディングは、収益物件の取得に必要な資金を調達し、不動産運用で得られた賃料収入や売却益がリターンの原資となります。
不動産投資型クラウドファンディングのサービスとしては、ESG不動産投資の「CREAL(クリアル)」や、実績利回りの高い「COZUCHI(コヅチ)」などがあります。
融資型クラウドファンディングとは違い、投資対象物件の情報についても詳しく知ることができるため、投資の是非について判断材料が多いというメリットがあります。
一方で、不動産投資型クラウドファンディングには以下のリスクがあります。
- 空室リスク
- 災害リスク
- 人気案件に応募ができない可能性がある
4-1.空室リスク
不動産投資型クラウドファンディングは、実物不動産へ間接的に投資するため、投資先の収益物件に入居者がいないと賃料収入を得ることができません。
投資先となる収益不動産のタイプは様々ですが、オフィスやホテルなどの投資案件では、2020年2月頃に問題が顕在化した新型コロナウイルスの影響により、収益が大きく低下してしまったケースもあります。
このように、投資先の収益物件にどのような賃貸ニーズがあり、どのようなリスクがあるのかを確認することが大切です。実物不動産への間接的な投資となるため、一定の不動産知識が必要になる場面もあることに注意が必要です。
4-2.災害リスク
災害リスクとは、投資対象の収益物件のエリアで地震や台風、火災などの災害が起き、建物に損傷が出てしまうリスクのことを指しています。
災害リスクに備えるためには、投資先エリアが一か所に集まらないよう分散させたり、ハザードマップを確認して洪水が起きた時の状況を予測することが大切です。
4-3.人気案件に応募ができない可能性がある
不動産投資型クラウドファンディングは物件の取得に必要な資金を調達しているため、数千万円ほどの小規模な案件が多く含まれています。募集金額が少額であることから、高利回りの人気案件はすぐに募集完了となってしまい、応募機会を逃してしまうことがあります。
投資機会を逃してしまうと投資金を遊ばせてしまうことになり、投資効率が低下してしまうリスクがあります。複数のサービスに登録しておき、募集開始されたタイミングですぐに投資するなどの対策が有効です。
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5.株式型クラウドファンディングのリスク
株式型クラウドファンディングは、ベンチャー企業などの非上場企業が新株予約権を発行して個人投資家からの出資を募り、資金調達をするクラウドファンディングです。初期の成長段階にある企業の資金調達手段として利用されることが多いのが特徴です。
代表的な株式型クラウドファンディングのサービスとしては、「ファンディーノ(FUNDINNO)」や「Unicorn(ユニコーン)」などがあります。
投資家はその企業の株式を保有し、出資額に応じた配当金や株主優待を受けることができます。また投資先企業が新規株式公開(IPO)や他社への企業売却(M&A)といったエグジットを行えば、大きなリターンを得ることができます。
一方で、株式型クラウドファンディングには下記のリスクがあります。
- 投資先企業が倒産する可能性がある
- エグジットを実現できない可能性が高い
- 流動性・換金性が著しく乏しい
5-2.投資先企業が倒産する可能性がある
投資先企業が倒産する可能性があるというのが、株式型クラウドファンディングのリスクの1つです。
ベンチャー企業や初期成長段階にある企業は、上場企業と比較して資金力が弱い場合が多く、倒産する可能性が高い傾向にあります。
事業がうまくいかず企業が倒産した場合は、保有している株式の価値がほぼゼロになってしまうことになります。大きな利益を狙える反面、ハイリスクな投資方法であると言えるでしょう。
5-2.エグジットを実現できない可能性が高い
株式型クラウドファンディングでは、投資先企業がエグジット(新規株式公開や事業売却)した場合、保有株式を売却することで大きな利益を得ることができます。
しかし、すべての企業でエグジットが実現できるわけではありません。株式型クラウドファンディングにおいては、ほとんどの企業がエグジットを達成できておらず、投資家の利益につながる結果になっていません。
株式型クラウドファンディングは、利益が出れば大きくなる可能性がありますが、利益が出る確率が低いということを留意しておきましょう。
5-3.流動性・換金性が著しく乏しい
株式型クラウドファンディングで保有できる株式は未上場株式となるため、証券取引所で自由に売買することはできません。
IPOやM&Aといった特別なタイミングでのみ売却可能となり、上場株式と比較して流動性や換金性が著しく乏しいといえます。
いつどのタイミングで売却できるかは誰にもわからず、投資に回収までに長い時間が必要になったり、企業が倒産したりするケースもあるため、投資の是非については慎重に判断する必要があるでしょう。
【関連記事】株式投資型クラウドファンディング各社のイグジット実績は?投資の注意点も
まとめ
今回はクラウドファンディング投資におけるタイプ別の問題点やリスクについて紹介しました。投資タイプごとにリスクの度合いも異なるため、それぞれをよく理解したうえで投資するかどうかの判断を下すことが重要です。
クラウドファンディングを利用した投資を行うのであれば、これらの違いを比較し、自身の投資目的にあっている方法を検討することが重要です。本記事を参考に、判断してみましょう。
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山本 将弘
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